Googleが今月、ChromeブラウザでのサードパーティCookieのサポートを段階的に打ち切ると発表したあと、大勢がまず、広告ターゲティングに及ぼす影響に注目した。Cookieへの攻撃によって考えられる二次的な被害は以下のとおりだ。
Googleが今月、ChromeブラウザでのサードパーティCookieのサポートを段階的に打ち切ると発表したあと、大勢がまず、広告ターゲティングに及ぼす影響に注目した。だが、サードパーティCookieは長年、デジタルメディアで大いに役立ち、ユーザーのプロファイリングやオーディエンスの分析など、面白味はないが重要な多くの機能に利用されてきた。
「Cookieはそっけないツールだ」と、ソースポイント(Sourcepoint)で製品管理担当バイスプレジデントを務めるマイケル・クラウス氏は語る。「パブリッシャーはCookieと愛憎関係にある。コンテンツのマネタイズに役立つが、誰がもたらしているのかはっきりしなければ、オーディエンスを管理できなくなる」。
Cookieへの攻撃によって考えられる二次的な被害は以下のとおりだ。
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フリークエンシーキャップ
消費者は、購入済みの商品のリターゲティング広告を見ると苛立つ。広告主は現在、ユーザーIDを利用することでサイトに表示される広告の数を管理している。サードパーティCookieを通じて現在利用できる、そうしたクロスドメイン設定のユーザーIDを、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)やアドサーバーが読み込んで、どの広告を配信すべきか判断する。
メディア幹部は、サードパーティCookieを利用して個々のユーザーのターゲティングを行えなくなるので、コンテクストに沿って配信される広告キャンペーンの数が急増すると予想している。だが、広告がコンテクストに沿ってターゲティングされていて、ユーザーが購入済みの商品を掲載していなくても、複数回表示されることで消費者が苛立つ可能性があると、ユニバーサルIDプラットフォーム企業ID5のCEOを務めるマチュー・ロッシュ氏は指摘する。
「パブリッシャーが自社サイトで自ら管理することは可能だが、このプロセスが複数のウェブサイト間でうまく行われるには、現在、サードパーティCookieを通じてのみ利用可能なドメイン間の共通IDが必要だ」と、ロッシュ氏は付け加えた。
広告キャンペーンのアトリビューション
一般に、サードパーティCookieは、異なるウェブサイトで(インプレッションや閲覧数で測定される)広告露出をユーザーの行動(クリック、購入、ページへの訪問)に結びつけるのに利用されてきた。今後、広告の成功がどの部分の功績によるものかを示すのに、サードパーティCookieが利用できなくなれば、もっと旧式で効果が低いラストクリックアトリビューションの利用が復活すると、広告主とパブリッシャーの幹部は示唆してきた。
Appleが、Safariのインテリジェント・トラッキング・プリベンション(Intelligent Tracking Prevention:以下、ITP)に関するポリシーをアップデートして、サードパーティCookieが消去されるまでの期間を短縮したことにより、(Safariを利用する)オーディエンスの可視性がさらに限定されたアフィリエイトパブリッシャーは、ポストCookie時代にコンテンツが小売業者の売り上げにつながっているかどうかを測定する方法について、アフィリエイトネットワークとともに解決策を見つけ出そうとしていると述べた。
シングルサインオンとサブスクリプションプラットフォーム
現在、サードパーティCookieに依存している場合、メンバーシッププラットフォームやサブスクリプション管理サービス、複数サイトでのシングルサインオン機能のようなインターフェースを備えている企業は、代わりのプロセスの開発が必要になる。そうしなければ、有料読者が複数回サインインを求められ、標準以下の苛立たしいユーザー体験につながることになる。パブリッシャーが設けたファーストパーティCookieに依存しているサブスクリプションプラットフォーム企業は、こうした変化によって問題に直面することはない。
「欧州で展開されているような、サードパーティCookieが(いまのところ)必要かもしれない統合型ログインシステムの場合は、潜在的な問題があるのは確かだ」と、サブスクリプションプラットフォーム企業ピアノ(Piano)で戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるマイケル・シルバーマン氏は語る。
オーディエンスの分析
2019年にAppleがSafariのITPに関するポリシーをアップデートして、サードパーティCookieが消去されるまでの期間を7日間に短縮したとき、Googleアナリティクス(Analytics)のようなサードパーティのオーディエンス分析ソフトウェアは、オーディエンス数が水増しされる危険性があった。同じ人物が1週間後にサイトを再訪した時に、Cookieが1人のユーザーを2人と見なしたかもしれないからだ。
サードパーティCookieを用いないことにより、複数のサイトを運営するパブリッシャーが各サイトへのユーザーの訪問回数を見たい場合などで、分析ソフトウェアのほかの機能が、さらに制限される可能性があると、アドテクコンサルティング企業アドプロフス(AdProfs)の創業者であるラトコ・ビダコビッチ氏はいう。一部の分析企業はすでに、ファーストパーティCookieを使用したり、サブドメインを設定することで、分析をパブリッシャーのウェブサイトと統合しはじめていると、ビダコビッチ氏は付け加えた。
詐欺やボットの検知
セキュリティ企業は現在、サードパーティCookieを用いて、小売サイトや金融関連サイトにおけるユーザーの行動のパターンを探して、詐欺目的やボットによるトラフィックの可能性がある異常な点を特定している。同様にサードパーティCookieに依存することで、広告主は、ブラウジング行動に基づいてより価値が高いと考えるオーディエンスにリーチするために入札額を引き上げていると、ビダコビッチ氏は語る。高級車のウェブサイトを訪問するユーザーは、自動車関連の広告主によって富裕層に分類されるかもしれない。
「強力なファーストパーティデータ戦略を立てていないパブリッシャーでも、こうした変更の恩恵を受ける」と、ビダコビッチ氏はいう。「サードパーティCookieに関連するサードパーティデータ区分が消えるのは良いことだ。マーケターの観点に立てば、常に出所が疑わしかったのだから」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)