ほっこり系のトピックを提供するバイラルサイト「リトル・シングス(LittleThings)」。Facebookの波に乗って膨大なオーディエンスを集め、2016年には5000万ドル(約55億円)を荒稼ぎすると見られるなど、利益率の高いビジネスに成長している。
「我々が自社で制作しているようなコンテンツ、つまり夜のニュース番組とは大きく異なる心地良いストーリーに注力していると、オーディエンスが一定の勢いをもたらしてくれる」と、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるジョー・スペイサー氏は、米DIGIDAYの今週のポッドキャストで述べている。「ISISによる処刑や強盗事件や飛行機事故の話をシェアしてもらえる可能性は非常に低い。だが読者は、心に響くストーリーを見て何かを感じれば、そのストーリーをシェアしたくなるのだ」。
一方、ディストリビューション(記事の拡散)に関しては、スペイサー氏はあっさりとこう言った。「我々にはFacebookがすべてだ」。
2016年のデジタルパブリッシングは、驚くべき時代に入っている。もともとペットフードの通販サイトだったWebメディアが、この3月に5100万人のビジターを集めるパブリッシャーになったことを、活版印刷技術の発明者グーテンベルグが知ったらどのように思うだろうか? コムスコア(comScore)の発表によれば、わずか2年半で同サイトの動画は、月間2億8500万ビューを獲得するまでになったという。
これはバイラルサイト「リトル・シングス(LittleThings)」の話だ。ほっこり系のトピックを提供するこのサイト。Facebookの波に乗って膨大なオーディエンスを集め、2016年には5000万ドル(約55億円)を荒稼ぎすると見られるなど、利益率の高いビジネスに成長した。
「リトル・シングス」によれば、「タイム(TIME)」「フォーチュン(Fortune)」「フード&ワイン(Food & Wine)」などの「タイム」ブランド、および「ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)」よりも多くのオーディエンスを抱えているという。同社はそのために、迷子の子犬が見つかった話や米軍の家族が再会を果たす話など、ハートウォーミングなコンテンツを制作している。もちろんフードポルノ(レシピ動画)もだ。そして、トラフィックの4分の3はFacebookからのものだと同社は述べている。
Advertisement
「我々が自社で制作しているようなコンテンツ、つまり夜のニュース番組とは大きく異なる心地良いストーリーに注力していると、オーディエンスが一定の勢いをもたらしてくれる」と、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるジョー・スペイサー氏は、米DIGIDAYの今週のポッドキャストで述べている。「ISISによる処刑や強盗事件や飛行機事故の話をシェアしてもらえる可能性は非常に低い。だが読者は、心に響くストーリーを見て何かを感じれば、そのストーリーをシェアしたくなるのだ」。
一方、ディストリビューション(記事の拡散)に関しては、スペイサー氏はあっさりとこう言った。「我々にはFacebookがすべてだ」。
Facebookに左右される両者の関係
「リトル・シングス」のトラフィックは、そのほとんどがFacebook経由のものだ。当然ながら、これには良い面と悪い面がある。「リトル・シングス」が、いまあるのはFacebookの隆盛のおかげだとスペイサー氏も率直に認めた。これは注目に値する話だが、リスクも存在する。アルゴリズムが変更されれば、「リトル・シングス」のオーディエンスの大半が失われる可能性があるからだ。だが、スペイサー氏はそのリスクを取ることを厭わない。
スペイサー氏は次のように述べている。「そのような変化が起こるとは、私には考えられない。我々はこのエコシステムに真の価値をもたらしているからだ。基準となるのは、私が何を考えているか、あるいはFacebookが何を考えているかではない。ユーザーが何を考えているかだ。彼らはマウスや指で評価を送ってくれている。コンテンツが気に入れば、『いいね』をクリックしたりコメントを残したりする。エンゲージしてくれているのはユーザーなのだ。Facebookは、人々がコンテンツをインタラクティブに利用しながら時間を過ごしていることを確認するため、サイトの滞在時間に注目しているのだ」。
