[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ファーストプライスオークションへの移行とヘッダー入札の展開は、パブリッシャーがプログラマティック販売からの利益を大幅に増やすのに役立っている。米DIGIDAYの調査では、ファーストプライスオークションが売り上げ増につながったと回答した人は78%で、ヘッダー入札による収益増を体験したという人は88%だった。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]米DIGIDAYの調査によると、ファーストプライスオークションへの移行とヘッダー入札の展開は、パブリッシャーがプログラマティック販売からの売り上げや利益を大幅に増やすのに役立っている。米DIGIDAYが2018年11月に、プログラマティックに広告を販売するパブリッシャー100人以上を対象に行った調査では、ファーストプライスオークションが売り上げ増につながったと回答した人は78%で、ヘッダー入札による収益増を体験したという人は88%だった。
パブリッシャーは当初、セカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへ緩やかに移行しようとしていたが、そのスピードは2018年になって加速した。デマンドサイドプラットフォームのゲットインテント(GetIntent)は、2018年3月に行った調査で分析したプログラマティック広告の43.3%がファーストプライスオークションで取り引きされていたことに気づいた。
多くのパブリッシャーにとって、その決断は結果をもたらしている。
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両サイドにメリットが
フューチャープレース(Future plc)のプログラマティック売り上げ担当ディレクターのマーク・ロペラート氏は、フューチャープレースの各パートナーの力を借りて、セカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへ移行してインベントリー(在庫)を販売することで、売り上げの大幅増加につながったと話す。「CPM平均で、特定の入札からおおよそ25~50%増加している」とロペラート氏はいう。彼はまた、フューチャープレースのインベントリーのいくつかは、まだセカンドプライスオークションで販売されており、それはパートナーがファーストプライスオプションを提供しているかどうかに依存していると指摘した。
アドバイヤーも同様のトレンドに気づいている。エージェンシーのハーツアンドサイエンス(Hearts & Science)は、ファーストプライスオークションとセカンドプライスオークションで購入するテストを実行し、ファーストプライスオークションにおける入札の場合、平均のCPM価格は59%だったと判明した。
だが、すべてのパブリッシャーが長期的増加を体験しているわけではない。ドットダッシュ(Dotdash)のプログラマティック担当バイスプレジデントであるサラ・バドラー氏は、ファーストプライスオークションの結果と考えられるCPMの大幅増加は全体としてはない、と述べる。「はじめのうちは少し増加したように思うが、バイヤーが変更に馴染んでくるにつれ、価格は自ずと調整されて予算内に収まるようになり、インプレッションに払いすぎることはなくなった」。
バイヤーらの戦略変更
フューチャープレースのロペラート氏は、ファーストプライスオークションに適合するためにバイヤーたちが戦略を変えてきたと認めている。2番目に高い入札で競争する代わりに、バイヤーは、ユーザーの価値だと信じるものに入札する。
これは、ファーストプライスオークションからより多くの見返りを得るためにオーディエンスをよりよく理解することに投資してきたパブリッシャーを助ける可能性がある。「我々は、どんなオーディエンスかを判断し、ユーザーへの価値を査定するアルゴリズムを考える作業をたくさんしてきた。だから入札のリクエストを出す時に、我々のユーザーへの価値をベースにして、どのインベントリーに価値があるかを正確に測定できる」と、ロペラート氏はいう。理論上、パブリッシャーがバイヤーに対して、入札リクエストに高品質なオーディエンスデータを添付することで自身のインベントリーの質を提示できれば、より高い入札にお金を払うようバイヤーを納得させるのに役立つだろう。
一方ヘッダー入札は、パブリッシャーにとって重要な役割を果たし続けている。DIGIDAYの調査の回答者の3分の1は、ヘッダー入札によって収益率が少なくとも25%増加したと言っていた。ヘッダー入札が収益を50%以上増加させるのに役立つと試算した人は16%いた。マージンが少ない業界では、増分収益は極めて重要だ。
媒体社のネクストステップ
ドイツのメディア企業、アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)のようなパブリッシャーは、ヘッダー入札の恩恵を最大限にするために次のステップへ進もうとしている。同社は2018年、ヘッダー入札を通じてすべてのプログラマティックインベントリーを利用できるようにすると決めた。
ヘッダー入札には初期の頃から遅延問題があり、その解決にはまだ時間がかかるし、技術は完全からはほど遠い。ロペラート氏によると、クッキーマッチングの問題も依然として残っている。ロペラート氏はさらに、業界に受け入れられたユニバーサルIDが、広告主とパブリッシャーのあいだでのオーディエンス識別の問題を改善するだろうともいう。独自のIDを作ったコンソーシアムはいくつかあるが、業界で共有される単一のIDができるまでには時間がかかる。
ファーストプライスオークションとヘッダー入札を使うことによるパブリッシャーの成功の度合いはさまざまだが、プライベートマーケットプレイスやプログラマティックギャランティード契約と同様に、戦術は、広告価格におけるプログラマティックのマイナスの影響と戦うためにパブリッシャーが引きうる重要なレバーだ。「ファーストプライスオークションはプログラマティックが価格に及ぼす影響を和らげるのに役立つ。正しい方向に向けてのいいステップだ」と、ロペラート氏は話す。パブリッシャーがレイオフや売り上げ増加プロジェクトの失敗に苦しんでいるなか、ファーストプライスオークションやヘッダー入札のような戦略は、プログラマティックという病気を治す万能薬ではないが、見過ごすこともまたできない。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)