2018年は急激な変化の1年だった。 苦戦する広告メディアが新しい収益源に軸足を移し、FacebookとGoogleの2大体制に対抗しうる第3の挑戦者としてAmazonが浮上し、透明性とコントロールの問題にマーケターはさらに苦しめられた。この記事では、2019年を形作るであろう、トレンド5つ紹介する。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
2018年は急激な変化の1年だった。 苦戦する広告メディアが新しい収益源に軸足を移し、FacebookとGoogleの2大体制に対抗しうる第3の挑戦者としてAmazonが浮上し、透明性とコントロールの問題にマーケターはさらに苦しめられた。この記事では、2018年を振り返り、2019年を展望することで、2019年を形作るであろう、トレンド5つ紹介する。
1. ブランドはマーケティングのさらなるインハウス化を(慎重に)進める
従来型のエージェンシーモデルは完全に終わったわけではないが、マーケティングの舵取りをしようとしているブランドが増えているのはたしかで、結果、エージェンシーはより専門的な仕事をするようになった。米DIGIDAYが昨年12月に広告主161社を調査したところ、マーケターたちは2019年にマーケティング機能の幅広いインハウス化を計画していると語った。このレポートでは、ペイドサーチとオーガニックサーチはインハウスで所有していると答えたマーケターが33%、プログラマティックバイイングを社内で実施したいと答えたマーケターが37%だった。
メディアバイイングなどの機能をインハウス化すると、コスト効率と透明性が向上するとの考えがマーケターに広がり、製薬会社のバイエル(Bayer)やJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)は、独自のメディアバイイングチームを構築した。メディア戦略やクリエイティブ制作など、その他の機能もインハウス化が進む。これを受けてコンサルティング企業が移行の支援に熱心だが、マーケティングの所有が思っていたよりも難しいことに、広告主は気づきつつあり、結果、インハウス化の計画を撤回する広告主がすでに出てきている。
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2019年は、インハウス化の過熱が徐々に収まって、エージェンシーはもう終わりだという話も、少なくとも短期的には落ち着く可能性がある。広告主によるマーケティングのインハウス化は続くだろうが、多くの広告主は、社内スタッフとサードパーティのエージェンシーのあいだにあるハイブリッドモデルに妥協点を見いだしつつあるのだ。広告主のインハウス化の流れが鈍る主な問題のひとつは、従業員の維持かもしれない。かつて幅広い広告主に取り組めていたことを懐かしむものもいるだろうし、インインハウスエージェンシーにおける上昇のチャンスを疑うものもいるだろう。
2. パブリッシャーの収益源が広告を超えて多様化する
2019年は消費者からの収益に重点を置き、収益源の多様化を推し進めていくと語るパブリッシャーが増えている。米DIGIDAYの2018年の調査では、パブリッシャーのおよそ半分が、2019年の最大の成長のチャンスは、ディスプレイ広告や動画広告の外側から到来するだろうと語っている。
収益源の多様化が戦略の中心になる理由は簡単だ。2018年にマイク(Mic)、リトルシングズ(LittleThings)、クッキング・パンダ(Cooking Panda)など、ひとつの収益源に集中していたところがたくさんレイオフを実施したり、完全に畳んだりするのを見て、教訓を学んだのだ。オーディエンスの参照トラフィックをFacebookに依存し、なぜだか動画に軸足を移し、プログラマティック技術のプレッシャーやFacebookとGoogleの2社による複占から広告インベントリー(在庫)の価値が下がると、パブリッシャーには乗り越えられない課題に直面することがわかった。
しかし、特効薬は期待できない。消費者によるサブスクリプションの数にも、開催できるイベントの数にも、直接、あるいはアフィリエイトリンク経由で生み出せるコマース収益にも限界がある。その壁にパブリッシャーが突き当たるのかは、時間の問題というか、時間の問題でさえもない。2019年はバランスのとれたポートフォリオが鍵になるだろう。
3. 大手プラットフォームへの広告主の支出は続く
