「サバイバル」も広告収益化、 ディスカバリー の強みとは?:パッションジャンルに大きな可能性

クルマやサバイバル、テクノロジーなど多様なカテゴリーのコアなコンテンツを提供しているディスカバリーのOTTサービス「Dplay」。そのスタンスは、広く多くのオーディエンスを楽しませるのではなく、各カテゴリーの熱心なファンに対して上質なコンテンツを提供し、彼らを魅了するブランドを提案することだ。

ディスカバリー・ジャパンのプロダクト戦略&マーケティングディレクターであるジェニー・ヤン氏は、コアなコンテンツに特化している理由として他OTTサービスとの差別化に加え、アメリカや日本などの市場での消費者がマチュアになっている点を挙げる。「消費の傾向が変化していくなか、オーディエンスの投資はさまざまな趣味に集中しており、平均3万円以上を投じているという結果が出た。パッションジャンル(ユーザーが情熱を注ぐ趣味・嗜好)に特化したコンテンツにポテンシャルがある可能性を示している」。

「サバイバル」の優位性

多数のパッションジャンルのなかでもディスカバリーを象徴するカテゴリのひとつがサバイバルだろう。もともとはディスカバリー内でもニッチなカテゴリーだったが、YouTubeで公開したことで一気に人気コンテンツとなった。現在、日本のディスカバリーチャンネルが開設しているYouTubeチャンネル登録者数は80万人を超え、月間UU数は約300万人に達するという。

「サバイバルは日本だけでなく中国や東南アジア、インド、アメリカ、EUと世界的に人気があり、オーディエンスの傾向として20〜40代の比較的若い層が多い。面白く質の高いコンテンツを提供してきたことで、自分がサバイバルファンだと思っていなかった人でもファンになっていった」と、ヤン氏は続ける。「『サバイバルゲーム』シリーズに登場していたサバイバルスペシャリストのベア・グリルスは、いまやNetflixで自身の番組を製作しているほどだ。クルマもグローバルで人気のあるカテゴリーであり、多くの国で厚いファン層を有しているが、クルマが社会に浸透していない国では人気が出にくい」。


人気コンテンツのひとつ、エド・スタフォードが登場する『大脱出! サバイバルレース』

これが示しているのは、パッションジャンル・コンテンツの効率とコストパフォーマンスの良さだ。製作の主体はボリュームゾーンであるアメリカになるものの、たとえどの国でコンテンツを製作しても、同じフォーマットを使用すればグローバルで人気が出る可能性を持っている。国ごとに特有の出演者やトピックでは、その国だけのユニークになってしまいスケールの可能性は小さいが、パッションジャンルそれ自体は極端な固有性がないというわけだ。

ブランデッドコンテンツとしての強み

コアなファンと彼らを満足させるコンテンツは、最適なオーディエンスによりブランドを理解してもらえる手段として、広告主にとっても魅力のあるものとなる。ディスカバリーの収益は大きく有料会員と広告だ。Dplayの場合、今後予定されている有料化や無料会員向けのAVOD(広告付き動画配信)となるが、広告のメインとなっているのはディスカバリーが製作するロングフォームコンテンツを利用したブランデッドコンテンツとなる。

「クリエイティブラボと呼ばれるブランドスタジオでディスカバリーカラーのロングフォームコンテンツを作り、プロダクトプレイスメントによってクライアントのブランドやプロダクトが登場する。たとえば中国で撮影された、エド・スタフォードが出演する『大脱出! サバイバルレース』はシボレーがスポンサーとなっている」。ベア・グリルスに次ぐサバイバルスペシャリストとして知られるエド・スタフォードのコンテンツを視聴するのは、サバイバルやアウトドアに強い関心を持っているファンたちだ。そんなオーディエンスに対し、シボレーのSUVの認知を自然に拡大することができるチャンスとなるとヤン氏は語る。

「パッションジャンルのファクチュアルコンテンツにフォーカスし、自分たちでクオリティの高いコンテンツを作ることができるディスカバリーだからこそ、ブランデッドコンテンツを主軸にできる。これはディスカバリーだからこその強みだと考えている。多様なコミュニティとコンテンツの価値を広告主にはアピールしていきたい」。

ロングフォーム、テレビサイズへのこだわり

コンテンツそのものだけでなく、視聴のされ方にもディスカバリーとしてのこだわりが存在する。たとえば、ソーシャル上での動画配信についてはYouTube以外にも、TwitterやFacebookなどの利用を検討したことがあったが、現時点でこれらのサービスは利用していない。「多くのSNSはショートフォームの動画のみに対応しており、ロングフォームは利用できない。必然的に選択肢はYouTubeとなった」と、ヤン氏は指摘する。「ディスカバリーはロングフォームが魅力であり、いわゆるバズ動画のような数秒間のコンテンツを展開するようなスタイルはあまり向いていない。今後、ロングフォームにフィットするプラットフォームが登場すれば検討してみたい」。

視聴スタイルも重要だ。DplayのようなOTTサービスを利用する際、主要なデバイスとなるのは大抵スマートフォンだ。Dplayもアプリが配信されていることもあり、現在はスマホ視聴が多数を占めているが、ヤン氏は「ディスカバリーのコンテンツを堪能してもらうために大きなスクリーンを推奨したい気持ちはある」とも語る。「画質や映像のクオリティの高さからも、コネクテッドTVユーザーの増加を期待している。若年層がテレビをあまり所有していないというハードの壁もあるが、今後のコミュニケーションで是非とも提案したい」。

Photo credit: Discovery Communications
Written by 分島翔平