「いま、やるしかない」:カルチャーサイト「デイズド」、科学&テック分野に進出

ファッション、音楽、アートに強いメディアであるデイズド・メディア(Dazed Media)は、科学&テクノロジー分野への進出を決め、手はじめとして、5月第3週から「デイズド(Dazed)」で気候変動を特集しはじめた。同社は2018年9月にもビューティに特化したバーティカルを立ち上げており、その目的もコンテンツの配信自体よりもむしろ、美や美容に関心の高い人々が集うコミュニティの設立としている。

科学&テクノロジー分野の新バーティカルメディア「ア・フューチャー・ワールド(A Future World)」の始動は今年9月だ。だが、それに先立ち、「デイズド」では5月13日から、気候変動に関する活動家、アーティスト、政治家による動画およびテキストコンテンツを30本、順次配信している。

コンテンツには、気鋭の英ラッパー/ミュージシャン、Gaika(ガイカ)氏と英労働党党首ジェレミー・コービン氏が気候変動について対談した動画や、気候変動対策を訴える10代の活動家でノーベル平和賞候補者のグレタ・サンバーグ氏を追ったドキュメンタリー、シンセポップミュージシャン&アーティスト、グライムス氏の手になるSFエッセイなどがある。これらのコンテンツは「デイズド」のサイトのほか、主なソーシャルアカウント上で公開される。詳細は明かしていないが、同社によれば、これらに対するオーディエンスの反応が9月以降のコンテンツに反映されることになる。

人類における最大の問題

先月、自然保護を訴える市民運動エクスティンクション・レベリオンが世界各地で起きたことを受け、気候変動がニュースフィードのトップに踊り出るとともに、多くのニュースパブリッシャーが地球温暖化に関する包括的な記事を無数に発表している。そんななか、「デイズド」はこうした運動の先頭に立つ若者に向けた、ポップカルチャーと気候変動問題とをつなぐコンテンツの必要性を実感したという。

「気候変動は人類が直面している最大の問題であり、世界中のティーンエイジャーが対策強化を訴える動きを牽引している」と、『デイズド』のデジタルエディター、トーマス・ゴートン氏は語る。「そこにはいま、莫大なエネルギーがある。我々が下したこの決断は、単なるオプションのひとつなんかじゃない。とにかく、いま、やるしかなかったんだ」。

5月第3週の特集には、半年ほど前から同社と連携している欧州気候基金も協力する。同じ週にはまた、既存の広告パートナーの1社、ナイキ(Nike)のブランデッドコンテンツも2本、配信される。

コミュニティ形成が狙い

アート、音楽、ファッションに精通する「デイズド」だが、これまでにも科学&テクノロジーに関する話題を取り上げており、いずれも読者から好評を得ている。ゴートン氏いわく、2014年に「デイズド」で最も読まれたのは、サンフランシスコでのGoogle Glass(グーグルグラス)着用者に対する暴行事件を取り上げた記事だった。2018年9月、同誌は 「AIの時代(The age of AI)」と題する特集を1週間に渡って組み、バーチャルインフルエンサー、リル・ミケーラの手によるテキストをはじめ、テクノロジーがアートとカルチャーに与える影響に関するさまざまな記事を掲載した。2017年9月には、同サイトのリニューアルに合わせ、科学&テクノロジー専門のバーティカルも新設している。

新設されるメディア「ア・フューチャー・ワールド」では、コンテンツの配信に留まらず、科学、アート、テクノロジーに関心を寄せる人々が集うコミュニティを形成し、いわば、草の根レベルのシンクタンクを作っていきたいと、ゴートン氏は語る。「情報を発信するプラットフォームというよりもむしろ、編集/出版主導のイベントに近い存在になると思う。これはあくまで第一歩であり、現況を変えるために我々に何ができるのか、企業の努力でどう変えられるのか、どうしたら共有財産を守っていけるのか、これから深く掘り下げていきたい」。

2018年9月、「デイズド」はインスタグラムに「デイズド・ビューティ(Dazed Beauty)」を開設し、現在11万7000人のフォロワーを擁している。上述のとおり、その狙いもまた、知られざる才能をソーシャルで紹介し、彼らをキャンペーンに絡め、コミュニティのさまざまな意見を取り込み、包括的な記事を提供することにある。このバーティカルの目的は、現代社会におけるビューティ/美の概念の探究だ。「そして、誰もがコミュニティに参加できる、それが理想だ」と、デイズド・メディアのソーシャル部門トップ、アフマド・スウェイド氏は語る。「我々が世に出すコンテンツにはすべて、ソーシャルな要素を伴うようにしている」。

「人と対話できる機会を」

同誌のように、オーディエンスをコミュニティとみなすパブリッシャーは増加しており、双方向の関係によりロイヤルティが強化され、オーディエンス/読者がより頻繁かつ長期に渡って戻ってくる、という考えが一般化しつつある。たとえば、「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)」と「デ・コレスポンデント(Der Correspondent)」も、記事の作成にオーディエンスを積極的に活用している。

「[デイズド・ビューティを]もっともっと進化させていきたい」と、スウェイド氏。「DMや記事、ショーケースやテークオーバーを介して、人々と対話を持てる機会をできるだけ多く作っていく。それこそがデイズド・メディアの基盤だ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)