暗号通貨専門の金融メディア企業、ブロックワークス(Blockworks)は、2022年春に参加者5000人の対面型イベントを主催する計画を立てている。デルタ株の新型コロナウイルスが世界各国で広まり、感染者が増えているなか、これは夢物語に思えるかもしれない。
暗号通貨専門の金融メディア企業、ブロックワークス(Blockworks)は、2022年春に参加者5000人の対面型イベント、パーミッションレス(Permissionless)を主催する計画を立てている。デルタ株の新型コロナウイルスが世界各国で広まり、感染者が増えているなか、これは夢物語に思えるかもしれない。だが、ブロックワークスの共同創設者ジェイソン・ヤノウィッツ氏は、同イベントがメインで取り上げる、「DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)」は、多くの機関や投資家、金融アドバイザーを呼び込むのに十分すぎるほど注目度が高いテーマだと信じている。
ベンチャー投資を受けていない独立企業であるこのパブリッシャーは、もちろん新型コロナウイルス感染症について、まったく配慮していないわけではない。実際ブロックワークスは、ほかのメディア企業と同様にハイブリッド型のアプローチを採用し、リモートでライブ視聴してもらえるような形で、このイベントの開催を計画している。
ただヤノウィッツ氏は、昨今のオンラインイベントの盛況ぶりについて「過剰に宣伝されている」と苦言を呈する。
Advertisement
カンファレンスの視聴のため、「10時間もPCの前に座る」ことを望む者はいない、とヤノウィッツ氏はいう。「人々がイベントに足を運ぶのは、主にネットワーキング(人脈づくり)のためだ。DeFiはいま、暗号通貨で唯一もっとも興味深い分野である。対面で人々がコミュニケーションを取れる状態を用意できれば、熱量は一層大きなものになるはずだ」。
だが、体験型エージェンシーのホークアイ(Hawkeye)で、最高経営責任者(CEO)務めるW・ジョー・デミエロ氏は、ブロックワークスが2022年春の大規模な対面型イベントを計画している一方、「大半の他社イベントは、引き続きバーチャル要素が強いものになると予想している」という。
パーミッションレスの中身
2日間にわたり開催されるパーミッションレスには、パームビーチかマイアミのどちらかで、対面でのネットワーキングやパネル、セッション、討論会、円卓会議が用意される。「マイアミ周辺地域では、暗号通貨ブームが起きている」とヤノウィッツ氏は述べる。イーサリアム分析企業のデューン・アナリティクス(Dune Analytics)によると、銀行や取引所などを通した中央集権的な管理ではなく、分散型管理のもとでオンラインで貯金や融資、取引、保険契約などへのアクセスを可能にするDeFi産業への参入者は、現在300万人を超えるという。
イベント参加者は、コロナ禍におけるイベント開催を支援する企業、イベントスキャン(EventScan)がホストするポータルに、ワクチン接種証明書をアップロードするか、すぐに結果が分かる検査を現地で受ける必要がある。こうした、新型コロナウイルス感染症への予防措置の実施は、イベント開催コストに負荷をかける。しかし、「参加者が本当に安全であるようにマージンを5%、あるいは10%下げる」価値はある、とヤノウィッツ氏。以前なら、直前でのキャンセルや当日来場しないオーディエンスのことを考え、参加者5000人規模のイベントでも、収容人数は3000人の会場を用意していたかもしれないが、「いまはそんな危険を冒せない。マージンは下がるが、参加者のことを考えてより広い会場を押さえる」。
7月20日に15.59(約1721円)ドルで発売されパーミッションレスのチケットは、同日夜の時点で500枚売れた。なお、チケット価格は段階的に引き上げられる。たとえば、発売開始翌日の21日には、49ドル(約5408円)にまで値上がりしている。そして9月1日には、99ドル(約10926円)まで引き上がるという。「購入を促すために2週間おきに値上げするつもりだ」。
収益源の多様化が狙い
ヤノウィッツ氏は、スポンサー契約とパーミッションレスのチケット販売の売上高が「100万ドル(約1億円)台後半」になると予想している。2018年5月の創設以来、ブロックワークスは数十回のイベントを主催してきたが、全社売り上げに対してイベント事業が占める割合は30%を下回る、とヤノウィッツ氏。収益の多様化を目指し、「どの事業も、全社売り上げに占める割合が30%以上にならないよう注意している」、とヤノウィッツ氏は付け加える。
ブロックワークスは、イベント以外の事業も拡大ししている。実際、2021年下半期には、収益源を倍増するためにニュースレターサービスをふたつ開始する予定だ。また、イベントやニュースレター、ポッドキャスト、コンテンツなどの事業を成長させるために、年内に現在の22人から、35〜40人程度にチームを拡大するという。
ブロックワークスは、2020年3月に最後のカンファレンスを中止して以来、対面型イベントを実施していない。なおこのカンファレンスは、5月のNYブロックチェーンウィーク(New York Blockchain Week)中に開かれる予定だったが、実現することはなかった。
苦渋を呑んだブロックワークスだが、それでもイベント開催に積極的だ。現在は2022年春のパーミッションレス開催までに、8月11~13日開催のニューハンプシャー州ブレトン・ウッズでのサミットや、9月のNY市開催のイベント、11月のロンドン開催のイベントなど、3つの対面型イベントを予定している。
ヤノウィッツ氏によると、ブレトン・ウッズでのイベントは、約250人の招待客のみの参加で、NY市とロンドンでのイベントは参加者が600~700人になる見込みだという。ブレトン・ウッズでのイベントは、対面での参加者限定だ。一方NY市とロンドンでのイベントは、パーミッションレスと同様に、対面とオンライン参加のハイブリッド型になる。各パネルはライブ配信され、オンライン参加の場合は対面参加のチケット代の10%が課金される。なお、ブレトン・ウッズのイベントチケットは、ほぼ完売だという。ヤノウィッツ氏は、2021年には3つのイベントすべてが完売になると見込んでいる。
人々は、対面での交流を待ち望んでいる
参加者と広告主から、今後のイベントについてブロックワークスに寄せられる問い合わせの多くは、パンデミックが深刻化した際の対策に関するものが多い、とヤノウィッツ氏は話す。これに対しブロックワークスは、フィデリティ(Fidelity)やコインベース(Coinbase)、ジェミニ(Gemini)、TDアメリトレード(TD Ameritrade)のような顧客と協力し、対応策を計画てきた。そうした計画については、「イベントが延期されても、クライアントへの負担は発生しない。クライアントのスポンサーシップ、そして参加者のチケットは、今後のイベントに引き継がれるからだ」と、ヤノウィッツ氏は述べる。つまり、イベントが中止になった場合、イベントの代わりにニュースレターやポッドキャスト広告で補填するのではなく、今後6カ月から12カ月のあいだに開催されるイベントのスポンサーになれるように手配するのだ。
メディア&マーケティングエージェンシー、アンプリファイ(Amplify)の創業者であるジョナサン・エミンズ氏は、以下のように語る。「イベントをどのように楽しむか、利用するかは、オーディエンスが決める。イベントを設計する際には、この点を考慮する必要がある。人々は、対面での交流を待ち望んでいるはずだ」。
[原文:Crypto publisher Blockworks plans to host 5,000 attendees at an in-person event next spring]
SARA GUAGLIONE(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:村上莞)
Illustration by IVY LIU