MFA(made-for-advertising)パブリッシャーはこの夏、かなり厳しい状況に追い込まれた。
発端は、MFAの広告インベントリー(在庫)が米国の総広告費の15%を占めていたとするリポートを、ANA(全米広告主協会)が6月に発表したことだ。しかも、MFAサイトが広告主にキャンペーンの効果を証明するために提供している情報は、高いビューアビリティ(可視性)といった「虚栄の指標」しかない。
そのため、MFAパブリッシャーは多くの広告主から悪者扱いされ、広告の品質や効果、ユーザー体験に無関心な金食い虫のサイトというレッテルを貼られている。
パフォーマンスパブリッシャーの心理
このようなレッテル貼りは、MFAパブリッシャーにかなりネガティブなイメージをもたらしており、こうした誹謗中傷の声が広告収入に影響を及ぼしているのは間違いない。この夏に広まったMFAリストに名前が載っているメディア企業のプログラマティック責任者は、少なくともそう感じている。
「この件については別の側面もあると、私は考えている。矢面に立たされることへの恐怖感があるのだ。そのため、パブリッシャー側の人々は発言をためらっていると思う」と、このプログラマティック責任者は語った。
匿名を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回はあるMFAパブリッシャーのプログラマティック広告責任者に、MFAサイトを悪者扱いする広告業界の「群集心理」が過去3カ月間の広告収入減につながった度合いや、「パフォーマンスパブリッシャー」に対する世間の仕打ちが不当だと考える理由について語ってもらった。
インタビューの内容は、読みやすさを考慮して短く編集している。
――MFAパブリッシャーというカテゴリー分けは公平だと思うか?
私は(MFAリストが)公平だとは思わない。しかも、彼らが何を目指しているのかわからない。この10~15年、私たちはアドテク業界で「詐欺、ヘイト、ポルノ、過激思想はダメだ」といい続け、こうしたコンテンツを取り除くためにかなりの仕事をしてきたと思っている。
にもかかわらず、新たなレッテル貼りを思いつき、「あなたたちが実在する人々にリーチし続けた結果、彼らはあなたたちのコンテンツを消費し、実に長い時間そのページに滞在している。だが、あなたたちはあまりにも多くの広告を表示しているため、我々はあなたたちを禁止する」などと言うのだ。このような形で私たちの取り組みを公に非難するのは奇妙に思える。
広告主は手頃な価格で多くのオーディエンスにリーチしたいと考えており、(MFAサイトは)テストキャンペーンでユーザーが広告にどう反応するのか確かめるのに適している。つまり、私たちはこのエコシステムで一定の価値を提供しているのだ。もっとも、常にそのように評価されているかどうかはわからない。
――広告主からは、MFAは広告費に対して十分なROI(投資利益率)をもたらさないという懸念の声が多く聞かれる。こうした懸念は妥当だと思うか?
MFAに関しては少し誤解があると思う。私に言わせれば、MFAはパフォーマンスベースのパブリッシャーでもある。MFAは、検索やソーシャルメディアに依存するオーガニックなパブリッシャーとは異なるビジネスモデルを採用している。
重要な違いは、パフォーマンスベースのパブリッシャーが従来型のパブリッシャーより多くの資金を(トラフィックの獲得に)費やしていることだと、私は考えている。その資金のほとんどは、コンテンツを消費するユーザーに満足してもらうために使われている。なぜなら、ビジネスモデル全体が、ユーザーをできるだけ長くページにとどめておくことを前提としているからだ。1回の滞在時間が7分を大きく上回ると書かれた記事を目にすることも多い。
パフォーマンスベースのパブリッシャーは1000万ドル(約14億8364億円)の収益を上げる(かもしれない)が、そのうちの900万ドル(約13億3528億円)はトラフィックの獲得コストとして消えていく。一方、オーガニックなパブリッシャーは、トラフィックの獲得コストこそゼロだが、100万ドル(約1億4864億円)の収益を上げている。(どちらも)ほぼ同じようなマージンで運営されているのだ。
コンテンツ制作企業はどこも、制作したコンテンツの対価を支払う必要があり、大半の企業は広告でその費用を賄おうとしている。サイトによっては、たとえば1ページに4つしか広告枠を設けず、広告掲載料を割高にしているところもある。彼らはより保守的なアプローチを採用し、そのために割高な料金を請求しているのだ。
一方、パフォーマンスベースのパブリッシャーは明らかに広告密度が高いが、そのおかげで料金はかなり安い。また、1回にたくさんの広告を表示して滞在時間を長くしているため、コンバージョン率は低くなる。
MFA(made-for-advertising)パブリッシャーはこの夏、かなり厳しい状況に追い込まれた。