マーケターは米DIGIDAYの最近の調査で、2019年はプラットフォームへの支出を整理統合すると語っている。メディアバイヤーのおよそ4分の3は、インスタグラム(Instagram)とAmazonへの支出を増やすことを計画。Facebookについても、データプライバシーのスキャンダルで繰り返し面目をつぶしているが、マーケターの50%は支出を増やすとしている。
マーケターがこうしたプラットフォームに不満を持ちつつ支出を続けようとしているのは、それ以外にほとんど選択肢がないからというのが大きい。ひとつ驚きなのは、Amazon、Facebook、Googleなどが、アトリビューション測定を阻害するウォールドガーデンで運営していることだ。利害の対立は明確であり、広告主は、広告と消費者がうまくいっているのかを知ろうとすると、プラットフォームに頼らざるを得ないことが多い。
広告主がプラットフォームの規模、パフォーマンス、使いやすさから離れられなくなっているというのもある。マーケターが数億規模の消費者にリーチでき、ものの数分で巨大なキャンペーンを作ったりできる場所はプラットフォームだけなのだ。一方、メディアバイヤーには、結果を出すようにクライアントからのプレッシャーがあり、エージェンシーのマージンが薄くなるなか、大量の契約を失う危険もある。メディアバイヤーが成果を強要され、オープンエクスチェンジにおける広告インプレッション詐欺のリスクを冒したくなければ、大きなプラットフォームが安全な選択肢ということになる。
4. Amazonが広告に本気になる
Amazonの広告事業参入は、眠れる巨人の目覚めだった。eコマースの怪物であるAmazonは、すでにFacebookとGoogleに次ぐ広告プラットフォーム第3位であり、25億ドル(約2700億円)の広告ビジネスを短期間で構築した。Amazonの成功は多くの人にとって驚きではない。メディアバイヤーが楽観的なことから、この急成長が近く止まることはないだろう。
Amazonは先日、新しいヘッドクォーターのひとつを、大手メディアバイヤーのオフィスからほど近いロング・アイランド・シティに2019年に開設すると発表したが、これはAmazonが広告ビジネスの改善に本気だという意思の表れだ。しかし、現在バイヤーの頭痛のタネになっている広告サービスを、Amazonが改善すると信じる理由はこれだけではない。あるバイヤーは米DIGIDAYに、Amazonは広告ビジネスの構築に長期的な視野で取り組んでいるのだと語った。いくつかのアドテクを買収して統合するのではなく、独自インフラの構築をじっくり考えているのだというのだ。複数の広告システムを統合すれば、広告ビジネスの規模を早く拡大するのには役立つかもしれないが、Facebookが思い知ったように、その先には深刻な問題やシステム障害が待っている可能性がある。
5. パブリッシャーは動画に冷ややか
前回のDIGIDAYリサーチの調査では、短尺動画の市場に楽観的だとしたパブリッシャーはわずか4分の1だった。業界の整理統合と、短尺動画シリーズ市場の低調から、パブリッシャーが沸き立つ理由はほとんどない。
ゴー90(Go90)が、オウサムネスTV(AwesomenessTV)を、それに結果的にデファイ・メディア(Defy Media)を巻き込んで閉鎖した。Facebookはパブリッシャーを意図的に欺いたのだろうか。動画視聴の指標にあおられて、パブリッシャーは動画制作に前のめりになった。2018年9月のDigiday
Publishing Summitでパブリッシャーたちは、広告を通じて短尺動画をマネタイズするために必要な規模を達成するべく奮闘していると語っていた。こうして、短尺動画を作ろうというパブリッシャーは、いかにマネタイズしていきたいのかに想像力を発揮せざるを得なくなった。その一部は、動画内で商品を褒めるスポンサード番組に行き着いた。
デジタル動画シリーズを追求するパブリッシャーには、少しだが明るい材料がある。ハリウッドの映画プロデューサー、ジェフリー・カッツェンバーグ氏が計画しているモバイルビデオストリーミングサービスのクイビ(Quibi)が短尺動画シリーズに数百万ドルを投じ、Snapchat(スナップチャット)がFacebook動画の転用のためのディスカバリーを開設するからだ。しかし、2019年にパブリッシャーの気持ちを変えさせるには、おそらくこれでは足りないだろう。Facebook Watchが提供するライセンス料は、捕らえどころがないものであることが判明した。動画広告、それも特にモバイルデバイスの動画広告は詐欺を受けやすく、このことが、質の高い動画を制作するための資金調達をますます難しくしている。
Mark Weiss (原文 / 訳:ガリレオ)