メディアバイヤーたちは、ブランドセーフティへの懸念から、民衆の報復を恐れて、ニュース関連コンテンツを避けざるを得なくなっている。米DIGIDAYの調査では、回答者の43%が、ニュースの横に広告を出すことは避けると明言しており、以前と比べてニュースコンテンツを避けるようになったという回答者も半数にのぼった。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
メディアバイヤーたちは、ブランドセーフティへの懸念から、民衆の報復を恐れて、ニュース関連コンテンツを避けざるを得なくなっている。
米DIGIDAYが2018年11月に400人のメディアバイヤーを対象に行った調査では、回答者の43%が、ニュースの横に広告を出すことは避けると明言しており、以前と比べてニュースコンテンツを避けるようになったという回答者も半数にのぼった。
ドナルド・トランプ大統領もまた、ブランドにとって安全でないことで評判で、メディアバイヤーが距離を置くもののリストに載っている。DIGIDAYが調査したメディアバイヤーの10人に6人が、トランプ大統領関連のコンテンツを避けると答えた。
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企業によって異なる基準
メディアバイヤーがニュースコンテンツを避けるかどうかの判断は、実行するキャンペーンやアプローチのタイプによって変わってくる。たとえば、パフォーマンスかオーディエンスに焦点を絞っている広告主は、リーチやブランディングを優先する広告主と比べて、広告の表示位置をあまり気にしないかもしれない。
イエローハンマー・メディアグループ(YellowHammer Media Group)のサム・アップルバウム氏は次のように話す。「オーディエンスからの視聴のエンゲージが高く、パフォーマンスに本当に大きな変化をもたらしうるという理由で、同意しないコンテンツに広告を掲載してしまうブランドがある。リーチや認知度向上を考えているなら、ニュースではない別の場所やチャンネルからそれを得ることができる」。
DTC(Direct to Customer:ネット直販)サービスを提供している企業のように、あからさまにニュースパブリッシャーを避けないところもある。匿名希望のあるメディアバイヤーはこう語る。「DTCブランドの多くは結果をベースにしたマーケターだ。彼らには道徳観があるが、広告を出すかどうかの判断は、広告を出す環境よりも、それが理にかなっていると証明する明確なデータがあるかどうかにより重きをおいてなされる」。このメディアバイヤーはさらに、パフォーマンスベースのマーケターにとってさえ、ポルノやテロリズム、マルウェアの隣に広告を出さないなど、超えてはいけない一線があると付け加えた。
リスク回避の方法と課題
ニュースサイトにとどまることを選ぶ場合、バイヤーたちは、それに付随するリスクを理解しなければならない。「消費者の大多数は論理的に、ブランドとパブリッシャーのあいだに直接的関係を想定する」と、アップルバウム氏はいう。デジタル広告の不透明な性質を考えると、『それがプログラムによって提供されていて、広告に載っている企業がパブリッシャーが制作したコンテンツを直接支持していると、読者は思わない』と考えることは非現実的だ。
メディアバイヤーにとって幸運なのは、ニュースサイトに広告を掲載する際にブランドセーフティの基準が満たされていることを保証するのに役立つ、自在に利用できるさまざまなツール群があることだ。360iの統合メディア担当シニアバイスプレジデントであるイラナ・キャッセ氏は、360iではプロプライエタリ技術のほかにホワイトリスト、ブラックリスト、両方を採用して、好ましくないコンテンツを避けるのに役立てていると述べる。キャッセ氏はまた、ブランドセーフティにまつわるリスクに対するセーフガードとして、360i独自のターゲティング機能を声高に宣伝もした。「我々にはデータドリブンなエージェンシーとして受け継いできたものがあるので、我々はターゲティング能力を活用して、ブランドセーフティの基準についてクライアントが快適に感じられるようにできる」。
だが、ブラックリストに欠点がないとは限らないし、広告主とエージェンシーとのコミュニケーションが問題になることもあれば、ウェブサイトがドメイン名を変えることだってできる。パブリッシャーがブランドセーフなターゲティングを行えるように、キーワードターゲティングサービスや、ほかのソリューションを提供する家内工業のベンダーもいる。
疑心暗鬼のパブリッシャー
その記事がブランドにとって安全かどうかを決めるうえで、パブリッシャーよりコンテンツそのもののほうが重要な場合もある。エッセンス(Essence)でメディア活性化担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるオスカー・ガルザ氏は、「玩具会社のためにキャンペーンを行おうとしていているとき、玩具で窒息した子どものストーリーが掲載されていたら、たとえ『玩具』という言葉は必ずしもブラックリストに載らないとしても、それは我々のクライアントに相応しい場所ではないだろう」と述べる。
ガルザ氏によると、CNNやFOXニュース(Fox News)のような主流派サイトであろうと、ブライトバート(Breitbart)のように思想的に偏ったサイトであろうと、クライアントがニュースコンテンツを避けると決めたなら、その選択がメディアプランの背後にある戦略に影響することはないという。「インプレッションを左右する要素は世の中にたくさんあり、ニュースが占める割合はごくわずかだ」と、同氏はいう。
一方、パブリッシャーたちはメディアバイヤーが自分たちを迂回していると痛感するようになっている。11月にDIGIDAYが調査したパブリッシング幹部244人の50%は、メディアバイヤーは意図的にニュース関連コンテンツを避けていると思うと答えている。Vice Mediaは先頃、社会的に重要なジャーナリズムで利益を上げることが困難になるという理由で、ブラックリストを再考するようメディアバイヤーに促した。
「大切なのは対話だ」
パブリッシャーはさらに、メディアバイヤーが予算を削減していることを知っていると、アップルバウム氏はいう。「直接関わって、それがなくなれば、誰の目にも明らかだ。取引用のIDが作られながら一度も取引が行われなければ、それもすぐわかる。ほとんどすべてのサプライサイドプラットフォームがパブリッシャーにブランドドメインのレポートを提供し、事情が変わったときに教えられるよう、誰が自分のところで広告を出したがわかるようにしている」。
ガルザ氏は、バイヤーの支出が一定額減少したら、パブリッシャーは頻繁に連絡してくるようになると話す。「彼らに対してどれだけ使っているかによって、彼らはアドサーバーのなかまで入り込み、公表されたアドバイヤーを見ることができる。1カ月の支出が10万ドルから5万ドルまで減少したら、電話がかかってくるだろう」。
パブリッシャーにとってニュースがすべて悪いわけではない。サイト内にメディアバイヤーがターゲットにできる安全な部分を作るためのコンテクスチュアルツールの導入など、ニュースサイト側でできる変更はいくつかある。「大切なのはパブリッシャーとの対話だ」とガルザ氏。「立ち返って、正しい保護を設定するなら、我々は彼らをリストに戻すだろう」。
Mark Weiss(原文 / 訳:ガリレオ)