「 TikTok では、人々を巻き込むことが大事 」:英・カルチャー雑誌「デイズド」の事例

若者に人気があり、オーディエンスの数も急激に増えているTikTok(ティックトック)は、カルチャー雑誌のデイズド(Dazed)からも注目を集めている。

2019年7月29日の月曜日、この新興のパブリッシャーは認証済みアカウントを立ち上げた。短尺動画プラットフォームとのコンテンツパートナーシップの一環としてハッシュタグチャレンジを開催し、8月1日に発売予定の最新号の表紙を公開する。

デイズドはジャングルクリエイションズ(Jungle Creations)やラッドバイブル(LadBible)、グローバル(Global)などと並んで、いま勢いがあるイギリスのパブリッシャーのひとつであり、TikTokでさまざまなことを試している。デイズドでは、雑誌、デジタル、およびソーシャルのそれぞれで出したコンテンツを繋げるという狙いがある。

「オーディエンスは参加者」

「雑誌で何かをやるときには、その先にはデジタルでの広がり、つまり動画だけでなく、そのコンテンツの公開にまつわる物語があるかどうかを常に気にしている」とデイズド・メディア(Dazed Media)でコンテンツ部門を率いるアハマド・スエイド氏は語る。「ソーシャルでは、オーディエンスは観客ではなく参加者だ。我々も、どうしたらオーディエンスに参加してもらえるかを考えている」。

TikTokにはクリエイターのコミュニティやハッシュタグチャレンジがあるが、肝心なのはそこに参加する人がいるかどうかだ。デイズドの最新号の表紙はアメリカのラッパー、リル・ナズ・Xとなっている。カントリーとラップを融合させた「オールド・タウンロード(Old Town Road)」という楽曲がTikTokで人気を博している人物だ。デイズドのその号のテーマは「ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ウォン(How the West Was Won)」であり、カウボーイカルチャーの再燃を取り上げている。それに合わせて、このパブリッシャーは#LassoChallengeという1週間にわたるキャンペーンや、雑誌の表紙を撮影したときのオフショットなど、オリジナルコンテンツを展開した。

「あれは完璧な機会だった」と、スエイド氏。「TikTokでは、我々はコンテンツを配信するだけでなく、我々がやっていることに人々を巻き込んでいる」。

「若者が集うプラットフォーム」

大手ラジオ局のグローバル(Global)によると、このプラットフォームはライブイベントや音楽にも適しているという。2019年6月、同社傘下のラジオ局キャピタルFM(Capital FM)のライブ音楽イベント「サマータイム・ボール(Summertime Ball)」をTikTok上で8時間以上にわたってストリーム放送した。グローバルによると、そこでは1900万件のコメント、いいねやシェアを獲得し、ひとりあたりの平均視聴時間は48分だったという。

だが、現在グローバルで成長著しいSNSのチャンネルはポップバズ(The PopBuzz)というTikTokアカウントだ。6月には10万人のファンを増やし、現在は17万4000人のファンがいる。TikTokに限定した長尺番組の舞台裏でのシーンや、セレブへのインタビューなどの短尺動画を投稿している。

デイズドは、別のプラットフォーム向けに制作されたコンテンツを再投稿するのではなく、TikTok向けにオリジナルコンテンツを投稿することにも意欲的だ。このパブリッシャーは、詳細についてはまだ明らかにはできないが、2019年8月に向けてほかにもいくつかコンテンツを投稿する計画があるという。現在のところ、あらゆる可能性が開かれている。インスタグラム(Instagram)で「デイズド・ビューティ・コミュニティ(Dazed Beauty community)」を実施してきた同社にとって、TikTokは新しいタレントを見つけられる良い場所になっている。

「長い目でみると、デイズドは若者のプラットフォームであり、TikTokはいまの若者が集うプラットフォームだ」と、スエイド氏は語る。「我々には、ホットできらびやかな新しいことに飛び込むよりも、堅実に研究調査する方向性がふさわしい」。

将来的な商業化の機会

依然として、新しいプラットフォームで最初にテストする場合は分析が重要だ。これはつまり、マネタイズがまだはじまったばかりであることを意味している。だが、パブリッシャーのジャングルクリエイションズ(Jungle Creations)の初期の成長には目を見張るものがあり、将来的な商業化の機会も確かな形で見えている。

「これまでは、企業としてはまずオーディエンスを築くことが第一で、商業化を考えるのはそのあとだった」と、ジャングルクリエイションズでチーフコンテンツオフィサーを務めるメリッサ・チャップマン氏は語る。「これは新しい若年層の傾向であり、過大なリソースをつぎ込むことなく大きな成功を収めることができている」。

2019年6月、ジャングルクリエイションズは、自らのブランドのひとつ、VTの認証済みアカウントを取得した。それ以来、15万人のファンを獲得しているが、なかには、女性がブランコに乗るポメラニアンを押しているという動画で、250万回のいいねと1300万回の再生回数を獲得したものもある。現在までのところ、この戦略は、プラットフォームでの流行や特集が何かを突き止め、関連する動画を自身のアーカイブから見つける、というものだ。TikTokを、日々の業務の一部として組み込んだ社員もいる。

ブランドセーフティへの課題

アメリカでは、いくつかの代理店がTikTokのセルフサービスプラットフォームにアクセスできるようになっており、今月中には米国での展開が予定されている(※原文は7月末公開)。そのため、興味をもとにしたターゲティングや、オーディエンスのカスタマイズやピクセルトラッキングが試されている。これは、年齢や性別、またはデバイスの位置情報やオペレーティングシステムやネットワークにもとづいたターゲティングのさらに上の層で行われている。

ユーザーによって生み出されるコンテンツの要素を含むあらゆるプラットフォームと同様に、TikTokもブランドセーフティを監視する動きに直面している。より年齢層の若いユーザーベースでも、子供のデータを不正利用した疑いやネット上でのいじめ、若年層のユーザーがデジタルギフトを通じてクリエイターに悪用されたように感じるといった問題を声高に主張している。たくさんの証拠があるわけではないが、こうした問題は、別のプラットフォームと比べても予算投資の価値があるというTikTokの魅力を弱めてしまうおそれがある。イギリスでは、メディアコム(Mediacom)はTikTokに大きな投資をしていないが、これはブランドセーフティの観点からリスクが高く、そのほかのエージェンシーもそれに続いた場合、成長を妨げかねないからだ。

どのようなものが自身のプラットフォームで公開されているかを自身で完璧に制御できているようなパブリッシャーであれば、優位に立つことができるだろう。

エージェンシーへのアピール

チャップマン氏は、2019年末までにVT上で100万人のフォロワー獲得を望んでいるが、これはブランドにとって、若年層のオーディエンスへのリーチを狙うエージェンシーに対する商業的な活動が可能かどうかの判断材料となる数字だといえる。

「新しいトレンドを掘り起こして新たなオーディエンスにリーチするためには素晴らしい場所だ」と、チャップマン氏。「魅力的ではあるが、我々の強みであるメディアブランドをさらにそこに投入するためには、長期的な商業戦略における見通しがもっと必要だ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac