「価値があるのか、存続しうるのか、実現できるのか」: コンデナスト「ヴォーグ・ビジネス」発刊の裏側

ヴォーグ(Vogue)とGQのパブリッシャーであるコンデナスト・インターナショナル(Conde Nast International)は、広告依存を減らし、収益の多様化を進めるため、世界展開を視野にいれた非広告商品を制作する5段階の枠組みを作り上げた。

同社はこの枠組みを用い、6カ月間の計画期間を経て、今年1月に同社としては初のB2B商品である「ヴォーグ・ビジネス(Vogue Business)」をローンチ。ビジネス開発ディレクターのシアラ・バーン氏は、3月5日から7日にかけてイタリアのミラノで開催されたDIGIDAY PUBLISHING SUMMIT EUROPEで、今後も雇用関連のサービスや簡潔な情報レポートなど、さらに多くのB2B商品を作っていくと語っている。

「ヴォーグ・ビジネスで最初に行ったことのひとつに、他社におけるB2B経験が豊富な社員を集めて独立したチームを作ることが挙げられる。我が社の事業と収益の大半はB2Cによるもので、B2Bブランドの立ち上げにはリスクを伴うからだ」とバーン氏は語り、次のように述べている。「ヴォーグ・ビジネスはサブスクリプションモデルを採用していない。アメリカではサブスクリプションモデルが盛んだが、ほかの市場でサブスクリプションのベストプラクティスを習得することもできるだろう」。

コンデナスト・インターナショナル(Condé Nast International)は、紙媒体の出版で100年以上の歴史を持つ。新しい商品開発の実行と組織づくりは容易ではない。バーン氏のチームは5段階の枠組みにおいて最大で5つのプロジェクトを抱えていたこともあったが、そのすべてが日の目を見るわけではない。だが、広告以外や専門家から持続可能な収益をあげる方法を見つけることは、あらゆるパブリッシャーにとって重要性を増しつつあることに変わりはない。

5段階の枠組みの詳細

バーン氏は「私のチームは広告に依存しない事業を立ち上げる。ヴォーグとしての事業が主だが、それだけではない。そして、ヴォーグが展開する24の市場にまで拡大することも可能だ」と明かし、次のように述べた。「ヴォーグの市場ひとつだけでは実現できないようなチャンスも存在する。経済規模が足りなかったり、単一の市場では十分な利益をあげられなかったりする場合があるためだ」。

同社の枠組みにおける5段階は次のようになっている。まず、カスタマーが抱える問題の分析と把握を行い、次に構想を定義し、同社がそれを実現する必要があるかを検討する。3段階目として商品のマッピングと反復を実施し、4段階目で断片的な運用から実質的な商品へと迅速に移行する。そして、最後に生み出した商品の展開規模を拡大する。この5段階は、いずれも活動、ツール、実験、話し合いに関する要素を備えており、事実上の管理組織として機能する。

バーン氏は同社の枠組みについて次のように語っている。「この枠組みによって、より広範な事業が可能になる。また投資をつのる際にもこの枠組みを紹介でき、投資家もこうした決定について理解を示してくれる。つまりインキュベーションにおいて役立つのだ」。

B2Bの戦略とチャンス

ヴォーグにはB2Bに関する明確な戦略とチャンスがあった。カスタマー企業の問題分析と把握を行う段階で、同社はファッション業界の経営者らに現在直面している最大の問題と、そしてどうすればよりうまく会社が機能するかを訊ねた。バーン氏によると、構想段階でとりわけためになったのは、経営者がファッション業界でテクノロジーが果たしうる役割に関心を寄せていること、そしてクライアントは世界展開をしていながらもローカルな文化的差異に気を配る必要があり、文化的なトレンドが事業にどのように影響を及ぼすか知る必要がある点だ。

ヴォーグ・ビジネスは立ち上げにおける第2段階で、全体像に関する100の構想をふるい落とし、潜在顧客のペルソナを4つ作り出し、オーディエンスが何を求めているかを見つけ出すため、実験的にソーシャルメディアへさまざまな題材やクリエイティブを投稿した。

4名で構成される同社の小規模なチームを率いるのは、現在ヴォーグ・ビジネスの編集長を務めているローレン・インドビック氏だ。同氏はヴォーグ・ビジネスのインキュベーションにおける第3段階で次のような疑問を投げかけたという。「ヴォーグ・ビジネスには価値があるのか、存続しうるのか、実現できるのか。利益はあげられるのか。そしておそらく最大のリスクとして、事業と収益の大半がB2CであるコンデナストでB2Bを立ち上げることが、ほかの事業に影響をおよぼすかどうかだ」。

読者の獲得と差別化

ヴォーグ・ビジネスはさまざまな話題や地域を扱っており、もっとも優れた伝達方法はeメールのニュースレターだった。同社は当初、ニュースレターを「パースペクティブ(Perspective)」と名付けた。コンデナスト・インターナショナルやヴォーグと関連付けられるリスクを低減し、より自由な裁量を可能にするためだ。チームはニュースレターを日刊にするか週刊にするかテストした結果、週に2回の配信に落ち着いた。アメリカをはじめとするいくつかの市場はパーソナライゼーションを好意的に受け止めたのに対し、ロシアなどの市場ではあまり好評を得られなかった。

ランウェイにかかるコストについてのインフォグラフィックが読者から好評を博したのを受けて、チームはデザイナーを雇い、データの可視化を重視する決定を下した。バーン氏によると、読者は記事にもとづいてマーケティング予算を調整したという。

バーン氏は次のように語った。「国際的ファッション企業のなかで熱心なオーディエンスを積極的に増やし、そして十分に差別化された商品を作り出すこと。我々が考えていたのはこのふたつだ。そしてリスクについて十分に把握している必要があった。ヴォーグが消費者向けのタイトルと捉えられているなか、業界向けのタイトルとしてヴォーグ・ビジネスを計画し、発行することは固有のリスクをはらんでいる」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)