CNNは、放送で使用する写真や動画を市民や読者から募る、いわゆる「市民ジャーナリズム」アプリ「iReport」の現行バージョンを終了させる。これに代わり、同アプリを新プロダクト同様にバージョンアップさせ、インスタグラムやFacebook、Twitterのユーザーたちから#CNNiReportのハッシュタグを介して、ニュースを配信してもらう計画を立ち上げた。
CNNのソーシャルメディア部長であるサマンサ・バリー氏によると、ニュースメディアがニュースソースをソーシャルプラットフォーム上で見つけるようになったという事実が、「iReport」見直しの背景にあるという。「現行の『iReport』がローンチしたのは10年前。そのとき人々は、情報を発信する場所をほとんどもっていなかった」。
さらに「それに比べて現在は、多くの情報の発信方法がある。だから、いかによりよいストーリーを獲得するか、いかにすでにあるコンテンツに付加価値をつけるか、さらなる戦略を立てる必要ができた」と、同氏は続けた。
FacebookやTwitterなど、巨大プラットフォームによるメディアの独占は、従来のパブリッシャーたちのビジネス手法を強引に変化せざるを得ない状況にしているようだ。これには、ニュースソースを読者に委ねるという行為も含まれる。
変わりゆく「市民ジャーナリズム」
CNNは、放送で使用する写真や動画を市民や読者から募る、いわゆる「市民ジャーナリズム」アプリ「iReport」の現行バージョンを終了させる。これに代わり、同アプリを新プロダクト同様にバージョンアップさせ、インスタグラムやFacebook、Twitterのユーザーたちから#CNNiReportのハッシュタグを介して、ニュースを配信してもらう計画を立ち上げた。
CNNのソーシャルメディア部長であるサマンサ・バリー氏によると、ニュースメディアがニュースソースをソーシャルプラットフォーム上で見つけるようになったという事実が、「iReport」見直しの背景にあるという。「現行の『iReport』がローンチしたのは10年前。そのとき人々は、情報を発信する場所をほとんどもっていなかった」。
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さらに「それに比べて現在は、多くの情報の発信方法がある。だから、いかによりよいストーリーを獲得するか、いかにすでにあるコンテンツに付加価値をつけるか、さらなる戦略を立てる必要ができた」と、同氏は続けた。
CNNはこの新たな手法をもとに、すでに実験的なニュース配信を行っている。2015年5月、ネパール大地震が発生した際、独自のリポートにソーシャルメディアのユーザーから得た写真や動画を補足して放送を行った。
アマチュア主導ゆえに起きた過ち
2006年にローンチした「iReport」は、市民からコンテンツを得て放送するという、大手メディア企業の革新的な試みだったといえる。しかし、この「もともとはオーディエンスであった人たち」にメディアを作らせるという考えは、保守派にとって耐え難いことであり、アマチュアが硬派なニュースを取り扱うことに批判はあった。
「市民ジャーナリズム」には、アマチュア主導ゆえに起きた過ちの過去もある。2008年、とある投稿が一般に公開されるまでに、その情報の真偽が確認されることがなかったのだ。
それは、CNNの独自プラットフォームに投稿された、Appleの共同設立者であるスティーブ・ジョブズ氏が、ひどい心臓発作を起こしたというデマのことである。この騒動は「市民ジャーナリズム」が容易に犯し得る過ちの代表例として、広く認知された。そして、「市民ジャーナリズム」に頼りきっていたメディア企業のリスクも同時に浮き彫りにしている(今回発表された「iReport」の新バージョンでは、情報が一般公開される前にニュースソースの真偽を確認するという)。
「ブランドメディアが誤った情報を配信してしまった場合、たとえそれが不特定多数から集められたソースだったとしても、そのメディアの情報には正確性がないと思われても仕方がない」とアメリカン・プレス・インスティテュートの執行役員、トム・ローゼンスティール氏は話す。同氏は、「それはほんの些細なミスから、だらしのない正確性に欠いたメディアだという烙印を押されかねないのだ」と指摘した。
課題は市民の無関心
しかし、その「市民ジャーナリズム」が直面する本当の課題は、不十分な事実確認ではなく、市民の関心の無さだろう。 調査会社コムスコアのレポートによると、2008年以降、およそ累計150万人に使用されてきた「iReport」。ネパール大地震があった、2015年5月における訪問者数は48万3000人/月だったが、その2年前に120万人/月を突破したことを考えると、激減しているのは明白だ。
それに対し、「新しい取り組みでソーシャルメディアにおける影響力を高めることは、同時にCNNの存在感も高めることになる。現在の『iReport』の低迷とは対照的な動きだろう」と、CNNのデジタル部長であるメレディス・アートレイ氏は話す。同氏は続けて「しかし、CNNはいまも市民にとって重要なメディアであり、新しい『iReport』は、オーディエンスにとって容易に情報発信できる場を提供できることに変わりはない」とコメントした。
CNNの「分散型コンテンツ」戦略
アートレイ氏によると、CNNの「iReport」の改修は、同社の「分散型コンテンツ」戦略のなかで最新の取り組みだ。これにより、ホームページやWebサイトの役割が除々になくなっていくことで、プラットフォームで配信されるための最適なコンテンツ作成に集中することができるようになる。
ソーシャルメディアに多くのフォロワーをもつCNN。その数はFacebookで1900万人、Twitterで2000万人にも上るという。また、CNNはAppleの「News」や「Snapchat(スナップチャット)」のディスカバーチャンネルでもニュース配信を行っている。
アートレイ氏は「我々は単なるニュース消費の目標地点ではなくなった。いまやオーディエンスがいる場所に我々が出向くことが当たり前になる」と、大手メディアにもたらされたソーシャルメディアの影響は多大なようだ。
Ricardo Bilton(原文/訳:BIG ROMAN)
Image by kris krüg(CreativeCommon)