「アップワージー(Upworthy)」の二の舞にはならない
「アップワージー」が史上もっとも早く成長を遂げているパブリッシャーだといわれていたのは、それほど前のことではない。だが、タイトルと中身のギャップが大きい「アップワージー」の「釣り見出し」が、Facebookのアルゴリズム変更によって不利な扱いを受け、急速に勢いを失った。
しかし、「リトル・シングス」が同じ運命に陥ることはないとスペイサー氏は言う。その理由のひとつとして同氏が挙げたのは、アグリゲーション(お粗末なキュレーション)ではなく、オリジナルのコンテンツの作成に注力している点だ。現在「リトル・シングス」ではオリジナルコンテンツが65%を占めており、2016年末までに80%以上に増やしたい考えだという。
「Facebookは、おびただしい数のパブリッシャーが、まったく同じYouTube動画を配信していることに気づいた」と、スペイサー氏は話す。「このことがニュースフィードで問題となっていた。だが、いまでは、コンテンツを最初に配信したパブリッシャーが、その功績を独り占めできるようになっている。才能がある人、オリジナルの動画、イラストやレシピなどに、たくさんのお金をつぎ込んだパブリッシャーが、非常に高い成果を上げているのだ。我々のトラフィックも大きく上昇している」。
Facebookのアルゴリズムに従う必要がある
多くのパブリッシャーは、自社の戦略がFacebookの優先順位に左右されるという現実に目をつむっている。Facebookのフィードに掲載される動画が増えてきたのと、ときを同じくしてパブリッシャーが先を争って動画チームを編成しているのは、偶然の一致ではない。そのことは、Facebookの「ライブ動画」に殺到する現象を見ればわかる。「リトル・シングス」はFacebookが求めているものにフォーカスすることを厭わない。Facebookが「インスタント記事」を利用したコンテンツ配信を望むなら、彼らはそうする。「ライブ動画」を望めば、やはりそうするだけだ。
スペイサー氏は言う。「Facebookのエコシステムのなかで常に方向性を合わせている限り、問題はない。雑誌や新聞など高いコストがかかる巨大組織を作り上げたレガシーブランドのほうが、この状況に恐ろしさを感じているはずだ。分散型モデルというのは面白い。我々はコンテンツを作り、Snapchat(スナップチャット)、Pinterest(ピンタレスト)、インスタグラム、Vine(ヴァイン)、Facebookに合わせてフォーマットを調整できる。より多くのオーディエンスにリーチするための取り組みを、はるかに柔軟に行えるのだ」。
「リトル・シングス」はeコマース企業から生まれた
「リトル・シングス」は、パブリッシャーとしては異色の沿革を持つ。2010年、スペイサー氏はペットフードの販売を手がける「ペットフロー(PetFlow)」という名のeコマースサイトを運営していた。ほかのeコマース企業と同じく、「ペットフロー」は顧客の獲得に日夜励んでおり、コンテンツを作成してFacebook経由で新規を見つけることを非常に得意としていた。だが、eコマースは利幅が小さいことから、スペイサー氏はその能力をFacebookのトラフィックの獲得に利用して、メディア事業を進める路線に転換したのだ。
スペイサー氏は、「我々は、その能力を『ペットフロー』の販売拡大のためだけでなく、広告の分野に利用できる可能性があることに気づいた。その結果、はるかに大きな利幅を得ることができた」と語った。
すべての利益をプログラマティック広告から得ている
「リトル・シングス」のスタッフは90名。プログラマティック広告がパブリッシャーに利益をもたらすのかという点について、不安視する声は多い。だが、「リトル・シングス」にそのような不安はない。同社はプログラマティックを全面的に採用し、ようやく少数の営業担当者を雇えるまでになっている。同社はヘッダー入札の強力な支持者だ。
スペイサー氏は、「ほとんどのパブリッシャーは、プログラマティックやヘッダー入札を適切に活用して、質の高い高額のCPMに至る方法をわかっていない」と述べたうえで、「ヘッダー入札は実に大きな変革をもたらしている」と語っている。
Brian Morrissey(原文 / 訳:ガリレオ)