ディスプレイ広告など他の収入源がつまづくなかで、読者から収益を得るためにサブスクリプション製品に注目するパブリッシャーが増えている。パブリッシャーにとってサブスクリプション製品の魅力の一部は、途中で必要になる追加リソースが比較的少ないことがあげられるかもしれない。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
ディスプレイ広告など他の収入源がつまづくなかで、読者から収益を得るためにサブスクリプション製品に注目するパブリッシャーが増えている。パブリッシャーにとってサブスクリプション製品の魅力の一部は、途中で必要になる追加リソースが比較的少ないことがあげられるかもしれない。
本記事は、2018年8月に開催したイベント「DIGIDAYホットトピック:サブスクリプション・アンド・メンバーシップ(Digiday Hot Topic: Subscriptions and Memberships)」に参加したパブリッシャー幹部を対象に行ったDIGIDAYリサーチの調査結果だ。調査したパブリッシャーの4分の3は、サブスクリプション製品に割り当てるのは社内リソースの25%以下だと回答している。
低コストな運用体制
もちろん、サブスクリプション製品を作るのにかかるコストはパブリッシャーごとに異なり、その製品の性質によって大きな差がある。
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先頃新しいメンバーシッププランを発表したデイリー・ビースト(The Daily Beast)の最高経営責任者(CEO)、ヘザー・ディートリック氏は、サブスクリプション製品に割り当てるリソースの割合について「間違いなく1~9%の範囲だ。それはまだ初期段階にある」と語った。
スレート(Slate)で製品ならびにビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるデビッド・スターン氏によると、「(『スレート+[Slate+]』を作るうえでの)最大のコストは、我々が行った集中的な消費者調査に加えて、製品デザインやソフトウェア開発の側面だった」という。また、ポリティコ(Politico)の広報担当者は、「ポリティコ・プロ(Politico Pro)」製作費のうちもっとも費用がかかった部分は、コンテンツを作成するジャーナリストを雇う費用だったと述べた。
広告とのバランス
パブリッシャーがサブスクリプションに注ぎ込める固有リソースのひとつが広告インベントリー(在庫)だ。サブスクリプション製品のマーケティングのためであれ、ユーザー体験の向上のためであれ、広告インベントリーを手放すことを嫌がるパブリッシャーもいる。広告は予測可能な当面の収入をもたらすからだ。
よりよいユーザー体験を提供する取り組みのなかで、スレートは、4万6000人のスレート+の購読者のために動画広告やポッドキャスト広告、アプリ内広告を削除している。スターン氏は次のように話す。「有料購読者は、1人あたりのユーザーベースでは信じられないくらい価値があるが、我々には2000万人の月間ユニークユーザーがいるので、全体としてはたいした数ではない……だが、こうした具体的な数字に意味がないなら、議論のなかでユーザー体験の向上を支持することは難しいだろう」。
インフォメーション(The Information)のようにサブスクリプション収入の増加だけを目指してリソースの半分以上を投入しているパブリッシャーはほとんどいない。
人的リソースの采配
パブリッシャーはむしろ、デイリー・ビーストやポリティコ、スレートのように、さまざまな部署からリソースを引き出して、核となるエディトリアルコンテンツの提供に加え、サブスクリプション製品の開発と運営を助けている。デイリー・ビーストの購読者限定の電子メールニュースレター「ラビット・ホール(Rabbit Hole)」では、すでに似たようなコンテンツ制作にかかわっていた編集スタッフ数人を製品担当に振り分け、彼らの他の責任を軽減することができたと、ディートリック氏はいう。「製品から技術、編集からマーケティングまで、人々は本当に(製品作りに)何らかの形で関わった。このプロジェクトでは、一定の目標に向かって関係者全員が足並みをそろえて行動する必要があったが、その先にはたくさんのメリットが待ち受けている」。
スターン氏は、スレート+には「編集スタッフ全員を抱える特別な予算があり、収益と比較したら、スレート+は6倍以上の利益をあげているが、デザインやマーケティング、広告といったものはそこの計算に含まれていない」と述べた。
ポリティコの広報担当者は500人のスタッフでそれを共有し、「約40%がポリティコ・プロに携わっている」と話した。さらに、「ほとんどの幹部は言うに及ばず、テクノロジーや製品、マーケティング、人的リソースのような共有サービスが何らかの形でポリティコ・プロを支えている」と付け加えた。この比率はほかのパブリッシャーより高いかもしれないが、ポリティコ・プロはいまや、ポリティコの収益の50%以上を生み出している。
サブスク戦略のコツ
より多くのスタッフを抱える大手パブリッシャーにとって、サブスクリプションに貢献しているスタッフの数、すなわちリソースの量を理解することは難しいだろう。2017年の年次報告書によると1450人のジャーナリストを抱えているニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の広報担当者は、フルタイム、パートタイムのどちらでも、サブスクリプション製品に貢献しているスタッフの割合を判断することは「不可能だ」と述べた。
サブスクリプション収益の増加はパブリッシャーにとっては時間のかかるプロセスだが、経常収益のようなものがそれを価値あるものにしている。サブスクリプションにはかなりの初期費用が必要かもしれないが、社内にリソースをプールすることが負担軽減や管理可能にすることにつながりうる。
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Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)