[ DIGIDAY+ 限定記事 ]多様で持続可能なビジネスモデルを目指してペイウォールを築き、プロダクトを提供するパブリッシャーが増えている。そんななか、有料購読者への特典として「広告なし体験」を売りにするメディアも少なくない。そこで、サブスクリプションサービスを提供しているパブリッシャーの幹部社員99人を対象に調査を行った。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]多様で持続可能なビジネスモデルを目指してペイウォールを築き、プロダクトを提供するパブリッシャーが増えている。そんななか、有料購読者への特典として「広告なし体験」を売りにするメディアも少なくない。
しかし、米DIGIDAYがサブスクリプションサービスを提供しているパブリッシャーの幹部社員99人を対象に行った調査によれば、パブリッシャーの大部分は依然として、有料購読者からの売上を最大化するため、広告を利用している。回答者の74%が、現時点で有料購読者への広告表示を行っていると回答した。
ペイウォールはページビューや広告在庫の利用可能性に悪影響を与えるおそれがある。だが、一部のパブリッシャーは、高エンゲージメントの有料読者がむしろ広告ビジネスを成長させたという。とりわけ、具体的な分野に特化したパブリッシャーにこうした傾向がみられる。コンテンツに料金を払う意思のある、きわめてエンゲージメントが高いオーディエンスを獲得することは、営業部門にとって価値あるツールになりうると、彼らはいう。また、ターゲティングや見込み顧客の獲得、測定やアトリビューションに利用できるデータの増加にもつながる。
回答者における賛否両論
健康と医療に特化したメディア「スタット(Stat)」は、数百万人の月間ユニークユーザーを集めるが、このうち有料購読者はごく一部でしかない。同社の最高売上責任者、アンガス・マコーレー氏は、「広告主は我々に400万や500万のインプレッションを求めてはいない。重要なのはいつでも、適切なターゲットに届くかどうかだ。スタット+の購読者は業界の最重要人物たちであり、広告主がまさに求めている人々だ」と語る。
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しかし、広告フリー体験は有料登録を促す便利な道具のひとつでもある。消費者は依然として、邪魔な広告フォーマットだらけのページに圧倒されている。
スポーツ専門のサブスクリプションメディア「アスレチック(The Athletic)」は、発足以降、断固として広告を拒んできた。広告を表示すれば売上増が見込めるが、「収入源の多様化のためにエンドユーザー体験を犠牲にする気はない」と、アスレチックの共同創業者アダム・ハンスマン氏はいう。
ある回答者は米DIGIDAYに対し、「広告フリーは我々のサブスクリプションサービスの重要な特徴だ。広告がないことは、ユーザーにとって非常に大きな利益となる」と述べた。
有料購読者層の規模によっては、広告表示をなくしても売上の損失は微々たるものという場合もある。「有料メンバーはユーザー1人あたりで見れば、ずば抜けて価値が高いが、全体に占める割合ではそれほどでもない」と、スレート(Slate)のプロダクト担当シニアバイスプレジデントを務めるデビッド・スターン氏は、自社のサブスクリプションオファーに関して以前米DIGIDAYに述べている。
「数字自体に説得力がなければ、広告をなくしてユーザー体験を改善すべきだという主張が通ることはない」と、スターン氏はいう。
ユーザー体験の品質保証
パブリッシャーの方針として、有料購読者にも広告を表示するとなったら、ユーザー体験の品質保証に気をつける必要がある。アドブロックをめぐる恐慌はかつてに比べれば沈静化したが、パブリッシャーはいまもこの問題に対処中だ。だからこそ、全体としてパブリッシャーはバナーや自動再生動画に背を向け、スポンサードコンテンツや「ネイティブ」広告に注目している。
なお、ボニア(Bonnier)傘下のサブール(Saveur)などのパブリッシャーは折衷案として、有料購読者には無料読者よりも広告負荷の軽いページを提供するとしている。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)