広告価値は、メディアの「クオリティ」に左右されるのか?:コンテンツメディア価値研究会が調査結果を発表

信頼性の高いメディア・コンテンツは、広告の価値も向上させる。

2018年10月15日、朝日新聞や毎日新聞、講談社、フジテレビ、テレビ朝日など、新聞社や出版社、テレビ・ラジオ局、Webメディアの運営企業計32社が合同で、メディアとコンテンツ価値の検証・広告価値の向上を目的とする「コンテンツメディア価値研究会」を発足させた。参加各社はいずれもニュースや記事、動画・音声コンテンツを自ら制作・編集し提供する、有力なコンテンツメディア企業となっている。

事務局であるデジタルガレージ・メディアコンソーシアム推進室長、長澤秀行氏は「ユーザーは質が高く良質なコンテンツを得るためにメディアを訪れており、デバイスやチャネルが変化してもそれは不変のはず」と、DIGIDAY[日本版]の事前取材に対して語る。

「しかし、デジタル環境下ではブランドイメージを損ねるアンモラル・フェイク情報もあふれ、玉石混合の状態。さらに、現行のデジタル広告のシステムではコンテンツの『質』は考慮されず、コンテンツやメディアの価値が評価されていない」と、長澤氏は続ける。「パブリッシャー、ブランド両者に不利益をもたらす状況に一石を投じたいと考えている」。

そこで、コンテンツメディア価値研究会では、ハイクオリティのコンテンツと、そうしたコンテンツを発信するメディアの価値を調査によって可視化し、ブランドや第三者調査機関を交え検証を進めていくという。すでに共同調査や実証実験ははじまっており、デジタル環境下でのユーザーからの評価や、広告とコンテンツの相乗効果について、示唆に富む結果が発表されている。

特徴は「信頼性」の高さ

現在結果が公表されているのは、「メディア信頼度調査」「コンテンツメディアにおける広告による態度変容調査」「脳波測定による感性分析調査」の3調査。それぞれ、コンテンツメディアの信頼度、コンテンツメディアに掲載される広告価値、コンテンツメディアを閲覧しているユーザーの反応を可視化するために実施された。

まず、「メディア信頼度調査」だが、「コンテンツメディアはブランドセーフティなメディアであり、ユーザーからの信頼度も高いのではないか」という仮説に基づき、全国の15〜69歳の男女1万2468人(事前調査1万996人、本調査1472人)にアンケート調査を行なっている。

対象となったコンテンツメディアは、有力メディアリストのなかから、事務局が抽出した40の記事系・動画系メディア。各メディアの利用・認知状況や接触態度、印象評価、コンテンツやメディアの機能評価、さらには掲載される広告のイメージなどが調査項目だ。その結果、記事系・動画系いずれのコンテンツメディアも信頼感や安心感、社会的影響力が評価されており、コンテンツも最初から最後まで時間をかけて閲覧されていることがわかった。

調査を取りまとめたデジタルガレージ・メディアコンソーシアム推進室のシニアデータアナリスト・松枝三保子氏は、「各メディア内に表示される広告イメージについても、コンテンツの影響もあって信頼感が持てるとの評価を受けていた」と語る。

「広告が記事や動画の閲覧を妨げている印象を受けるという指摘もあったものの、広告の企業名やサービス名も記憶に残っていることが多かった」と、松枝氏。「『信頼できるメディアに掲載される広告は信頼できる』ことを、あらためて確認できたと考えている」。

広告価値も向上か

「メディア信頼度調査」では1日当たりのメディア接触時間についても調査しており、それによって新たな仮説が生まれたと松枝氏は話す。「メディア接触時間が長いほど広告への注視度が上がるとの結果が得られた。つまり、コンテンツ接触時間の長さが広告効果に影響を与えるのではないか、と考えられた」。

この仮説は、2018年5月9日にJIAA(日本インタラクティブ広告協会)が発表した、ビューアブルインプレッションに関する広告価値検証調査結果に基づく。これによると、JIAAの「ビューアブルインプレッション測定ガイダンス」に示されている基準、「広告ピクセルの50%がビューアブルなスペースに、1秒以上連続して表示される」を上回る広告表示面積や表示時間は、広告認知で7.9倍、CTRで23.4倍まで広告効果を高めることが証明されているのだ。

