匿名で本音を語ってもらう、DIGIDAY名物の「告白」シリーズの最新記事では、名の通ったバイラルメディアの元パブリッシングエグゼクティブが登場。バイラルコンテンツ配信について隈なく、そのあくどいやり方についてふり返り、いまでも規模が重視される業界について、語ってもらった。
パブリッシングにとってバイラルコンテンツを生み出すことは、依然として主流だ。多くシェアされるコンテンツを作ることが、常に考慮されている。
匿名で本音を語ってもらう、「告白」シリーズの最新記事では、名の通ったバイラルメディアの元パブリッシングエグゼクティブが登場。バイラルコンテンツ配信について隈なく、そのあくどいやり方についてふり返り、いまでも規模が重視される業界について、語ってもらった。
以下は、その抜粋だ。
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――バイラルメディアは、かつて利用していたクリックベイトといった手法に頼らなくなっている。現在の最大の問題は何か?
Facebookのクリックベイト(釣り記事)に対する厳しい対応が非常に効果的なため、有能な多くのパブリッシャーたちはその手法を採用していない。しかし、そのリスクと不透明な部分は、バイサイドのコミュニティーにあるということだ。
――それはいまだに起っているのか?
フォロワーbot(ボット)を使用したり、そのアカウントを買っている。英国最大規模のバイラル・ライフスタイルパブリッシャーのなかには、自社ページを大きく見せるために、Facebook、インスタグラム、Twitterアカウントを購入し、そのアカウントのフォロワー数をまとめている。またはFacebookページを購入し、こちらでも同様の目的を果たす。あくどいやり方だ。
フォロワーbotを利用してコミュニティを拡大し、リーチ率を上げることを、戦術的だと評する見方もあるだろう。パブリッシャーにとって、これまでもっとも戦術的だったことは、雑誌の無料コピーを配布することだった。しかし、ボットやアカウントの活用は、パブリッシャーがこれまでにもっていたような理性的な根拠とは、まったく別だ。現在は、コミュニティとは共通の関心をもつ人々の集まりであるとする考えとは、相反するコミュニティを買っている。
――つまり、規模がいまだに優先されると?
それなりの規模がなければ、ブランドやエージェンシーに相手にされない。メディアプランに参入するには、少なくとも月間100万のユニーク数が必要だ。彼らは中身を見るのではなく、数字を見ている。ブランドとはエンゲージメントの質について話はするが、彼らは実際どうでもいいと思っている。なぜなら、いまだにWebページの訪問者数によって購買が大きく左右されるからだ。
――変わるにはどうすればいい?
それを行っている中間管理職に去ってもらうことだ。プラットフォームがこの現状を知ることも有効だ。つまり、上層までそうした情報がうまく流れていかないことが原因だと思う。数字だけで決断をすることはバカげた行為だという指摘が出ないのだ。そこが従来のパブリッシャーのやり方とかみ合わない。
また、数字だけではオーディエンスの質を保証できない。ブランドがエンゲージメントの質について気にする理由は、彼らが自社のプロダクトに対するクオリティを気にするからだ。まるで、彼らが本物ではないかのように聞こえるよ。
――あなたは自身が勤務したパブリッシャーが最先端を行くメディアスタートアップから、皆が注目するビッグブランドに変わっていくのを数年前に目の当たりにした。最大の不満は何だった?
我々は急速に成長し、そのブランドはすぐに成功を収めた。しかし、それによって多くの問題が生まれた。たくさんの人間を雇用したため、社風も変わった。役割ごとにに住み分けされ、他部門と連携を取らないで仕事をする人間が増えた。そして、オフィスには慢心が存在するようになった。慢心は連鎖反応を起こし、やがて疑念と悲観論が広がった。
別の分野や社外から人を採用することもあった。つまり、社内の人材は無視されたのだ。こうしたことは、ときに起こる。しかし、そのために多くのプロセスや共同意識をもつことに時間が割かれ、時間が経つに連れて、まとまりのない集団からビジネス部門に配属されたりした。
――それを防ぐことはできないのか?
力のある投資家たちによって、バイラルメディアに利益がでるようになってきた、つまり地球の歴史でいうところのカンブリア爆発期に我々はいるようなものだ。それはよくあるジレンマだ。かっこいいものをもっていれば、投資家はそのために資金を出す。投資することで、それをさらに大きくする、するとそれはかっこよくなくなる。そうなると内面的にはもうスタートアップであり続けることはできない。
――内面的に変わることでターゲットにストレスを与えないか?
社外から経営幹部レベルの人間が入社すると、時間が経つに連れ、ターゲットがさらに野心的なものになる。現在の会計年度と比べて、来年度に期待される数字が急増しているというときなどは、確実にセールスチームに軋轢を生み出す。彼らは本当に懸命にやっているのに。
――収益化でもっとも苦労したことは?
エディターとして提供できることを細かく調整しながら、ブランド向けのコンテンツを作成する専門チーム(スポンサード記事のチーム)をもっていた。オフィスでその名前を耳にすると人々は喜んだ。しかし、我々のエントリープライスは高額だったため、ビジネスとして成立させるために懸命に努力しなければならなかった。
ブランドやメディアは学ぶこともたくさんあったと思う、というのも、従来のメディア購買方法とは異なるからだ。我々が何か面白いことを書いて、彼らのブランド名をトップに入れようとしていることを誰も信じることができなかった。ブランドは、ブランド自身が話題にされるべきだという考えをまだ捨てきれていなかった。
我々が売り込むことが出来ても、そのコンテンツにクライアントは干渉しはじめた。いくつかのケースでは、読者とクライアントの両者にもっとも大きな価値をもたらすと思われることが、クライアントによる干渉で潰されている。
Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)
Photo from ThinkStock / Getty Images