拡張動画はパブリッシャーたちのあいだで、熱い話題となっている。しかし、実際にどう取り組むかについては、まだどこも探っている状況だ。
BuzzFeedの「ジャーナリズム、テクノロジー、アートのためのオープンラボ(Open Lab for Journalism, Technology, and the Arts)」で働く、ベン・クレイマー氏(27)もそんなパブリッシャーのひとりである。研究所の目的は、BuzzFeedによる情報発信の役に立つような新しいツールを開発し、それをオープンソースとして公開することだ。
ドローン動画や360度動画の挑戦を続けるクレイマー氏の典型的な一日を追った。
拡張動画はパブリッシャーたちのあいだで、熱い話題となっている。しかし、実際にどう取り組むかについては、まだどこも探っている状況だ。
BuzzFeedの「ジャーナリズム、テクノロジー、アートのためのオープンラボ(Open Lab for Journalism, Technology, and the Arts)」で働く、ベン・クレイマー氏(27)もそんなパブリッシャーのひとりである。研究所の目的は、BuzzFeedによる情報発信の役に立つような新しいツールを開発し、オープンソースとして公開することだ。
この仕事についてからの1年間、クレイマー氏は360度ビデオを報道に活かす方法について、集中して取り組んできた。特に注力しているのは、ドローンに複数のカメラを装着させて撮影すること。撮影の対象には、大火災の被害にあったカリフォルニアの町、騒がしいドナルド・トランプ反対デモ、そして栄養ドリンク・ソイレント(Soylent)の試飲会の様子などが含まれる。
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クレイマー氏がドローンに興味を抱いたのは、彼がネブラスカ大学リンカーン校でジャーナリズムを勉強していたときにさかのぼるという。彼の教授であるマット・ワイト氏は、ドローンジャーナリズム研究所を開いた人物だった。ストーリーを伝えることとハードウェアを作ること、クレイマー氏が擁するふたつの情熱を合体させたものが、ドローンによるジャーナリズムだった。
拡張動画は一過性の流行なのかと、クレイマー氏自身も考えてきたという。しかし、拡張動画を使えば使うほど、クレイマー氏はその価値を確信するようになった。「あらゆることに役立つわけではない。でも、これらのツールを使うことで、ストーリーの可能性が広まることに人々は気づくだろう。いままでにない斬新な方法でコンテンツを制作できるため、(流行のように)いつか消えてしまうということは無い。ユーザーはまったく新しい環境に完全に入り込むことができ、ある場所がどんな所か、よりリアルな実感を得ることができる」とクレイマー氏は語る。
クレイマー氏の一日の典型的な流れは以下のようになっている。分かりやすくするために一部修正を加えた。
7:45 am 起きてすぐに僕は、インドに住むガールフレンドに朝の挨拶を携帯から送る。彼女とはワッツアップ(WhatsApp)を通じてつながってるんだ。着替えている間はボリウッドのクラシックな音楽をiPhoneで聴くことにしている。金属質な、安っぽい携帯からの音の方がインドにあるラジオっぽくて良い。インドでは何カ月も過ごしてきたし、ドローン関連の仕事もいくつかインドで請け負った。それから朝のランニングに出かけるんだ。
8:00 am 僕が住んでいるのはリッチモンドのイーストベイ。サンフランシスコベイトレール(自転車・歩行者用の海岸沿いの道)やリッチモンドマリーナから10分くらいしか離れてないからいつも水辺を走ることにしてる。今日は約6キロ走った。iPod shuffleにプログレッシブハウスやトランスのDJミックスや、たまにBBCラジオの1エピソードを詰めて、ランニングに持って行く。今日聴いたのはアーミン・ヴァン・ブーレンのラジオ番組「ステートオブトランス」。ダンス音楽は僕にとっての初恋なんだ。
8:45 am 家に戻ってきて、片付けて仕事に出かける支度をする。ここでもまたボリウッドのクラシック音楽を聴く。
9:30-11:00 am 今朝は自宅から仕事をする日。メールをざっと見た後、8月24日開催予定のBuzzFeed「オープンラボ・デモデー(Open Lab Demo Day)」の準備をする。そこでは、過去一年に僕らが取り組んできたプロジェクトを発表する予定だ。
