コロナ危機 によって、薬局や食料店の「労働者意識」に変化:小売業界に「組合加入」の波は訪れるか?

新型コロナウイルスのアウトブレイクにより、あらゆる産業の労働者が雇用主に保護の強化を強く求めるようになっている。小売業界も例外ではない。

薬局や食料雑貨店などの「必要不可欠」と分類されている小売店では、一部の労働者が危険手当を強く求めつつある。これらの小売店では、労働者たちのあいだで、出勤するたびに自身の健康を危険にさらしているのではないかとの不安が高まっている。また、マスクや手袋などの防具の支給を雇用主に求める声もあがっている。その一方で、ビデオゲーム販売大手のゲームストップ(GameStop)やクラフトショップ大手のジョアン・ファブリック・アンド・クラフト・ストアーズ(JOANN Fabric and Craft Stores)などに勤務する一部労働者は、企業側が彼らの店舗を誤って「必要不可欠」と分類していると主張し、その定義をめぐって経営陣と衝突を繰り返している。

新型コロナウイルスのアウトブレイクが失速したとき、小売店の有給病欠に関する方針や賃上げに対する一時的な変更のうち、はたしてどれが、どのような形で残るのだろうか? ひとつ言えるのは、今後、労働組合への加入を希望する労働者が増えるかもしれないということだ。

今回インタビューに答えてくれた労働組合や労働者支援団体は、新型コロナウイルスのアウトブレイクが労働者の組合への加入を促すかどうかという質問への即答を避けた。その答えは、今後数週間のうちに、労組非加入者には与えられないが、労組に加入している小売店勤務者に対して講じられる安全対策や賃上げが認められるのかに左右されることになりそうだ。ひとつ確かなのは、多くの労働者、とりわけ食料雑貨店や薬局で働く人々が、自分たちの仕事がいかに重要であるかということを、これまで以上に理解するようになったということだ。その結果、彼らの多くが自分たちの仕事に見合った待遇の要求に賛同の声を上げることを厭わなくなっている。

「現場労働者に最大限の保護を」

アメリカ労働統計局によれば、2019年現在、アメリカ国内で小売業・卸売業に従事する労働者のうち、組合に加入しているのは4.1%だけだった。一方、組合に加入している労働者の割合がもっとも高いセクターのひとつは教育産業で、その加入率は33.1%だった。アメリカ国内の小売業で最大の組合のひとつは、ユナイテッド・フード・アンド・コマーシャル・ワーカーズ・インターナショナル・ユニオン(United Food and Commercial Workers International Union :以下、UFCW)で、クローガー(Kroger)やアルバートソンズ(Albertsons)などのチェーンに勤務する労働者約127万人が加入している。もうひとつは、UFCWと提携するリテール・ホールセール・アンド・デパートメント・ストア・ユニオン(Retail, Wholesale, and Department Store Union:以下、RWDSU)で、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)やメイシーズ(Macy’s)、H&M、ザラ(Zara)などのチェーンに勤務する労働者約6万人が加入している。

RWDSUのコミュニケーションディレクター、チェルシー・コナー氏によれば、新型コロナウイルスのアウトブレイク下における同組合のフォーカスは、新規加入を促すことではなく、現組合員が組合協約を最大限に活用できるようにすることに置かれているという。「このアウトブレイクがはじまった初日、我々はすべての企業に連絡を取り、組合協定の条件に対する我々の理解を伝え、事態の進行に合わせて常に連絡を取る意向を伝えた」と、コナー氏は語る。

コナー氏によれば、RWDSUの協約の大半には、州や地方が非常事態を宣言した場合(これまでに、その多くが新型コロナウイルスに対してこの措置に踏み切っている)、特定の保護を発動させる不可抗力条項が含まれているという。

「可能な場合には、企業と協力して、現場の労働者に最大限の保護を与える努力をしてきた」と、同氏は語る。たとえば、職場でのマスクや手袋の着用を許可する、労働者と顧客の接触を最小限にとどめるために、レジなどの人通りが多い店内の一部エリアにプレキシガラスの仕切りを設置する、といったようなことだ。そのなかの1社がクローガーだ。同社はレジへのプレキシガラスの仕切りの設置をまもなく(訳注:原文執筆は3月27日)開始するとしている。

必要不可欠な労働者としての意識

労働者支援団体ターゲット・ワーカーズ・ユナイト(Target Workers Unite:以下、TWU)で調整役を務めるアダム・ライアン氏によれば、TWUには数週間前から、売り場内での手袋やマスクの着用に異議を唱える経営側への対処法についてのアドバイスを求める、ターゲット(Target)従業員からの相談が殺到しているという。

新型コロナウイルスのアウトブレイクを受けて、TWUはこれまでにターゲットに嘆願書を提出し、従業員への危険手当の支払いや、必要不可欠ではない売り場の閉鎖、従業員へのN95マスクと手袋、アイプロテクターの支給などを求めている。これに対してターゲット側は、数週間前から労働条件・環境の改善に乗り出している。同社は5月2日まで時給を2ドル一時的に引き上げており、隔離されている、あるいは新型コロナウイルスへの感染が確認されている従業員に対しては、14日分の給料を支払うことを約束している。また各店舗に、買い物客が通過するたびにレジの通路を除菌するように指示するとしている。だが、TWU側はこれだけでは十分ではないと感じている。ターゲットにこの嘆願についてのコメントを求めたが、回答は得られなかった。

自身もバージニア州内のターゲットでパートタイマーとして働くライアン氏は、同小売店の労働者たちが「組合投票の成功に必要な浸透状態に達している」とはまだ思えないと語る。だが少なくとも、新型コロナウイルスのアウトブレイクにより、自身の仕事に対する従業員たちの見方が変わってきているように思うと、同氏はいう。

「この仕事をしていると、小売の仕事など仕事のうちに入らないと耳にすることがよくある。こうなる前は、とくにそうだった」と、ライアン氏は語る。「我々が必要不可欠な労働者になったいま、一般大衆や顧客だけでなく、労働者自身の考えも変わったように思う」。

Anna Hensel (原文 / 訳:ガリレオ)