料理特化の「過去番組」を収益源にする ディスカバリー:新ストリーミングサービスをローンチ

ディスカバリー(Discovery)はこの10月、スタンドアロンのストリーミングサービス「フードネットワーク・キッチン(Food Network Kitchen)」をローンチする。フードネットワーク(Food Network)の人気出演者たち、レイチェル・レイ氏やボビー・フレイ氏、ジャーダ・デ・ラウレンティス氏、マーサ・スチュワート氏らをフィーチャーした、ライブかつ双方向の料理番組を配信するサービスだ。

これらのライブ番組がフードネットワーク・キッチンのメインコンテンツとなる一方、この月額6.99ドル(約762円)のサブスクリプションストリーミングサービスでは、ディスカバリーの従来のテレビネットワークで放送された料理番組の過去シーズンも配信される。たとえば、「ベアフット・コンテッサ(Barefoot Contessa)」や「ブランチ@ボビーズ(Brunch @ Bobby’s)」「パイオニア・ウーマン(The Pioneer Woman)」などだ。

古いコンテンツから新たに収益を上げる機会を見いだすメディア企業が増えており、ディスカバリーがフードネットワーク・キッチンで過去番組を配信する動きは、その最新の例だ。しかしディスカバリーはこのトレンドにひとひねりを加え、フードネットワーク・キッチンに追加する番組から、広告、サブスクリプション、そしてアフィリエイトコマースと、3通りの方法で収益を得ようとしている。なお同サービスは、AmazonのFire TV(ファイヤーTV)プラットフォーム、Echo Show(エコーショー)デバイスのほか、iOSおよびAndroid向けアプリを通じて提供される。

人々に愛されるプロダクト

利用者は、フードネットワーク・キッチンの無料の広告付きバージョンで一部のこれら番組を視聴することができ、ディスカバリーはそのインプレッションに対して広告を販売することができる。利用者が月額6.99ドル、年額59.99ドル(約6543円)の広告なしのサブスクリプションプランに加入すれば、双方向のライブ料理番組を視聴できるが、過去番組のライブラリーは、これら毎週または毎日の料理教室の合間に視聴できる豊富なコンテンツとして、解約の食い止めにひと役買うことになる。

しかし、フードネットワーク・キッチンでは、「ジャーダのおもてなしレシピ(Giada at Home)」といった番組の過去シーズンを視聴できるだけではない。各エピソードに取り上げられたレシピを見て、必要な材料をフードネットワーク・キッチンに組み込まれた食料雑貨の配達サービス、Amazonフレッシュ(Fresh)、インスタカート(Instacart)、およびピーポッド(Peapod)を通じて購入することも可能だと、ディスカバリーの直販製品担当CEOピーター・ファリシー氏は述べている。

「エンターテインメントの要素だけでなく、そこにユーティリティの要素を組み合わせることができれば、本当に人々に愛されるプロダクトを生み出せると考えている」と、ファリシー氏は話す。

また、料理教室で取り上げられたレシピも、同じくフードネットワーク・キッチンを通じて材料を購入できるほか、無料とサブスクリプションの両プランで8万件のレシピにアクセスできる。フードネットワーク・キッチンを通じて購入された材料の収益は、一部がディスカバリーの取り分となる。

「実に賢いし、またある意味で、非常にあからさまなやり方だと思う。これらの番組は要するに30分間のインフォマーシャルだ。『この料理を作って、この材料を買え』ということなのだから」と、コンサルティング会社TVレブ(TVRev)の共同創業者兼リードアナリストのアラン・ウォルク氏は評する。

所有権を手にしている強み

過去番組をフードネットワーク・キッチンで配信するにあたって、ディスカバリーは自社のテレビネットワークで放送する全番組の所有権を手にしている強みを生かしている。ディスカバリーが放送番組の所有権を保持しているのは、他のテレビネットワークと比べて「異例」のことだと、ウォルク氏はいう。所有権をもっていることで、ディスカバリーはチャンスと見ればいつでも好きな形で自社番組を再配信することができる。このテレビコングロマリットは、すでに番組を自社所有する利点を生かし、ゴー(Go)ブランドの各アプリを通じてテレビ番組の全ライブラリーを配信しており、有料テレビのアカウントで登録すると、番組の現在と過去のシーズンをストリーミング視聴できるようにしている。それと同じことを、今度はやや小規模ながらフードネットワーク・キッチンでやろうとしているわけだ。

ディスカバリーは当面、自社の料理番組を料理専門のストリーミングサービス限定で配信する予定だと、ファリシー氏は述べている。

所有権をもちたがる傾向をさらに示す例として、ディスカバリーはフードネットワーク・キッチンの提供に用いられる技術も自社で保有している。ディスカバリーは今年に入ってこの技術を開発、それを使ってローンチする第1号プロダクトがフードネットワーク・キッチンというわけだが、それで終わりではない。ほかに同社が手がけるサブスクリプションストリーミングサービスのひとつ、「ユーロスポーツ・プレイヤー(Eurosport Player)」についても、ディスカバリーはディズニー(Disney)傘下のBAMTechから自社技術への乗り換えを進めているところだと、ファリシー氏は述べている。

一部のテレビ番組の過去シーズンをフードネットワーク・キッチンで配信するというのは、自社の従来のテレビチャンネルにはお金を払う気がないオーディエンスを引きつけるための、ディスカバリーの戦略のように思える。CBSやAMCといったテレビネットワークがサブスクリプションストリーミングサービスを開始し、有料テレビに加入していない人もそれらのテレビ番組を視聴できるようにしているのと似たやり方だ。しかしファリシー氏は、フードネットワーク・キッチンは特にテレビの加入者以外をターゲットにしているわけではなく、同社のテレビネットワークやGoブランドのアプリを補完するサービスという位置づけだと述べている。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)