テレグラフ(The Telegraph)はこの6カ月間、測定機能の強化に取り組んできた。不安定な市場のなか、限られた予算でこの取り組みを続けてきたのは同サイトの広告の有効性を証明するためだ。それが功を奏し、現在は新たなクライアントや既存のクライアントからの広告が増加、キャンペーンの規模も拡大しているという。
テレグラフ(The Telegraph)はこの6カ月間、測定機能の強化に取り組んできた。不安定な市場のなか、限られた予算でこの取り組みを続けてきたのは同サイトの広告の有効性を証明するためだ。それが功を奏し、現在は新たなクライアントや既存のクライアントからの広告が増加、キャンペーンの規模も拡大しているという。
テレグラフが昨年11月に導入した指標「メトリクス・ザット・マター(Metrics that Matter)」は、単なるクリックやインプレッションにとどまらず、広告の本当の成功を測定しようとする試みとなっている。同指標がまず注目するのは滞留時間やインタラクション、視聴時間など、ユーザーの広告自体への注目度を評価する11項目だ。そして同社は、こういった注目度を表す指標と、認知度や購入検討、そして実際の購入といったブランドリフトの指標との結びつきに関する情報を提供している。さらに現在同社はIT企業のインフォサム(Infosum)と提携し、こういったブランディングと広告主の業務上の目標との関連性を表す分析データの提供を目指している。具体額は不明だが、メトリクス・ザット・マターによりキャンペーン価格は前年比で平均24%上昇しているようだ。
この半年はコロナ禍の影響で広告業界に混乱が続くなか、「マーケティングの費用対効果をはっきりさせる」という需要はブランド各社の間で大きかった。一般的なD2Cブランドは、たとえば1万ドル(約100万円)の腕時計などの高額商品を販売するブランドに比べれば、比較的広告を出しやすい状況にあった。
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3月から6月にかけて実施された直接型やコンテンツ主導型の25の広告キャンペーンをテレグラフが分析したところ、注目度の指標がもっとも高かった上位5キャンペーンはいずれも、購入を促す指標で高いスコアを獲得していることが明らかになった。
テレグラフのキャンペーンイノベーション責任者アンソニー・クロッカー氏は「違いは明確だった」と語る。同氏は具体的な収益額については明かしていないものの、「これまで各社とも、ブランドの指標でもっとも重要なのは注目度であり、事業目標に結びつくと話してきたが、今回の分析でそれが実際に正しいことが証明できた」と述べている。
ロックダウン中の広告は有効だった
こういった取り組みはテレグラフだけではない。現在パブリッシャー30社以上と提携するアナリティクス企業のブランド・メトリクス(Brand Metrics)は、ロックダウンのなかでキャンペーンと収益の具体的な関連性を知りたがる企業が増えたことで、クライアント数が30%増加したという。ブランド・メトリクスは4000以上のキャンペーンでブランドの平均認知度を調べたところ、6月には3月よりも認知度が10%上昇したことを発見している(その後、3月の水準に戻ったとのことだ)。これは、市場の競争が少なくなったことでブランドの認知度を上げやすくなったためと考えられる。複数の研究やエコノミストが提言するように、不景気ななかでも広告を出し続けることは、ブランドへの将来的な投資として有効なのだ。
ブランド・メトリクスによれば、5月は3月と比べて購入意欲が27%高まっている。これは数カ月間のロックダウンが続いたためと考えられており、そんななかでブランドの認知度を高めておくことはとりわけ効果的だったと考えられる。
ブランド・メトリクスのアンダース・リトナーCEOは、「広告展開は間違いなくコロナ以前の水準にまで活発化しつつある」と述べている。「そんななか、ロックダウン中でも積極的に広告を展開していたブランドの認知度は高い水準を保っており、優位なポジションにいるのは間違いない」。
明らかになる広告と購入の関連性
テレグラフが測定したブランドリフト関連の4指標(認知度、購入検討、好感、購入)のうち、好感の伸びがもっとも顕著で、3月までの3カ月間と比べ、3月から6月は3倍に増加している。
同社はこれについて、エンゲージメントの増加を要因として挙げている。クロッカー氏は、読者が1日に3回サイトを訪問し、複数の記事を読むようになったと語る。新型コロナウイルスにより、質の高いニュースブランドの価値が改めて見直され、関心を集めるようになった。テレグラフもまた同様だ。コムスコア(Comscore)を始め、複数の企業の調査でも明らかになっている通り、これがパブリッシャーに広告を出すブランドにも良い効果を及ぼしている。
だが調査結果はさておき、エージェンシーがパブリッシャー固有の測定基準を用いる場合のキーワード広告のブロックなど、エージェンシーや広告主がニュースブランドに広告を出す場合における課題もいまだ残されている。
いずれにせよ、インフォサムと提携し、パブリッシャーとクライアントのファーストパーティデータを用いることで、広告と購入の関連性はある程度明らかになる。これにより神経質になっていたマーケターも予算を出しやすくなった。おかげでテレグラフは厳しいここ数カ月を乗り切ることができ、6月には、英国政府による一時帰休の助成金も返済している。
サブスクリプション戦略も後押し
さらに指標を厳格化したことで、サブスクリプション戦略も後押しされたという。テレグラフの調査によると、サブスクリプション加入者は、一般ユーザーよりもブランドの広告を記憶する率が40%高いという。これは加入者は何度もサイトを訪れるためだ。8月にテレグラフのサブスクリプション加入者数は51万2000人、ユーザー登録者数は670万人を達成した。同社は2023年までに登録者数1000万人、加入者数100万人を目指しており、順調に推移しているという。また、これに伴い、同社は6月にブランドコンテンツ部門の社員数を100人近く減らしている。
「3月以前は、さほど真剣に捉えていないマーケターもいたのではないか」と、クロッカー氏は語る。「今やエージェンシーも、我々パブリッシャーたちを厳しく見定めるようになっている。そのなかで広告配信が最適化されていることを証明するためにできることをしていく。読者の注目に関する指標が、長期的に良い効果をもたらすことをより多くの企業に知ってもらいたい」。
[原文:‘Demonstrate how attention metrics drive long-term outcomes’ How The Telegraph proves its ads work]
LUCINDA SOUTHERN(翻訳:SI Japan、編集:長田真)