[ DIGIDAY+ 限定記事 ]パブリッシャーの報告によれば、一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)がデジタル広告収益に悪影響を及ぼすという懸念は、現実になっていないようだ。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]パブリッシャーの報告によれば、一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)がデジタル広告収益に悪影響を及ぼすという懸念は、現実になっていないようだ。
英DIGIDAYが2月25日に欧州のパブリッシャー幹部103人を対象とした調査を行ったところ、2018年5月のGDPR施行以降もプログラマティック収益が増えていると回答した人の割合は25%であったのに対し、収益が減少していると報告した人の割合は17%だった。収益に変化はないと答えた人の割合は58%だ。
また、プログラマティックインベントリー(在庫)の価格は比較的安定しているようだ。78%の回答者が、2018年5月以降も価格は安定していると述べたのに対し、上がったと答えた人の割合は15%、下がったと答えた人の割合は8%だった。
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さらに、欧州のパブリッシャーの30%が、2018年にもっとも急成長した収益チャネルとして、ブランデッドコンテンツやサブスクリプションではなく、ディスプレイ広告と動画広告を挙げていた。
デジタル広告が伸びた要因
デジタル広告収益が伸びた要因のひとつは、プログラマティック販売の基本戦略が成功したことだとパブリッシャーは考えている。具体的には、プログラマティックギャランディード(保証型プログラマティック取引)やプライベートマーケットプレイス(PMP)だ。
プログラマティックギャランティードを導入している欧州のパブリッシャーのうち、80%が2018年にこの取引による収益が前年を上回ったと回答した。PMPでインベントリーを販売しているパブリッシャーも、70%が収益が増えたと報告している。
GDPRの施行前にパブリッシャーが懸念していたことのひとつは、オーディエンスデータを収集する能力が制限され、その結果プログラマティック広告の価値が低下する事態だった。しかし、そのようなことにはなっていない。広告測定会社クアンキャスト(Quantcast)の調査によれば、インターネットユーザーの90%がパブリッシャーのGDPRに関する同意の要請に応じているという。
広告主への立場が強化
GDPRをめぐる騒動が一段落したいま、パブリッシャーの多くが、GDPRのおかげで広告主に対する自社の立場が強化されたと考えている。そう指摘するのは、ニュースUK(News UK)が所有する動画広告会社アンルーリー(Unruly)のプログラマティック責任者、ポール・ガビンス氏だ。彼によれば、GDPRの登場によって、パブリッシャーはオーディエンスデータに対するコントロールを強化せざるを得なくなったという。「パブリッシャーは多くのタグを一層し、データ漏えいを根絶した。その結果、バイヤーはサードパーティデータを利用するロングテール環境で、質の高いオーディエンスをターゲットにできるようになった。その質の高いオーディエンスを得るため、バイヤーは再びパブリッシャーの元に向かわなければならなくなったのだ」と、ガビンス氏は指摘した。
バイヤーは、入手できるサードパーティデータが少なくなったため、パブリッシャーのファーストパーティオーディエンスデータにアクセスしようと、プログラマティックギャランティードやPMPにますます目を向けるようになっている。
ブレグジットの方が懸念
GDPRは大きな騒ぎを引き起こしただけで、実質的な変化をほとんどもたらさなかったというのは、英国を拠点とするデニス・パブリッシング(Dennis Publishing)だ。「GDPRが当社のディスプレイ広告に特別な影響をもたすことはなかった」と、同社の最高デジタル責任者、ピート・ウートン氏は述べている。
デニスのデジタル広告ビジネスに大きなプレッシャーをもたらしているのは、GDPRではなく別の要因だ。「ブレグジットの先行きが不透明なため、一部の自動車会社の広告主が支出を減らしている」と、ウートン氏はいう。「彼らは英国でどの車を販売できるようになるのか見定めており、いまは無駄な支出をしたくないと考えている」とウートン氏は語った。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)