YouTubeはデジタル動画クリエイターを苛立たせてきた。それでYouTubeのスターたちはますます、視聴時間を重視するYouTubeの推奨アルゴリムに迎合して、動画1本あたりにもっと多くの広告を表示できるように、動画の時間を長くして対応している。
YouTubeはデジタル動画クリエイターを苛立たせてきた。チャンネル登録者におすすめコンテンツとしてクリエイターの動画を表示しなかったり、視聴されている動画から広告を削除したりすることがあるからだ。それでYouTubeのスターたちはますます、視聴時間を重視するYouTubeの推奨アルゴリムに迎合して、動画1本あたりにもっと多くの広告を表示できるように、動画の時間を長くして対応している。
「YouTubeのアルゴリズムの力を利用してマネタイズする方法を見つけた。明らかに、アルゴリズムは長い動画を好み、大勢が現在視聴しているそうした動画に複数のミッドロール広告を入れている」と語るのは、主要なYouTubeチャンネルの登録者が110万人を超えるというコメディアンのコーディ・コー氏だ。同氏は昨年、主に長さが6~7分の動画を自身のチャンネルに投稿していた。だが、広告を表示する資格の有無をめぐってYouTubeが厳しい措置を取り、自身の動画の一部から広告が削除されたため、動画の平均時間を12~16分に増やした。
長くなる動画の時間
制作する動画の時間を長くするクリエイターの動きは、「YouTubeが推奨エンジンや検索・発見を切り替えてきた(オーディエンスを新しいチャンネルやクリエイターに振り向けてきた)、この2年間とかなり関係がある」と、ファインブラザーズ・エンターテイメント(Fine Brothers Entertainment)のCEOであるラフィ・ファイン氏は語る。同社は、YouTubeのようなデジタルプラットフォームや従来型TV向けに動画や番組を制作しているエンターテイメント企業で、主要なYouTubeチャンネルのサブスクライバーは1700万人を超える。
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YouTubeのアルゴリズムは2012年以降、視聴時間を優先している。だが、クリエイターは、チャンネル登録していないチャンネルからチャンネル登録した動画ではなく、人々がクリックしそうな動画を優遇することへの転換とみていたと、ファイン氏は語る。とはいえ、長めの動画を視聴するためにオーディエンスがYouTubeでの滞在時間を増やしていることをクリエイターが示せれば、望ましい視聴時間にする目的で動画を宣伝するようYouTubeのアルゴリズムに再学習させることができるかもしれない。
ほかのクリエイターやメディア企業も同様に、YouTubeにアップロードする動画の時間を長くしている。YouTubeで230万人のチャンネル登録者を抱えるライフスタイル専門ビデオブロガーのレミ・クルス氏は、たいていは20分の動画を投稿していると言い、デジタル動画ネットワークのキン・コミュニティ(Kin Community)でコンテンツ戦略担当バイスプレジデントを務めるグウェン・ミラー氏は、10~16分がYouTube動画の最適時間になっていると述べている。そして個々のクリエイターと協力して独自のオリジナル番組を制作しているデジタル動画ネットワーク、ホイッスルスポーツ(Whistle Sports)は、動画の時間を7~12分に固定しようと努めている。
「YouTube受けするのがわかっているので、そこにあわせて視聴時間を決めようとしている」と、ホイッスルスポーツのコミュニティ開発・成長担当責任者ジョシュ・グランバーグ氏はいう。「意味のある視聴が求められていることは承知している」。
残されたリスクとメリット
一方、こうした長めの動画へのミッドロール広告挿入が進む動きは、ブランドセーフティ問題の緩和のために、一部の動画への広告掲載をより積極的に制限するYouTubeの過去1年間の取り組みと、同時に起きている。そのため、広告を削除されるリスクがまだあるかもしれない。だが、クリエイターが動画に掲載する広告を増やして危険を分散し、マネタイズにつながる視聴でもっと金を稼いで、マネタイズにつながらない視聴を埋め合わせることは可能だ。
動画の長さが10分を超えはじめると、コー氏は視聴1回あたりの売り上げを増やすために、動画の途中で複数の広告を流すことができた。60%の視聴者にはおそらく、広告が表示されないだろうと、同氏は語る。「だが、誰かに広告が表示される可能性が高まるので、動画1本あたりの売り上げが増え、動画でもっと金を稼げる」。
コー氏が長めの動画を投稿するようになって、別のメリットもあった。「長めの動画のほうがリテンションがいいことがわかっている」と同氏は述べ、時間が増えて、もっとジョークを織り交ぜることができるようになったことが関係していると語った。
視聴のリテンションは、長めの動画とミッドロール広告への流れを支えている。座って長めの動画を視聴する気が視聴者になければ、クリエイターはYouTubeのアルゴリズムが求める視聴時間にせず、YouTubeが広告を表示するインプレッション数がいまよりも少なかっただろう。そうしたことが、リテンションにさらに注意を払うクリエイターの増加につながっている。
ミッドロール広告の挿入位置
ファインブラザーズ・エンターテイメントは今年、ミッドロール広告のオプションをもっと十分に利用し、動画1本あたりの売上金額を増やすため、動画のリテンションの分析にもっと厳しい目を向けている。これまでは、11分の動画の7~8分あたりに広告を挿入していた。これにはふたつの理由があった。あわせて表示されるプレロール広告を視聴者に迷惑がられたくなかったし、すでに動画のほとんどを見ているので、視聴者はミッドロール広告を最後まで見続けると想定したからだと、ファイン氏は語る。だが、動画のリテンション率に基づくと、5~6分あたりに挿入したほうが、視聴者が広告を最後まで見る可能性が高いことがわかった。
「(リテンションの)分野内の何もかもが、いまのところ、YouTubeで注視すべき、いちばんの分野だ」と、ファイン氏は語った。
Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)