ディズニー、Huluとの連携でストリーミング広告販売を強化

ディズニー(Disney)がHulu(フールー)を完全子会社化してから1年が経った。そして同社はいま、自社の従来型テレビとデジタルインベントリー(在庫)と併せて、Huluのインベントリーを今年のアップフロント市場で販売する準備を進めている。

ディズニーアドバタイジングセールス(Disney Advertising Sales)でクライアントおよびブランドソリューションズ担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるリサ・バレンティノ氏は「ひとつのポートフォリオとして売り込む予定だ。これらの契約にHuluを組み込んで、アップフロント契約の交渉を進めることになる」と語る。

ディズニーは単一契約の一環として、自社のテレビ番組やスポーツイベントの生中継を含む、Huluとディズニーのデジタル動画インベントリーで広告を購入できる新プログラム「ディズニーHulu XP(Disney Hulu XP)」を構築している。広告主は今後、スタンドアローンオプションとして、あるいはディズニーとの包括的な契約のなかで、ディズニーHulu XPを購入できる。このプログラムの一環として(キャンペーンに利用できるのは10月1日から)、広告が広告主のターゲットオーディエンスにリーチすることをディズニーは保証する。また、広告主が料金を支払うのは、広告が最後まで視聴された場合だけであることも保証する。

人々が自己隔離でテレビ番組や映画のストリーミングに費やす時間が増えているいま、ストリーミングに対する広告主の関心は高まっている。Huluが仲間に加わることで、ディズニーはすでに大きくなりつつある広告主の関心をものにしやすくなるはずだ。またディズニーは、Huluをポートフォリオに加えることにより、視聴者が自社デジタルフットプリントの全域で広告主のキャンペーンを目にする頻度を管理しやすくなるだろう。広告によって視聴者が商品の購入を検討する確率が高まっているかどうかといったような、キャンペーンとの接触が広告主の事業に与える影響のトラッキングも可能になる。

PMGでブランドメディアディレクターを務めるナタリー・ゲルダート氏は、「Huluは巨大だが、ディズニーはもっと巨大だ。その上に重なる付加的なスケール、それは彼ら独自の、途方もない価値を持つデータソースのように思える。そのスケールは計り知れないものになるはずだ」と語る。

ディズニーが発表した直近の決算報告によれば、3月下旬におけるHuluのサブスクライバー数は3210万人。うち330万人は同社のストリーミングペイTVサービスに加入している。ただし、彼らサブスクライバーのうち何人がHuluのアドフリーサービスを利用しているのかは、明らかにされていない。

フリクエンシーの課題も軽減

Huluをアップフロントピッチに追加すること以外にも、広告主がディズニーのデジタルプロパティとHuluに渡ってプログラマティックで購入したキャンペーンに、個々の視聴者が触れる頻度に関するHuluのガイドラインも導入される予定だと、バレンティノ氏は話す。エージェンシー幹部の話では、Huluのガイドラインにより、個々の視聴者に対して広告主のキャンペーンがひとつの番組内で2回以上、1日のうちに4回以上表示されないことが定められているという。

広告主にとって、とりわけ複数の企業が同じインベントリーを販売できるコネクテッドTV市場においては、ストリーミング視聴者がキャンペーンを目にする頻度の管理は以前からの課題だった。ストリーミング契約を少数の企業に集約できれば、この問題も軽減できる。ディズニーとバイアコムCBS(ViacomCBS)の両社は、どうやら今年のアップフロントでこのチャンスに飛びつくつもりのようだ。

すでにディズニーはTV測定企業のサンバTV(Samba TV)と契約を結び、ディズニーのリニアネットワークとデジタルプロパティに流れる広告とその成果を結びつけられるプラットフォームの開発に取り組んでいる。「オフラインのコンバージョンや購入、フットトラフィック、リーチ、フリクエンシーなど、すべてを測定可能にすること。それがディズニーの目標だ」と、バレンティノ氏は語る。

ディズニーは過去数年にわたって広告販売戦略の統一に取り組み、自社のリニアネットワークとデジタルプロパティのインベントリーをまとめてきた。同社は2017年、ABCと一部の自社ケーブルTVネットワークを皮切りに、広告販売の統合を開始した。翌年には、そこにESPNの広告販売も加わった。そして今度がHuluの番というわけだ。

ストリーミングの重要性の高まり

広告バイヤーたちは、Huluで広告販売担当シニアバイスプレジデントを務めていたピーター・ネイラー氏が2020年4月にスナップ(Snap)へ移籍するはるか以前から、ディズニーがHuluを広告販売のポートフォリオに組み入れるのを待ち望んでいた。「2019年に開かれた、Huluとのミーティングに出席したときのことを覚えている。その席で私は、『いつになったらディズニーとHuluのターゲティング力をひとつにまとめられるのか?』と尋ねたのだが、答えはなかった」と、あるエージェンシー幹部は語る。

Huluをアップフロントピッチに加えるというディズニーの動きが浮き彫りにするもの、それはテレビ企業の販売活動にストリーミングが占める重要性の高まりだ。ストリーミングの視聴者数は成長を続けているが、広告主は依然として従来型テレビこそが多くの視聴者にリーチするための主要手段であると考えている。その一方で、Huluをはじめとするストリーム配信業者のおかげで、従来型テレビに目を向けていては、ますます獲得しにくくなっている人々の多くに広告主はリーチできる。

「Huluの主な視聴者は若く、積極的だ。ディズニーのデジタル動画の主な視聴者は若く、多様性に富んでいる。XPなどの新プロダクトでパッケージングの観点からリニアとOTT(オーバーザトップ)、デジタルを統合することで、当社はリーチを徐々に増やしている」と、バレンティノ氏は語る。

リニアとストリーミングをパッケージングすることで、広告主は出費に見合う数の視聴者にリーチする能力を損なうことなく、オーディエンスのシフトを管理しやすくなる。だからこそ、テレビネットワークグループは今年のアップフロントピッチの中心にストリーミングプロパティを据えているのだ。

テレビネットワーク各社は過去、アップフロントピッチのフォーカスを自社のリニアネットワークに置いてきた。「ストリーミングはあくまで補足だった。それがいまでは、両者を並べてピッチする企業がますます増えている」と、別のエージェンシー幹部が語る。

複合企業との取引での気がかり

広告バイヤーにとってマイナスなのは、セールスピッチのストリーミング側の強化において、ネットワーク側は広告バイヤーが望む以上に対等な交渉をアップフロントで展開されることが見込まれているという点だ。メディア企業の広告売上に大打撃を与える景気の低迷により、今年のアップフロントはどちらかといえば買い手市場になるはずだった。近年は売り手が力を握る状態が続いている。そのため、リニアのオーディエンスが減少しているにもかかわらず、広告主は出費の増加を約束させられてきた。広告バイヤーはこのバランスが自分たちに有利なほうに傾くことを期待しているが、ディズニーのような複合企業との取引では、それほど多くのことは望めないだろう。

「Huluがディズニーの傘下に入り、両者の力をまとめて活用できるようになるのは望ましいことだ。これが当社のクライアントにプラスの効果をもたらしてくれることを願うばかりだが、複合企業になればスケールもレバレッジも増大するのが世の常で、この点が気がかりだ。実際にふたを開けてみるまではわからないが」と、3人目のエージェンシー幹部は語った。

Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)