2011年にイギリスで創業された旅行メディアのスタートアップ、カルチャートリップ(Culture Trip)は昨年10月、動画作品「ハンガーラスト(Hungerlust)」で成功を収めた。そのため、2019年にはオリジナルシリーズ6作品を発表する予定だという。
2011年にイギリスで創業された旅行メディアのスタートアップ、カルチャートリップ(Culture Trip)は昨年10月、動画作品「ハンガーラスト(Hungerlust)」で成功を収めた。そのため、2019年にはオリジナルシリーズ6作品を発表する予定だという。
2019年に発表される最初の作品は、2月にリリースが予定されている「ビヨンドハリウッド(Beyond Hollywood)」だ。このシリーズは、8つのエピソードで構成されており、アメリカ以外の異なる4つのロケーションで撮影されたものだ。各エピソードの長さは5分以上。監督を務めるのは、カルチャートリップのプレゼンター、カッサム・ルーチ氏で、北欧やパキスタン、ガーナ、香港で撮影が行われた。
すべてのエピソードは同時にリリースされ、カルチャートリップのWebサイトに備わっている独自のプラットフォーム上で一気に見られるようになっている。同社は、自社Webサイト、つまり、同社のアプリとソーシャルプラットフォームを訪れるユニークビジター数は、月間で1800万人にのぼると、以前に発表していた。
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「ビヨンドハリウッド」がアカデミー賞と同月に発表されるのは偶然ではない。「アメリカ以外にもこういった業界が存在するということを見せておきたい。(この番組には)これまでとは大きく異なる手法がとられている」と、同メディア企業でマーケティングを担当するバイスプレジデントのエリザベス・カーター氏は言う。
「ハンガーラスト」人気の理由
カルチャートリップは、ロンドンとニューヨークを拠点にしており、従業員数は285人までに成長。さらに、同社の執筆コンテンツや動画コンテンツにローカル色を添えるクリエイティブ寄稿者が300人ほど外部スタッフとして存在する。「ビヨンドハリウッド」は、よりドキュメンタリー色が強い「ハンガーラスト」ほど寄稿者が制作するコンテンツを売りにしていないが、カルチャートリップは作品の顔となる適切なキャストを起用することが視聴者に大きな影響を及ぼすことをよく理解している。
「映画文化を通して文化を紹介する方法を見つけるつもりだ。現代文化に関連した作品を制作しているが、実際に歴史を作っているわけではなく、現在起こっていることやその理由について視点を変えて描きたいと考えている」と、動画部門の統括者、ミック・グリーンウッド氏は言う。「(ルーチ氏の)ユーモアや大胆さはオーディエンスを魅了するだろう。彼は土地や登場人物にこだわる。映画制作に携わった経験もある」。
カルチャートリップによると、映画やテレビはメディア企業にとって、食に次いで高い人気を博しているという。独自の調査から、オーディエンスの98%は食品や飲料を通じて文化を探求することに興味があり、食関連のコンテンツの視聴時間や閲覧時間も長く、こういったことが「ハンガーラスト」の人気を後押ししたことが分かった。
日本語版のエピソードも
カーター氏は、「ハンガーラスト」は、「食に関係しない食の番組」だと説明する。同番組は、翻訳時間を含め、発案から配信にこぎつけるまで2カ月半だった。英語版に加えて、日本語版とフランス語版のエピソードも用意されている。
カルチャートリップによると、「ハンガーラスト」のパリのパン屋を舞台にしたエピソードは、一様に高いエンゲージメントを獲得したという。インスタグラム上でこれらの動画は、ほかのカルチャートリップのコンテンツと比べて、4倍のコメント数を記録した。カルチャートリップのアプリによるプッシュ通知で、もっともクリックされたコンテンツはマラケシュに関するエピソードだ。また、メキシコのエピソードは、YouTube上で最長の視聴時間を記録した。
「このコンテンツはまさにキャラクターの核心に迫るものであった」と、グリーンウッド氏は言う。「カルチャートリップは、キャラクターや登場人物、土地、文化をおしなべて大切にしている」。
目標はブランデッド作品
10月にイギリスで放送開始されたSnapchat Showsと部分的に連携して、カルチャートリップは毎週、「ハンガーラスト」を配信している。「私たちは、Snapchat上で登場人物や食品の写真に関して、何度もA/Bテストを行った。ソーシャルメディア上では、登場人物の写真を掲載するのが効果的だろうと予想していたが、そうではなかった。これは、カルチャートリップがブランドとして十分に認知されていなかったからだろうと思われる」。
厳しい納期に対応するということは、ブランドに番組のスポンサーになってもらえるように予算承認を受けるという選択肢がないということであった。このシリーズ作品は、Facebookのミッドロール広告やSnapchatの広告を利用してマネタイズされている。カルチャートリップは、「ハンガーラスト」が収益を上げてきたかどうかについては発表していないが、目標は広告主にブランデッドコンテンツの制作面で協力してもらい、番組のスポンサーになってもらえるようにすることだ。
同社によると、多くの広告主がカルチャートリップに対し、5月に公開される「ハンガーラスト2」の制作に関わりたいと申し出てくれている。そのなかには、「ハンガーラスト」以外のキャンペーンでは、すでにカルチャートリップに協力してきた広告主も存在する。