[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ほとんどのオンラインパブリッシャーにとって、広告収益の獲得はますます難しくなってきている。このため、アドテクベンダーの数を積極的に削減することで、プログラマティック広告から得られる利益をあの手この手で最大化しようという彼らの姿勢は、ますます鮮明になってきている。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ほとんどのオンラインパブリッシャーにとって、広告収益の獲得はますます難しくなってきている。プラットフォームが広告主の予算のかなりの割合を吸い上げ、さらに何層もの中間業者が手数料を徴収したあと、ようやく残りがパブリッシャーの取り分になるからだ。このため、プログラマティック広告から得られる利益をあの手この手で最大化しようという彼らの姿勢は、ますます鮮明になってきている。
パブリッシャーが選ぶ手段のひとつは、彼らが提携するアドテクベンダーの数を積極的に削減することだ。
今年2月、米DIGIDAYが自社のテックスタックに精通するパブリッシャー幹部132人を対象に行った調査では、過去12カ月以内に提携する広告関連ベンダーの数を減らしたという回答が40%にのぼった。さらに、回答者の44%は、今年中にアドテクパートナーの総数を削減するつもりだとした。
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「ベンダーに関しては、明らかに増やすより減らす傾向の方が顕著だ」と、カフェメディア(Cafe Media)で戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるポール・バニスター氏はいう。「たいていの場合、パートナーを増やしても価値の増加はごくわずかだ。彼らは自己利益のためだけに存在し、パブリッシャーに恩恵をもたらすことはない」。
インハウス操業への転換
ベンダーを削減する動機のひとつとして、パブリッシャーの広告ビジネスが成熟し、より安価なインハウス操業への転換が進んでいることがあげられる。たとえばランカー(Ranker)は、過去2年間、外部ベンダーへの依存度を下げる取り組みを進めてきた。同社の最高技術責任者(CTO)であるプレメシュ・プライル氏は、「広告インフラの所有率を高めることで、テックベンダーが提供しているものよりも費用対効果の高い数々のソリューションを生み出すことができた」と話す。
ブランドセーフティや広告詐欺検出のためのツールを開発するのは、パブリッシャーには難しいだろう。しかし、広告配信やヘッダー入札といった機能に関しては、ベンダーを排除するのが比較的容易だ。
プライル氏は、社内にアドテク担当部署を創設し、ベンダーを切る自身の取り組みは、決して珍しくないと考えている。背景にあるのは、欧州での一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)施行やads.txtの導入といった単発のできごとではなく、むしろ各パブリッシャーが独立に、徐々にアドテクに熟達していった結果、自然な流れとしてベンダーを削減するに至ったというのが、プライル氏の考えだ。「ここ1年ほどで、広告商品の担当者として開発者を採用するパブリッシャーが増えた。大手パブリッシャーがアドテクに参入したら、まず考えるのは、広告商品の独立性を保てているかどうかだ」。
先述の米DIGIDAYの調査では、パブリッシャーの55%が、2019年はアドテク関連予算を増やすと回答している。
見極め能力と技術の進歩
パブリッシャーがプログラマティック広告をより深く理解するようになったことで、真の付加価値を生み出すサードパーティを見極める能力も向上した。パブリッシャーは、何が効果的かを正確に把握できるようになり、パートナーの数を絞りはじめた。テクノロジーをまとめて壁に投げつけ、どれがくっつくかを試すようなやり方から脱皮したのだ。
メディアの合併も合理化の原動力のひとつだ。「買収されたあと、当然ながら会社間のテクノロジーの重複に目が向けられた。昨年以降、我々はこれまで利用してきたベンダーの統合もしくは廃止を進めているが、これには時間がかかる」と、あるパブリッシャー幹部は匿名を条件に語った。デジタルメディアの合併が進むなか、市場が縮小し、ベンダーはますます冷遇されるようになるかもしれない。
さらに、テクノロジーの進歩によって、提携パートナーの削減が現実的な選択肢となった。フューチャー(Future Plc.)でプログラマティック売上担当責任者を務める、マーク・ロペラート氏は、ヘッダー入札の導入に伴い多数のデマンドパートナーと組んだあと、「我々は提携するサーバーサイドプラットフォーム(以下、SSP)を絞った。一時は40社以上だったが、現在は30社あまりになっている」と語る。彼によれば、フューチャーが契約を打ち切ったSSPのほとんどは小規模で、入札することも広告インプレッションを獲得することもほとんどなかったという。今後もしフューチャーが新たなSSPを迎え入れるとすれば、「ユニークな需要ソースをもっていることが条件だ。そうでないなら、我々自身で代わりが務まる」と、ロペラート氏はいう。パスマティックス(Pathmatics)の調査によれば、2016年から2018年のあいだに、パブリッシャーのSSP利用は26%減少した。
ベンダーが考えるべきこと
提携アドテクベンダーの数を減らすことは、パブリッシャーにとって明らかにメリットがある。パブリッシャーサイトや広告の読み込みが速くなり、サイト利用者体験は向上し、売上はより予測可能になる。
パブリッシャーが広告製品の内製化や他社との経営統合を進めている現状を見るかぎり、余剰ベンダーによるプログラマティック広告オファーの削減は今後も続きそうだ。ベンダーは、自社の生き残りのためにも、広告主に実際の価値を提供することを考えるべきだろう。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)