発端は、MFAの広告インベントリが米国の総広告費の15%を占めていたとするリポートを、ANA(全米広告主協会)が6月に発表したことだ。しかも、MFAサイトが広告主にキャンペーンの効果を証明するために提供している情報は、高いビューアビリティ(可視性)といった「虚栄の指標」しかない。
そのため、MFAパブリッシャーは多くの広告主から悪者扱いされ、広告の品質や効果、ユーザー体験に無関心な金食い虫のサイトというレッテルを貼られている。
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パフォーマンスパブリッシャーの心理
このようなレッテル貼りは、MFAパブリッシャーにかなりネガティブなイメージをもたらしており、こうした誹謗中傷の声が広告収入に影響を及ぼしているのは間違いない。この夏に広まったMFAリストに名前が載っているメディア企業のプログラマティック責任者は、少なくともそう感じている。
「この件については別の側面もあると、私は考えている。矢面に立たされることへの恐怖感があるのだ。そのため、パブリッシャー側の人々は発言をためらっていると思う」と、このプログラマティック責任者は語った。
匿名を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回はあるMFAパブリッシャーのプログラマティック広告責任者に、MFAサイトを悪者扱いする広告業界の「群集心理」が過去3カ月間の広告収入減につながった度合いや、「パフォーマンスパブリッシャー」に対する世間の仕打ちが不当だと考える理由について語ってもらった。
インタビューの内容は、読みやすさを考慮して短く編集している。
――MFAパブリッシャーというカテゴリー分けは公平だと思うか?
私は(MFAリストが)公平だとは思わない。しかも、彼らが何を目指しているのかわからない。この10~15年、私たちはアドテク業界で「詐欺、ヘイト、ポルノ、過激思想はダメだ」といい続け、こうしたコンテンツを取り除くためにかなりの仕事をしてきたと思っている。
にもかかわらず、新たなレッテル貼りを思いつき、「あなたたちが実在する人々にリーチし続けた結果、彼らはあなたたちのコンテンツを消費し、実に長い時間そのページに滞在している。だが、あなたたちはあまりにも多くの広告を表示しているため、我々はあなたたちを禁止する」などと言うのだ。このような形で私たちの取り組みを公に非難するのは奇妙に思える。
広告主は手頃な価格で多くのオーディエンスにリーチしたいと考えており、(MFAサイトは)テストキャンペーンでユーザーが広告にどう反応するのか確かめるのに適している。つまり、私たちはこのエコシステムで一定の価値を提供しているのだ。もっとも、常にそのように評価されているかどうかはわからない。
――広告主からは、MFAは広告費に対して十分なROI(投資利益率)をもたらさないという懸念の声が多く聞かれる。こうした懸念は妥当だと思うか?
MFAに関しては少し誤解があると思う。私に言わせれば、MFAはパフォーマンスベースのパブリッシャーでもある。MFAは、検索やソーシャルメディアに依存するオーガニックなパブリッシャーとは異なるビジネスモデルを採用している。
重要な違いは、パフォーマンスベースのパブリッシャーが従来型のパブリッシャーより多くの資金を(トラフィックの獲得に)費やしていることだと、私は考えている。その資金のほとんどは、コンテンツを消費するユーザーに満足してもらうために使われている。なぜなら、ビジネスモデル全体が、ユーザーをできるだけ長くページにとどめておくことを前提としているからだ。1回の滞在時間が7分を大きく上回ると書かれた記事を目にすることも多い。
パフォーマンスベースのパブリッシャーは1000万ドル(約14億8364億円)の収益を上げる(かもしれない)が、そのうちの900万ドル(約13億3528億円)はトラフィックの獲得コストとして消えていく。一方、オーガニックなパブリッシャーは、トラフィックの獲得コストこそゼロだが、100万ドル(約1億4864億円)の収益を上げている。(どちらも)ほぼ同じようなマージンで運営されているのだ。
コンテンツ制作企業はどこも、制作したコンテンツの対価を支払う必要があり、大半の企業は広告でその費用を賄おうとしている。サイトによっては、たとえば1ページに4つしか広告枠を設けず、広告掲載料を割高にしているところもある。彼らはより保守的なアプローチを採用し、そのために割高な料金を請求しているのだ。
一方、パフォーマンスベースのパブリッシャーは明らかに広告密度が高いが、そのおかげで料金はかなり安い。また、1回にたくさんの広告を表示して滞在時間を長くしているため、コンバージョン率は低くなる。
――MFAをめぐる議論が広告収入に及ぼしている影響はどの程度だろうか?
