「メディアは、とにかく収益源を多様化せよ」: IAB の CEO ランドール・ローゼンバーグ氏

ニュースパブリッシャー業界は、このパンデミック下の経済に打撃を受けているかもしれない。だが、インタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:IAB)のCEO、ランドール・ローゼンバーグ氏にいわせると、業界ははるか昔に、広告収入に依存しすぎた時点で自ら墓穴を掘っていた。

「19世紀の半ばから終わりにかけて、米国に国内市場が成立したとき、市場は大きく広がっていて、好機に満ちていたため、パブリッシャーとしての収益と成長を広告にゆだねることは、経済的にはるかに理にかなっていた」と、ローゼンバーグ氏は米DIGIDAYポッドキャストで語っている。

有料購読者が600万人超と好調なニューヨーク・タイムズ(The New York Times)でさえ、第2四半期は広告収入が最大55%減になると予測し、同紙の広告部門トップはレイオフもありうると述べている。

このように先々のリスクを考えないやり方は、昔から雑誌やテレビにまで浸透しているが、それに対して欧州では、こうしたメディア商品に消費者がお金を支払ってきたと、ローゼンバーグ氏はいう。

この問題に対する主な答えは「収益源を多様化すること。とにかくそれに尽きる」と、ローゼンバーグ氏は述べている。

ローゼンバーグ氏にとってひとつの希望は、業界の中央集権化が進むことだ。

「私はいま、この15年間でもっとも希望を抱いている」と、ローゼンバーグ氏はいう。「あらゆる業界のサプライチェーンは、基本的なベストプラクティスや技術標準による下支えを必要とするが、それらに関して、広大かつ無秩序なマーケティングとメディアのサプライチェーンを構成するさまざまなセグメント、プレイヤー、企業、そして幹部たちの意見をひとつにまとめるのは至難の業だった」。

この記事では、ローゼンバーグ氏とのインタビューのハイライトをお届けする。なお、読みやすくするため、以下の本文には若干の編集を加えている。

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家にこもる人々はオンラインに向かう

「この数週間のさまざまな消費者調査でわかったことは、これまでオンラインショッピングをしていなかった人たちが、こぞってオンラインで買い物をするようになったことだ。そしていま、これまではまだ小売で持ちこたえていたさまざまなショッピング分野がオンラインに舵を切っている。このことは、我々のディスラプターブランド調査でここ2年ほど観測されているトレンドのひとつを大きく加速させるだろう。すなわち、従来型の実店舗がショッピングのための存在でなくなっている、というトレンドだ。それらは、実際のところエンターテインメントやサービスのための場所になっていて、もはや商品を発見し、購入する場所ではなくなっているといえる」。

安価な新聞が失敗のはじまり

「欧州のやり方は常に正しく、米国は常に間違っていた。19世紀半ばから終わりにかけて、米国に国内市場が成立したとき、市場は大きく広がっていて、好機に満ちていたため、パブリッシャーとしての収益と成長を広告にゆだねることは、経済的にはるかに理にかなっていた。そこで生まれたのが「ペニー・プレス」(安価なタブロイド新聞)というコンセプトだ。広告主があふれかえっていて、お金を出したがっているのに、末端の消費者から高い料金をとることはないというわけだ。いっぽう欧州では、各国の市場が米国に比べてはるかに小さかった。米国ほど企業の数が多くなく、したがって広告主も多くはなかった。そこで欧州のメディアは歴史的に、常に消費者をより大きな収益源とした。メディアの歴史の大半を通じ、欧州の大半の地域で、消費者が直接支払う料金があらゆるメディア事業の収益の核と考えられてきた。これは米国のメディア事業が、雑誌、新聞、さらにはテレビでさえもが、ずっと学んでこなかったことだ。欧州全体で、人々は多くの場合、テレビの視聴にお金を払ってきた。ある意味で、我々は昔から続くこの特殊な状態を抜け出せず、お金があまりにやすやすと入ってくるために、もはや手遅れになるまで、パブリッシング企業の経営陣は消費者からお金をとることについて深く考える必要がなかったといえる。複数の収益源よりひとつの収益源を選ぶような業界、企業がいったいどこにあるだろう。これこそが教訓だ。メディアは収益源を多様化しなければならない。とにかくそれに尽きる」。

中央集権化への期待

「私はいま、この15年間でもっとも希望を抱いている。あらゆる業界のサプライチェーンは、基本的なベストプラクティスや技術標準による下支えを必要とするが、それらに関して、広大かつ無秩序なマーケティングとメディアのサプライチェーンを構成するさまざまなセグメント、プレイヤー、企業、そして幹部たちの意見をひとつにまとめるのは至難の業だった。測定、詐欺、消費者の安全性、フェイクニュースといった事柄に関して、我々がいまなお議論し、意見を戦わせている状況は驚くべきことで、大いに落胆させられる。存在してはならないこれらの状況は、何十年も昔の食品業界から他業界へ広がったものであり、1960年代以降の自動車業界から広がったものだ。そしていまなお、我々はこうした議論を続けている。自動車業界が見せた変化には、大いに見習うべき教訓がある。第1に、業界内の抵抗が大きくても、消費者の行動によって克服できるということ。第2に、見てわかるとおり、連邦政府、州政府、および業界の自主規制には、それぞれに求められる役割がある。それらはすべて重要な役割を担っている。そしてそれを果たすには、何らかの統一的なリーダーシップが必要ということだ。私は現在、そこにもっとも希望を感じている。長年にわたり、デジタルメディアとマーケティングのサプライチェーンに一貫した業界標準や運営手順を確立することを妨げていた最大の要素は、大手ブランドそれ自体に存在する知識と理解の不足だ」。

Pierre Bienaimé(原文 / 訳:ガリレオ)