「 ストーリーテリング 」を加速させる、5つのポイント:DIGIDAY BRAND LEADERS 2018を終えて

ストーリーテリングの必要性が、いよいよ高まっていることが実感できた。

DIGIDAY[日本版]が主催するイベント、DIGIDAY BRAND LEADERS(DBL)が9月11日・12日に、ウェスティン都ホテル京都で開催された。本イベントは、厳選されたブランドとパブリッシャー、そしてテクニカルパートナーが集い、課題を議論・共有しあうというもの。昨年の第1回に引き続き、第2回となる今回も総計100名以上が参加した。

デジタルシフトが進み、情報が飽和するなか、ブランドたちはいま、あらためて自らが何者なのか、明確化することが求められている。また、先日ニューバランスの鈴木健氏が寄稿で語ってくれたように、一人ひとりのユーザーが紡ぐ、それぞれのストーリーに対して、どのように寄り添うべきかも、ブランドたちは考える必要が出てきた。そこで、今回のDBLにおけるテーマは「ストーリーテリング」としている。

配車アプリ「全国タクシー」をはじめとするデジタル戦略で、タクシー業界をアップデートすると語ったJapanTaxiのCMO、金高恩氏のセッション。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」で、企業のメッセージをストーリー仕立てで伝える「ブランデッドムービー」部門を立ち上げた別所哲也氏のセッションなど、総計20におよぶセッションは、それぞれストーリーテリングに対する示唆に富み、大いに盛り上がった。

毎回、DIGIDAY[日本版]が主催するイベントでは、米DIGIDAYのイベントスタイルを踏襲し、編集長である私・長田が、ラップアップセッション「Wrap Up “5 things we’ve learned”(まとめ:私たちが学んだ5つのこと)」を務めている。本記事では、そこで語った内容をあらためて、テキストで共有しよう。本イベントで見えてきた、ストーリーテリングを加速させる5つのポイントは、以下のとおりだ。

1.まずは、語るべきブランドの主体を明確化しなくてはならない

ライオンの柳田洋顕氏のセッションでは、口腔ケア商品であるNONIO(ノニオ)がミレニアル世代に支持された理由を語ってくれた。これまで中高年だけがターゲットだったこのカテゴリーにおいて、あえて「ファクト」と「体験価値」の施策を2本柱でまわす統合型コミュニケーションを実施したことが、功を奏したという。もはや機能推しだけでは、商品は売れない。なぜ、それが必要なのか、どうしてこの商品が生み出されたのか、しっかりとその背景を物語る必要がある。

2.そのうえで、ユーザーとしっかり向き合わなくてはならない

BtoB通販企業であるアスクルは、LOHACOではじめて個人向け通販サービスを開始した。EC需要が高まるなか、差別化を図るため、同社が選んだ戦略が、「生活者起点のデザイン商品」だ。アスクルCMOの木村美代子氏は自身のセッションで、これまでは小売店の棚で目立つことを念頭に作られていた消費財商品を、生活空間に置いておきたくなる「暮らしになじむデザイン」にすることで、売上を大きく伸ばしていると語る。メーカーの理論を押し付けるのではなく、ユーザーニーズを汲み取ることで支持を得たこの事例は、今後のストーリーテリングのあり方に一石を投じているといえるだろう。

3.しかしながら、「手段」を「目的」としてはいけない

色恋沙汰になぞらえて、モテない男子は「ストーリーを考慮しないアプローチ」を繰り返して失敗していると、プロフェッショナルマーケターとして活動する元ドミノピザCMO、富永朋信氏はセッションで語った。「年収」「自家用車」「住まい」という「手段」で口説こうとしても、恋愛の「目的」はそこにはない。良いストーリーとは、相手を知ること、自分ごとにすることは、当然のことながら、意外性を駆使し、胸を打つようにしなくてはいけないという。デジタル化によって、さまざまな便利なツールが登場している。だが、なぜそれを利用するのか、必然性を自らに問いかけることが、マーケターには求められているのだ。

4.そのために、適切なパートナーを見極めなくてはならない

ストーリーテリングを成功させるには、「誰がそれを語るのか」が重要だという意見も多くの場面で散見できた。それを象徴するのが、@SHARP_JPの「中の人」である山本隆博氏のセッションだろう。「ネットは誰が言うかがすべて、ネットは誰から伝わるかがすべて」と表現する山本氏は、「シャープさん」と呼ばれる@SHARP_JPと企業体であるシャープはノットイコール(≠)と言い切る。伝わらない企業の言葉を、シャープさんが生活者の友だちとして変換することで、ストーリーテリングが成り立つのだ。

5.そして、常に答えはなく、戦い続けなくてはいけない

DBLでは、参加者全員によるワーキンググループディスカッションも実施される。今回も「ブランドはストーリーテリングをどう実行すべきか?」というテーマで議論が繰り広げられた。そのなかでは、やはり業種・業態が違うなかでは、一定の方程式を導き出すことは難しいという声が聞こえたが、それぞれのチームが独自の結論を導き出していた。時代が大きく揺れ動くなか、かつての成功体験もどんどん古くなっていく。新しいことにトライするには、社内外に抵抗勢力も出てくるだろうが、それに屈せず、信じる道を突き進むしかないのだろう。

この記事で紹介した以外にも、さまざまなセッションでストーリーテリングに対する新しい気づきがあった。それについては、追って個別に記事で紹介しいく予定だ。

DIGIDAY[日本版]では、このようなイベントを今後も続けていく。また、有料会員向けサービス「DIGIDAY+」でも、小規模なクローズドイベントをさらに数多く実施する予定だ。

Written by 長田真