11:00 am 家から配車サービス「リフト(Lyft)」を使ってカリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム学部に向かう。そこでのマルチメディア入門講座で、80人の学部生に講義をしてるんだ。
12:00 pm 講義をはじめて、マルチメディアジャーナリズムの未来について話をする。ドローンだとか、360度ビデオやVR(仮想現実)といった、僕がこれまで関わってきたプロジェクトを例として紹介している。すごく有意義な時間を生徒と持てたし、クラスを通してよく笑ったね。その後は活気のある質疑応答も行った。
1:00-1:45 pm 講義の後、僕がいま取り組んでいるキューバでの360度ビデオプロジェクトについて話すためにビデオプロデューサーの友人と電話で話をする。テクノロジーを使って人々を面白い場所へ連れて行き、テクノロジーが無ければ体験できなかった物を見せるのが僕の情熱なんだ。
1:45-2:15 pm BART(公営高速鉄道システム)まで歩いて行って、サンフランシスコのBuzzFeedオフィスに行く。
2:15-3:00 pm オフィスで素早くランチを食べた後にオープンラボの同僚であるウェスと一緒に働く。ウェスはジャーナリズムのオートメーション化とボット(bot)が専門で、今回は僕が作った360度ビデオの装備のトラブルシューティングを一緒にすることになってたんだ(皆さんも自分で作ることができるんだよ!buzzfeed.com/openlabでマニュアルが載ってる)。トラブルシューティングも、バッテリーがしっかりとはまってなかったことに気付いてからは修理は簡単だった。
3:00-4:00 pm 週に一回オープンラボ評論会を開くことになっている。そこでは過去数日間に何に取り組んできたかについて話し合うんだ。
4:00-5:00 pm BuzzFeedに新しく交通分野のレポーターとして入社したプリヤ・アナンドと、ニュース動画の責任者であるヘンリー・ゴールドマンとミーティング。明日行うビデオプロジェクトについて話す。僕のカスタム装備で360度ビデオを撮影するんだ。
5:00-6:00 pm ここで少し時間をかけて明日のプロジェクトに向けてカメラ装備を準備する。360度ビデオのためのセットアップはもちろん、プリヤのためのiPhone用のビデオ/音声グリップキットも準備しないといけない。iPhoneグリップキットは運ぶ途中でネジがひとつ壊れてしまったので、それを直したり、整備したりする。
6:00-6:15 pm ソイレント(栄養ドリンク)休憩を取る。ソイレントを試したことのないBuzzFeed従業員が3人いたので、彼らにも飲んでみてもらう。僕は濃い風味が好きだけど、はじめてソイレントを飲んだ3人はチョークの味、もしくは腐った牛乳の味がすると言っていた。
7:30 p.m ドローンジャーナリズムについてアドバイスが欲しいと言ってきたタイの男性とSkypeで話す。世界中にほんとにたくさん、ドローンの未来について興味を持っている人がいるんだ。出来る範囲で役に立てたら嬉しいと思ってるよ。
8:00 pm テイクアウトで夕飯を取った後、またBARTに乗って1時間かけてリッチモンドに戻る。いまT.E.ロレンス(「アラビアのロレンス」)の「知恵の七柱(Seven Pillars of Wisdom)」を読んでいるんだ。第一次世界大戦中、オスマン帝国に対するアラブ反乱において、ロレンスのアラブ人たちと協働する英国兵士としての体験を記したものだ。脱植民地化、ポストコロニアルの歴史について読むのが好きだ。特にISISやアルカイダ、そして今日の世界での地政学における紛争について理解を深めてくれるから。
9:45 pm 家についたらリラックスするためにプログレッシブハウス音楽を自分のターンテーブルで回す。それからベッドに向かうんだ。以前はナイトクラブやフェスティバルで、よくDJをしてた。海外でプレイしたことだってあるんだ。でも、最近は、11時には就寝するようになった。特に明日は、ビデオプロジェクトのために6時に起きないといけないからね。
11:00 pm 雑誌「ニューヨーカー・マガジン(New Yorker magazine)」を読む。スクリーンで読書をするよりも紙で読むほうが早く眠りにつける。それに雑誌は途中で寝ちゃって顔に落としても本よりは痛くないんだ。
Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)
Images courtesy of BuzzFeed.