パブリッシャーは広告主のブランデッドコンテンツを成功させるために、しばしばソーシャルメディアでトラフィックを購入する。だがこの手法では、利益に食い込んでしまうことがある。そこで米デジタルメディア企業のVox Mediaは、内製ツールを使って、自社サイト上のブランデッドコンテンツのパフォーマンスを向上させている。
パブリッシャーは広告主のブランデッドコンテンツキャンペーンを成功させるために、しばしばソーシャルメディアでトラフィックを購入する。だがこの手法では、利益に食い込んでしまうことがある。そこで米デジタルメディア企業のVox Mediaは、内製ツールを使って、自社サイト上のブランデッドコンテンツのパフォーマンスを向上させている。
Vox Mediaは1年ほど前、「クリエイティブ・インテリジェンス(Creative Intelligence)」というツールを使って広告のA/Bテストを開始した。このツールは当初、自社のメディアに掲出されるネイティブ広告の制作のみに利用されていたが、いまでは同社名義の広告制作全般に適用されている。
約4倍のビューを獲得
ツールの仕組みはこうだ。Vox Mediaの広告制作プラットフォーム「ヒムナル(Hymnal)」での制作中に、担当者が3種類のヘッドライン、画像、コピーをアップロード。ここから、27種類のバージョンの広告が作成できる。なお、同社のキャンペーンインサイト担当シニアマネージャー、エミリー・スミス氏によると、同社のサイト上にある広告の約20%はヒムナルで作られており、同じ広告のバリエーションを数千種類作ることも珍しくないという。
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そうして作成された複数のクリエイティブは、クリエイティブ・インテリジェンスを使って、複数のオーディエンス層を対象としたテストにかけられる。本番のキャンペーンでは、ターゲット層のエンゲージメントがもっとも高かった広告が使われる。たとえば、赤い背景画像で20代男性のクリック率が高かった場合、ほかの層に紫の背景の広告が配信されるとしても、20代男性の層には赤い背景の広告が表示される。
Vox Mediaによると、クリエイティブ・インテリジェンスを利用するブランデッドコンテンツキャンペーンは、ツールを利用しない同様のキャンペーンに比べて、同社サイトで約4倍のビューを獲得しているという。同社のネイティブ広告では、約90%のクライアントがツールの使用を選択する。
滞在時間が171%増加
ネイティブ広告プラットフォーム企業ポーラー(Polar)のCEO、クナル・グプタ氏は、パブリッシャーの90%以上がブランデッドコンテンツキャンペーンの実施にあたってFacebookでトラフィックを購入していると指摘する。キーウィー(Keywee)によると、パブリッシャー約400社におけるブランデッドコンテンツのトラフィック購入費は、前年比でほぼ倍に増えたという。Vox Mediaは、具体的な金額を明かさなかったが、そうしたトラフィック購入への依存度がA/Bテスト自動化により低下したと語った。
クリエイティブ・インテリジェンスでは、詳細な絞り込みが可能だ。Vox Mediaはオーディエンスデータの活用により、たとえばエンターテインメントブランドのキャンペーンで、音楽関連コンテンツを定期的に消費するオーディエンスのうち、とくにヒップホップファンとほかの層を区別できる。ブランデッドコンテンツのヘッドラインや画像をヒップホップファン向けに変えることで、同じコンテンツにおけるこの層の平均滞在時間が171%増加した。
広告のA/Bテストを手作業で作成し、ヒップホップファンに最適な組み合わせを見つけるには、数カ月がかかるかもしれない。しかしVox Mediaは、プロセスを自動化することで、このキャンペーンを2週間で達成できたと同社の広報担当者は語る。
「我々はA/Bテストだけでなく、AからZまで同時にテストできた」と、スミス氏は語った。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Vox Media