取引のことを知っている情報筋によると、ウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)は、モバイルエンターテインメントアプリ「HQトリビア(HQ Trivia)」の開発元の親会社インターメディア・ラボ(Intermedia Labs)に出資してきたという。
取引のことを知っている情報筋によると、ウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)は、モバイルエンターテインメントアプリ「HQトリビア(HQ Trivia)」の開発元の親会社インターメディア・ラボ(Intermedia Labs)に出資してきたという。インターメディア・ラボの広報担当者はコメントを避けた。ディズニーの広報担当者は、「ディズニーアクセラレーター(Disney Accelerator)」プログラムを通じて出資したと述べている。ディズニーアクセラレーターは、3カ月間の新興企業支援プログラムで、ディズニーは、新興のメディア企業やエンターテインメント企業50社に助言したり、少額の金を出資したりする。
この出資は、従来型の配信手段がデジタルプラットフォームや直販(Direct-to-consumer:DTC)サイトに押され続けるなかで、ディズニーが事業の進化を試みた最新例となる。HQトリビアへの出資によって、ディズニーは同アプリを通じて自社事業のマーケティングを行ったり、ほかの事業にHQトリビアブランドを組み込んだりする機会が得られる。後者については、ABCの放送ネットワークやESPNの「ESPN+」ストリーミングサービス向けであるHQトリビアブランドの番組の制作などが考えられる。
また、HQトリビアからすれば、ディズニーの支援によって、1年前にリリースされたアプリの広告販売を強化したり、新しい番組フォーマットに手を広げたりできるほか、最高経営責任者(CEO)コリン・クロール氏の下劣な過去に警戒心を抱く、広告主やほかのビジネスパートナーを安心させることができる。HQトリビアの開発元への出資は、買収とは異なるので、デジタル動画ネットワークのメーカースタジオ(Maker Studios)買収時のような問題を抱える心配はない。
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ディズニーの出資額は不明だった。3月に公表された規制当局への提出書類によると、インターメディア・ラボは今年、1500万ドル(約16億円)を調達し、資金調達ラウンドの完了までにさらに246万ドル(約2.7億円)を獲得できる見通しであることを明らかにしたという。
新しいタイプのテレビ
HQトリビアはモバイルアプリであるかもしれないが、従来型のエンターテインメントプラットフォームと似た部分がある。決まった時刻にアクセスしないと全部見逃してしまうゲーム番組でもあるのだ。そういう意味では、DVR登場前の全盛期のクイズ番組「ジェパディ!(Jeopardy)」や「ホイール・オブ・フォーチュン(Wheel of Fortune)」と大して違いはない。
だが、2018年に、所有・運営するサイトで、定期的に配信される番組に大勢の人々をアクセスさせることに成功しているので、HQトリビアは、従来型のエンターテインメント企業のなかでは注目に値する。インターネット調査会社コムスコア(comScore)によれば、8月にHQトリビアを利用した米国の成人は670万人で、コムスコアがHQトリビアのオーディエンスをはじめて追跡した2017年12月の250万人から増加している。
従来型テレビはあまり視聴せず、程度の差はあるが新しいタイプのテレビを視聴しているオーディエンスにリーチするため、ディズニー以外のエンターテインメント企業も、HQのようなゲームに殺到している。ディズニー、NBC、ニコロデオン(Nickelodeon)、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)は今年、HQトリビアのゲームのスポンサーになっている。ディズニーの出資について知る者によると、先月配信されたディズニーがテーマのゲームは、78万5000人のプレイヤーが参加したという。FOXとTBSは、独自のライブトリビアアプリをリリースしている。
ディズニーとの融合
調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のバイスプレジデント兼主席アナリストであるジェームズ・マッキベイ氏によると、HQトリビアは、リピートする価値がある、少ない努力で感情が高ぶる高頻度の体験という、ほとんどの企業が達成できていないことをモバイルで達成できるという。
オーディエンスに直接配信するコンテンツの拡大に向けたディズニーの取り組みにも、HQトリビアへの出資が役立つ可能性がある。ディズニーは昨年、Netflix(ネットフリックス)への映画の提供を打ち切り、独自のストリーミング動画サービスを構築すると発表した。さらに今年に入って、ディズニー傘下のESPNは、オリジナル番組と試合中継を提供するサブスクリプション制ストリーミングサービス、ESPN+を導入した。サブスクライバーを惹きつけるため、ディズニーは、人々が喜んで金を払うコンテンツを十分に提供する必要がある。
HQトリビアは広告支援型の無料アプリだが、このアプリはスポーツ関連のトリビアに最近進出したので、たとえば、ディズニーがそれをESPN+向けの「HQスポーツ(HQ Sports)」番組に発展させることが可能だ。少なくとも、ディズニーはHQトリビアを利用して、すでに同アプリを利用しているオーディエンスに対して、自社のデジタル動画サービスを宣伝することができる。
広告展開の強化も
ディズニーが広告主に販売している広告枠のポートフォリオに、HQトリビアを追加することも考えられる。ディズニーは先月、ABCやESPNなどのTVネットワークとそのデジタルプラットフォームの広告販売を1社が扱うようにした。ディズニーの広告販売経路のひとつになれば、HQトリビアはもっと多くのスポンサーを惹きつけるのに役立つ可能性がある。モバイル版「ホイール・オブ・フォーチュン」として今月スタートする 「HQワーズ(HQ Words)」のような比較的新しい番組の場合は、特にそれが言える。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)