「コロナ」関連ニュース、キーワードブロックリストの餌食に : パブリッシャーの広告収益を圧迫

新型コロナウイルスの波紋がグローバル経済全体に広がるなか、メディア業界は広告収入への衝撃に守りを固めている。だが、パブリッシャーは短期的な痛みにも対処せざるをえないかもしれない。多くのブランドやプラットフォームが、新型コロナウイルス感染症に関連する言葉を、キーワードのブロックリストに追加しはじめているからだ。

誰もが嫌がるニュース

インテグラルアドサイセンス(Integral Ad Science:IAS)の調べによると、2月に入り、「コロナウイルス(coronavirus)」という言葉が、ニュースサイトでもっともブロックされる検索キーワードのランキングで、前月の第8位から第2位に浮上した(栄えある第1位は、ご推察の通り、「トランプ(Trump)」だ)。オープンWeb全体でも、IASのデータを見る限り、1月にはトップテン入りすらしなかった「コロナウイルス」が、2月のブロックリストでは第3位を占めた。また、YouTubeは2月の発表で、新型コロナウイルス関連の動画を広告配信から当面除外すると表明した。

「コロナウイルス」というキーワードをブロックする広告主が増え、この感染症の集団発生に関するコンテンツの量が増えるにしたがって、ブロックするペースも加速しているように思われる。IAS同様、ブランドセーフティサービスを提供するダブルベリファイ(DoubleVerify)によると、新型コロナウイルスと関係があるという理由でブロックされたコンテンツの量は過去1週間で80%増加し、ブロックされたコンテンツの大半は、「コロナウイルス」または「COVID 19(新型コロナウイルス感染症の正式名称)」という言葉を含むという理由でブロックされていた。

広告主は誰もが嫌がるニュースを常に避けたがるし、いっそニュースはまるごと避けてしまえという広告主も少なくない。グループ・エム(GourpM)でブランドセーフティ担当のマネージングパートナーを務めるジョー・バローネ氏によると、同社のクライアントのうち、新型コロナウイルス関連のキーワードをブロックしているのは3分の1に満たないが、ブロックしていない広告主は、ニュースサイトにまったく出稿しないか、あるいはもともとキーワードブロッキングをそれほど利用していない広告主だという。

逆説的に「攻め」の見方も

一方で、あまりにも多くのブランドが「コロナウイルス」をブロックしているため、広告主にとっては、特に消費財(CPG)と製薬メーカーを中心に、価格的に有利な状況が生まれていると、IASのチーフマーケティングオフィサーを務めるトニー・マーロウ氏は指摘している。

新型コロナウイルス感染症への全世界的な関心を背景に、この感染症にフォーカスした期間限定の広告商品を打ち出すパブリッシャーも現れている。短期配信のポップアップニュースレター、ポッドキャスト、ライブブログ、さらには期間限定のSMSサービスまである。

だが、この手の広告商品の収益化は容易にできるものではない。そもそも、このニュースに直接広告を出したがる企業など皆無だと、インダストリーダイブ(Industry Dive)のショーン・グリフィー最高経営責任者(CEO)は指摘する。インダストリーダイブはB2Bパブリッシャーで、業種別の視点で新型コロナウイルスのニュースを取り上げている。グリフィー氏の言葉を借りるなら、「誰も悪いニュースのスポンサーなどやりたくない」。

長引けば、さらに下落する

ニュースサイトでは、プログラマティック広告の単価は直接販売より低いのが常だが、この事態は自然災害のようなトピックを扱うパブリケーションにとって、状況をさらに悪化させる力学を生んでいる。そう指摘するのは、メディアエージェンシーのクレイマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)でプログラマティックメディアディレクターを務めるトム・スヴィエルチェヴスキー氏だ。

同氏によると、このような記事のインプレッションは、たとえ販売されたとしても、広告主の需要があまりにも低く、ニュースパブリッシャーのCPMを下振れさせかねない。スヴィエルチェヴスキー氏は、下落率には幅があるものの、大抵、5%前後からはじまり、記事の掲載期間が長引けば、さらに下がると述べている。

デジタルマーケティングサービスを提供するグッドウェイグループ(Goodway Group)で、エンタープライズパートナーシップ担当のバイスプレジデントを務めるアマンダ・マーティン氏は、新型コロナウイルス関連の広告在庫に不当な安値が付けられる一方で、オリンピックや米国大統領選挙などのビッグイベントを控えた2020年は、広告主の需要が常よりも高騰することが予想されるとも指摘している。

解決策を講じるには労力が

だが、好機を活かすには、たいへんな労力を要する。マーティン氏によると、市場で利用可能なセンチメント分析のツールのなかには、死亡者数の増加を伝えるニュースなど、ブランドが避けたい内容と、感染防止の対策を提案するコンテンツのような無害な内容を、適切に判別できないツールもあるという。

結果として、エージェンシーが記事やパブリケーションを綿密にチェックして、広告にとって安全か否かを判断することになる。「リスクチェック、いわゆるデューデリジェンスは、我々エージェンシーの仕事だ」とマーティン氏は言う。「だが、実際の作業は容易でない」。

パブリッシャーとブランドは、キーワードのブロックリストは精度が低く、不完全だと口を揃えて嘆く。だが「センチメント分析のような代替技術は広く普及していない」と、ブランドセーフティツールを提供するチェック(Cheq)のチーフストラテジーオフィサー、ダニエル・アヴィタル氏は語る。センチメント分析のツールは、違いを判断できるようにソフトウェアを訓練するための、大量の素材が必要になるという。

アヴィタル氏によると、ソフトウェアが好ましくない記事と無難な記事の判別を学習するのに最大1週間かかるという。新型コロナウイルスのケースに関しては、同氏の同僚がチェックのソフトウェアのトレーニングを担当した。中国語と日本語のコンテンツを使用し、まずは新型コロナウイルスとは関係のないコンテンツを学習させたという。このソフトウェアについて、アヴィタル氏は「新型コロナウイルスと関係ないということは、確実に判断できる」と言っている。「パブリッシャーにしてみれば、それが一番重要だ」。

Max Willens(原文 / 訳:英じゅんこ)