そこで松枝氏らは、9のコンテンツメディアに資生堂ジャパンと大和ハウス工業2社のレクタングルバナー広告を約2週間配信。広告配信時に各メディアで計測した記事ページの「滞在時間」「読了率」(各メディアの定義を採用)と「広告表示秒数」のデータを取得し、「滞在時間と広告表示秒数」「読了率と広告表示秒数」の相関を検証した。さらに、広告接触者・非接触者にアンケート調査を行い「広告表示秒数と態度変容」の相関も検証したという。

ビューアブルインプは1.5倍以上に

まず、両社のバナー広告のビューアブルインプレッションだが、資生堂ジャパンが81%、大和ハウス工業が73%となった。インテグラルアドサイエンス(Integral Ad Science)が発表した「2017年下半期メディアクオリティレポート」によると、日本の広告キャンペーンにおける平均ビューアブルインプレッションは、パブリッシャーダイレクトで63%(ディスプレイ)。すべての購入タイプでは49.8%となっており、いずれの値と比較しても、高い数値を示している。

「パブリッシャーダイレクト」「すべての購入タイプ」の数値は、「2017年下半期メディアクオリティレポート」(Integral Ad Science)による

さらに、両社の広告の表示秒数は、コンテンツページの滞在時間や読了率が向上するほど長くなっていることも確認された。では、表示秒数の向上が具体的な広告効果、つまり、態度変容や商品への興味・関心、情報欲求にもつながっているのだろうか。松枝氏は「広告表示秒数が長いほど態度変容が起きるわけではない」としつつ、「資生堂ジャパン、大和ハウス工業いずれの広告においても、広告表示5秒から態度変容が起きた」と話す。

たとえば商品認知の場合、既存キャンペーンやブランド・商品に親和性が高い人であれば表示1秒でも認知される。しかし、調査結果から、より高い効果を得るには5秒以上の広告表示が有効であることが読み取れる。松枝氏によると、「事前に行ったキャンペーンでの興味関心層を除くと、商品への興味関心や情報欲求も、広告表示秒数が5〜8秒に達した際に高くなっていた」という。

資生堂ジャパンの広告において1秒で態度変容が起きるのは、既存キャンペーンのためブランド親和性の高いユーザーが反応したこと、広告へのタレント起用の影響などが考えられる

これらの結果からわかるのは、コンテンツメディアに掲載される広告は高いビューアビリティが確保され、広告表示時間も長いということだけではない。松枝氏はこう指摘する。「ブランドセーフティ効果もあいまって態度変容に有効な影響を及ぼしており、広告価値が高いと言える」。

広告への興味度を可視化

前述までの2調査の裏付けの1つとして実施されたのが、「脳波測定による感性分析調査」だ。ハフポスト日本版(HUFFPOST JAPAN)と毎日新聞(Web版)の2メディアの協力のもと、読了率が異なる7記事を、両メディアの読者属性の分布に合わせ、各年齢層の男女20人ずつ、計40人が自由に閲覧した際の感性の動きを、簡易型の脳波測定機を用いて取得・解析している。

調査に関わったデジタルガレージ・メディアコンソーシアム推進室のグループリーダー、丸山幸太朗氏によると、「感性の指標は類型化された5つのなかから、好きと感じるモノ・事柄に接する際に上昇する『好き度』、対象のモノ・事柄に対して関心を持った際に上昇する『興味度』、対象のひとつの事柄に注意が集まっている際に上昇する『集中度』の3指標に特に注目した」。

経験則からその結果は予想できるかもしれないが、読了率が高い記事は、低い記事に比べて、記事の読み始め(3〜5秒時点)の興味度のレベルが高く、読みはじめから読み終わりまでの記事接触全体を通して「好き度」「集中度」のレベルが高くなっていた。

では、広告に対してはどうなっていたのか。この調査では、記事閲覧中のアイトラッキングデータを取得し、広告閲覧時の感性の動きも記事と同様の感性指標に基づき平均値を分析している。

「その結果、読了率が高い記事は低い記事に比べ広告視認時の興味度のレベルが15%高まっていた」と丸山氏は続ける。「広告非視認時との興味度の下落幅を比較しても、読了率が高い記事は低い記事と比較し顕著に小さく、約5倍の差がある。この結果は、2016年にフランスのメディアコンソーシアムであるスカイライン(Skyline)で行われた脳波測定を伴う感性調査でも同様だった」。

長澤氏もこう話す。「良質な記事はしっかりと読まれており、コンテンツが広告に影響していることを示す結果も得られつつある。現状では良質なコンテンツの価値が広告価値を後押ししている可能性を示唆するに止まっているが、さらに精査を進め、新たなビジネスモデルや効果指標の確立を目指したい」。

Written by 分島翔平
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