11月にニューオリンズで開かれた「Digiday Programmatic Media Summit」では、パブリッシャーやアドテクの幹部ら300人が集まり、セルサイドのプログラマティックにおける課題について議論した。ワーキンググループやお酒の席で、参加者に匿名で率直な思いを聞いた。
11月13~15日(米国時間)にニューオリンズで開かれた「Digiday Programmatic Media Summit」には、パブリッシャーやアドテクの幹部ら300人が集まり、セルサイドのプログラマティックにおける大きな課題について議論した。出席者と講演者は、ワーキンググループ会議やお酒の席で、匿名ということにして率直な思いを共有した。
パブリッシャーは、ヘッダー入札ベンダーからのレポーティングが不完全なこと、製品の社内開発やプライベートマーケットプレイス(以下、PMP)の拡大が難しいことなどを特に懸念していた。
イベントの舞台裏で、米DIGIDAY編集部が拾った声の一部を、以下に紹介する。
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PMPは拡大が難しい
「大手パブリッシャーは安定期に入っているが、小さなパブリッシャーやローカルなメディア企業はまだ遅れを取り戻そうと躍起になっている状態だ」
「スケーラビリティが最大の課題だ。PMP取引の準備はしたが、取引は一度もない」
「うちのプログラマティックビジネスはかなり小さいが、そのうちおよそ80%はPMPからのものだ。ドメインスプーフィング(なりすまし詐欺)とインプレッション詐欺を理由に、PMPとプログラマティックギャランティを推進している。広告主がほかでは見つけられないコンテキストデータがうちにはある」
「PMPはプログラマティックギャランティに人々を送り込むのに使っている」
「PMPが大きくならないのは、オーディエンスのターゲティングと特定地域にクライアントがあまりに気を取られているから。うちはバイヤーに、ターゲティングではもっと柔軟になる必要があると率直に伝えるようにしている」
「バイサイドの状況を追うのに多くの時間を割いているが、協力するのに必要な情報がこちらにあるとは限らない」
「パブリッシャーは、100万のバイヤーを管理することはできないが、扱うサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)の数はコントロールできる。PMPで連携するSSPの数が5つを超えるとかなり厳しい。SSPの数が2個を超えた時点で、バイサイドにおける潜在的なトラブル解決の管理が難しくなる」
「広告予算のようなシグナルを使ってPMP取引に優先順位をつけている。支出が2週間ないバイヤーは優先順位を下げる」
「求める特定の市場が決まっている広告主にはPMPはやらない。そういうところにはPMPからプログラマティックギャランティに移ってもらう」
「セールスの人たちが1カ月あたり5000ドル(約55万円)分のPMP取引を獲得したと喜んでも、うちは500ドル(約5万5000円)分(のインプレッション)しか提供できないとアドオペレーションの人たちから声が上がる。アドオペレーションは、私に言わせると、うちの会社でいちばん戦略的な人たちなのに、セールスチームにかなり怒られている」
ヘッダー入札はレポーティングに問題あり
「うちはインデックスエクスチェンジ(Index Exchange)のラッパーとAmazonのラッパーを使っている。しかし、ラッパーからのレポーティングは最高とは言えず、レポーティングをやってくれるほかのところを必要としている。インデックスが『パルス(Pulse)』というレポーティングツールに取り組んでいるので、これが現状を変えてくれることを期待している」
「結局のところ、ラッパーのなかで何が起こっているのかわからない」
「いまはほとんどのラッパーが、入札リクエストに対するSSPの応答時間に関するSSPレベルの非常に基本的なデータしか提供していない。デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)がうちのサイトにいくら使っているかといったDSPレベルのデータが欲しいし、できれば、たとえばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)がうちにプログラマティックで支出しているかといったブランドレベルのデータも入手したいが、やりようがない」
「同じ広告主がさまざまなSSPからくるようになってきているが、その広告主のプロファイルがSSPによって異なる」
「SSPが予測する増分収益額と実際に我々が手にする額とのあいだにはズレがある。3~4%のズレは許容できると思う。ラッパーにおけるズレが30%を超えたら、うちはそのSSPの優先順位を下げる」
「大手パブリッシャー以外は、ヘッダー入札はまだはじまったばかりだ。小さいプレイヤーにはヘッダー入札の管理能力がなく、SSPはそうした企業との仕事にあまり関心がない」
「間違いなく、パブリッシャーは売り上げの2割を各ベンダーに支払う代わりに独自SSPを開発できる。そうしないのは、うまく行かないときに責める相手が必要だから」
製品の社内開発は可能性なし
「うちでは開発チームがアドサーバーの構築を試みたが、そのプロジェクトはどこにも行き着くことなく時間の無駄に終わった。すでにリソースが分散してしまっているのに、決して完成しないプロジェクトをいくつもスタートさせている」
「開発チームに自分のためにほかのことをやってもらう必要があれば、技術の人材は簡単には見つからないため上機嫌でいてもらう必要があるので、そこまで文句はつけられない。しかし、ベンダーを使えば、ベンダーはお金が欲しいからどこかに行ってしまうことがなく、好きなだけ怒鳴りつけることができる」
「アドサーバーの構成がめちゃくちゃなので重要指標とマッチさせる方法を解明できず、データアナリストたちが涙を流している」
「ワシントン・ポスト(The Washington Post)は自ら構築した製品をライセンスしており、この事業に参入したいと思わせる。しかし、ワシントン・ポストにはそうした製品を販売する独立したチームがひとつあり、また、(Amazon CEOの)ジェフ・ベゾスの支援もある。うちは、自社の直接のインベントリー(在庫)を販売するセールスの人員すら足りていない」
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)