短期的にはマイナスの影響が出ており、価格の下落やインベントリー需要の減少が見られる。つまり、コンテンツの宣伝費が減り、ページビューが減り、収益が減っているのだ。とはいえ、パンデミック発生当初の数カ月間と比べれば、それほど深刻ではない。
MFAのような記事に投じられていた広告費が、おそらくほかの場所に向かい始めているのだろう。特に(MFAのレッテルを貼られた)パブリッシャーにはメディアの注目が集まっており、懸念があることは間違いない。また、支出を遅らせたり止めたりするバイヤーも見られるなど、収益への影響は確実にある。
――その影響を軽減するために、戦略の転換を図っているのだろうか?
市場からのフィードバックに基づいて変化していくのはやぶさかではない。不正が蔓延していた時代には、パブリッシャーが不正を行っていることが発覚すると、(SSP内で)すぐに取引が停止され、ときには(SSPによって)資金が凍結されることもあった。彼らはとても強硬だ。今でも、極めて小規模なパブリッシャーに対してさえ、SSPがそのような行動に出るのを目にすることがある。
ある日突然、ザ・トレードデスク(The Trade DeskD)が支払いを止めたり、ザンダー(Xandr)が支払いの停止を通告してきたりするのだ。また、パブリッシャーとのコミュニケーションも非常に少ない。このような状況が変わるのなら喜ばしいことだ。(なぜなら)デマンドサイドはまだほとんど闇に包まれている。(今日あった)広告予算が翌日になくなることもあるほどだ。しかし、よりよい対話ができるのなら、喜んで行動に移したい。
メディアからいろいろな話を聞かされるようになるまで、(フィードバックを)多く得られることはなかった。私たちが持っているメディアの情報源はSSPのパートナーと比べて少ない。私たちは(このあいだ)、ほかのパブリッシャーと同じく、収入源を多様化しようとアフィリエイトやeコマースへの依存度をやや増やしている。
――ビューアビリティのような虚栄の指標以外に、さまざまなKPIを測定する方向へシフトする計画は?
パフォーマンスベースのパブリッシャーとして、私は金銭的価値につながる新しい指標をまだ見たことがない。ビューアビリティなら、60%から80%に上昇すればCPM(インプレッション単価)がたちまち25%増えると簡単に推測できる。
ビューアブルなインベントリーは、今も優れたパフォーマンスを上げている。CPMは依然として高い。また、クリックスルー率も優れた先行指標だ。アテンション指標は極めて理にかなっていると思うが、パブリッシャーにとって、すぐに金銭的価値をもたらすものになるとは思えない。
――MFAパブリッシャーと二酸化炭素排出量が多いパブリッシャーのあいだには相関関係がある。あなたの会社では、広告主のサステナビリティーに対する取り組みが、プログラマティック広告へのアプローチの変更を迫る圧力とはなっていないだろうか?
私たちはもちろんサステナビリティーに配慮しており、対策を講じていないパートナーに入札リクエストを行わないようにするツールを追加したり、入札リクエストの数を減らす方法を検討したりしている。
今年初めには、SPO(サプライパス最適化)の取り組みを通じて、協力パートナーの数を減らしていくことを明らかにした。これが意味することは、おそらく2つある。1つ目は、システムが単純になること。そして(2つ目は)、お金を中抜きしている多数の再販業者(から)の広告リクエストが減少することだ。
――このことは、MFAパブリッシャーとしてのビジネスにロングテールの影響をもたらすのだろうか?
私の考えでは、MFAに対する世間一般のイメージはすでに悪化しており、私たちはこの結末を見届けることになるだろう。投資に違いはあるが、実際にはビジネスモデルが異なっているに過ぎない。私たちがトラフィックを獲得するために支払ったお金のほとんどは、ほかのパブリッシャーに流れている。
たとえば、私たちはページビューを増やそうとしているが、これはエコシステムにとって比較的健全なことだと思う。多くのオーディエンスを生み出し、しかも収益性の高い方法で生み出している限り、MFAパブリッシャーは存在し続け、しかも間違いなく変化していくと私は考えている。世間のイメージも変わってくるだろう。
[原文:Confessions of an MFA publisher]
Kayleigh Barber(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)