［ DIGIDAY＋ 限定記事 ］ads.txtの適用範囲がモバイルアプリにも拡大されることになり、アドバイヤーのなかには、モバイル広告に、より多くの投資を期待する声がある。

2019年3月に米DIGIDAYが調査したメディアバイヤー206人のうちの31％が、「app-ads.txt」と呼ばれる新システムの導入を受けて、モバイル広告フォーマットに追加予算を割り当てるつもりだと答えている。回答者の10％は予算を増やす予定はないという一方で、予算の配分法を変えるかどうか決めていないという答えが59%にのぼった。

app-ads.txtの効果

インタラクティブ広告協会（Interactive Advertising Bureau：IAB）のテックラボ（Tech Lab）は3月13日、ベータテストを終えapp-ads.txtを公開した。app-ads.txtは、デスクトップウェブサイト向けのads.txtファイルに似たアプローチを使ってモバイル広告詐欺を防止する助けにするために考案されたものだ。アプリパブリッシャーはこれを利用して、彼らのアプリ内インベントリー（在庫）の販売・再販を認められた業者のリストを作成することで、エクスチェンジやモバイル広告ネットワークでインベントリーの「なりすまし」を行い、実際にはアクセスできないインベントリーを売ろうとする悪者の力を制御する。

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モバイル広告ネットワークやエクスチェンジに多額の投資をしているバイヤーにとって、近年のアプリ内広告詐欺の増加を考えると、app-ads.txtの追加は歓迎すべき出来事だ。メディアエージェンシーであるエンパワー（Empower）のエンジニア、ジェームズ・ハセット氏は「app-ads.txtはアプリ内広告のインベントリーをウェブインベントリーのレベルまで引き上げる」と話す。

app-ads.txtは、あらゆるタイプのアドフラウドを撃退できる万全の対策ではないが、マーケターがチャンネルを安心して利用し、その結果需要の増加をもたらすのに役立つとパブリッシャーは期待している。2019年には930億ドル（約10兆円）がモバイル広告に費やされるとイーマーケター（eMarketer）は試算している。

「厄介なのはAppleだ」

app-ads.txt導入の結果、バイヤーたちがモバイル広告支出をいかに素早く増加させるかは、アプリパブリッシャーとAppleやGoogleなどの大手アプリストアオーナー、両方の採用状況に大きく左右される。

Googleはapp-ads.txtを導入しているが、Appleはそれに従う意思をまだ表明していない。AppleのApp StoreがGoogleに次ぐ業界第2位のアプリストアであることを考えると、現状app-ads.txtでカバーされていないモバイル広告インベントリーがたくさんあることを意味する。「厄介なのはAppleだ。彼らはITP2で、プライバシー保護やアンチトラッキングで現実的な姿勢を取りはじめている。つまり、app-ads.txtへの参加にまだ同意していないのも不思議ではない」と、エッセンス（Essence）のメディアアクティベーション担当シニアバイスプレジデント、ギラ・ウィレンスキー氏はいう。

さらに、すでにモバイルアドネットワークやプレミアムではないプログラマティックソースを避けているバイヤーには、app-ads.txtはほとんど意味がないかもしれない。エッセンスではapp-ads.txtの結果としてモバイル広告支出の戦略的増加はないと考えているが、ウィレンスキー氏は「可能な限りクリーンな方法でインベントリーを買っているという信任投票だ」と指摘した。

マーケターは消極的

一方、app-ads.txtは、バイヤーが実際にそれを使うなら、役に立つがより多くの支出につながりうる。以前のDIGIDAYリサーチでは、キャンペーンのリーチが制限され、さらにインベントリーのコストが上がることへの懸念を理由に、マーケターはメディアバイイングにおけるads.txtファイルの採用に消極的であることがわかっている。

にもかかわらず、モバイル広告に流れ込む予算は、app-ads.txtが導入されてもされなくても増加するだろう。イーマーケターの予測によると、2018年にTV広告を上回ったモバイル広告支出は2020年までに他のメディア支出をすべて合わせた額より大きくなるとされている。だが、買い手と売り手、プラットフォームによるapp-ads.txtの導入と普及は、このシフトを加速する助けになる可能性がある。

Mark Weiss（原文 / 訳：ガリレオ）