[ DIGIDAY+ 限定記事 ]匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの告白シリーズ。今回は、とある英ブロードキャスターのシニアエグゼクティブに目下の懸念について語ってもらった。動画においてもビューアビリティメトリクスは問題になっており、大量のVODインベントリを有するブロードキャスターは業を煮やしはじめているという。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]ビューアビリティメトリクスは長年、パブリッシャーの悩みどころとなっている。エージェンシーとパブリッシャーの調査結果において、ディスプレイインプレッション数が著しく食い違う場合は、大問題だ。だが近年はこれが、動画においても問題となっており、大量のVODインベントリを有するブロードキャスターは業を煮やしはじめている。
匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらうDigidayの告白シリーズ。今回は、とある英ブロードキャスターでVOD配信業務を取り仕切るシニアエグゼクティブに目下の懸念について語ってもらった。
なお、読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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――動画広告の効果測定にビューアビリティを用いることへの不満とは?
ディスプレイ(広告)に関しては、ビューアビリティメトリクスに何の不満もない。同じ論理を動画(広告)に、それもモバイル機器(での広告)に適用するのが問題なんだ。いまや、大半のパブリッシャーやブロードキャスターの動画のうち、8割がモバイルで視られている。スマホ上で動画の再生ボタンを押せば、自動的にフルスクリーンになる。つまり、広告は一度に1つしか視られない。したがって、レイアウトの定義によれば、それは100%のインビュー(in-view)であり、広告の画面占有率は100%となる。我々はすでにコンプリーション率を取り入れている。ビューアビリティメトリクスを適用するのはおかしい。
――にもかかわらず、エージェンシー側はおそらく、機器の別にかかわらず、すべてにメトリクスを適用したがる、と?
そう、それが連中の主張だ。だが、そうされるのは、我々にとってはかなりの痛手なんだ。ビューアビリティが導入されたのは、かれこれ10年も昔のことで、当時は売れ残ったインベントリが大量にあり、(広告がどこに出るのかを広告主に伝えない)いわゆるブラインド広告ネットワークが登場し、オープンなエクスチェンジ市場で売買がなされるようになり、ブランドは自分が金を出したのに、その広告が見られているのかどうかもわからない、という状況だった。しかし、プレミアムブロードキャスターは皆、ブランド環境を信用してきたし、なかには制作費が数百万ポンドに上るものもある。そういう作品を、たとえばスケートボードに乗る猫を撮っただけの動画と同列に並べるのは、どう考えてもおかしい。いまや、VODとストリーミング動画の大半はモバイル機器で視られており、これはこれまでに輪をかけて大きな問題だ。
――そのせいで御社が被っている損失は?
月間収益の10%に上りかねない。つまり、何十万ポンドに相当する。1年分に換算すると、数百万ポンドもの大金だ。で、うちのCFOに、これはビューアビリティテクノロジーのエラーのせいなんですと、釈明せざるをえなくなっても――本来は、うちがすることじゃないんだが、連中はそんなこと気にもしない――エージェンシーは聞く耳を持たない。問題はそっちで解決しろ、と。
――それで、どのように解決を?
そのロスをどうにか埋めようと自力で努め、問題を一掃できるくらい大量のコンテンツを生み出せる新番組の登場を期待するしかない。とはいっても、もはやうちのアドサーバー上のことではないし、アドコール数は以前と比べものにならないほど増えているから、コールとコールのあいだで常に、うちはイベントリを失うリスクを負わされている。自分の在庫を100%自分で売れるようになって然るべきなんだが、ブランドとエージェンシーはそういう(ビューアビリティ広告)商品を使えと言って譲らないし、しかたなく90%からはじめる。で、その率を上げようとすると、ブランドとエージェンシーは去ってしまう。悪循環だよ。
――問題となった事例を具体的に
とあるエージェンシーが、某大手英リテールブランドの広告でビューアビリティメトリクスを使うと、あとになって言ってきた。翌日、そのエージェンシーが言うには、おたくのビューアビリティに問題がある、と。だが、こちらで調べたところ、何も問題はなかった。話がこじれた原因のひとつは、彼らが使っていた広告フォーマットが、とあるビューアビリティベンダーのテクノロジーにくるまれていたことにあった。エージェンシーはビューアビリティを測定できず、ページの読み込み速度は遅くなり、広告のせいで動画ストリーミングが妨げられていた。うちはデペロッパーの時間を大量に割き、2週間もかけて原因究明にあたったが、わからなかった。結果、エージェンシーは我々に対する信頼をなくし、クライアントは不満を溜めに溜めた。ところが2週間後、そのベンダーがいきなり打ち明けてきたんだ。じつは、我々のプログラムにエラーがありまして……でも心配は無用です。3週間でアップデートしますし、そうすれば、問題は解決しますから、という言い草だよ。
――つまり、問題はベンダー側にあると?
ビューアビリティベンダーの多くは、買い主側に対して、自分たちはパブリッシャーと密な関係にあると、吹聴する。こちらと話をしたこともないくせに、平気でそうするんだ。グローバルレベルでブランド勢と話を進め、すべてうまく行くと、勝手に請け合っておきながら、ローカルレベルでは、パブリッシャーとまるで連携を取っていない。
――パブリッシャーのビューアビリティ問題は、いまにはじまったことではない。なのになぜ、それが懸念事項だと?
動画側では、現在、これが深刻な問題になりつつあるからだ。より多くのブランドアドバタイザーがトレーディングデスクと直接やり取りするようになるなか、この問題が近々、大爆発を起こすのではないかと不安視している。
――その根拠は?
問題の7割はベンダーのせいで、残り3割がエージェンシーのせいだ。ただ、とはいえ、業界トップクラスのエージェンシーには、優秀な広告戦略チームも、さまざまなパブリッシャーと広く仕事をした経験もあるし、最高の結果を出すための時と場合に応じた術も、どこにどんな広告コピーを使えばいいのかのノウハウもある。一方、インハウス化を進めるブランドアドバタイザーは、この先大変だろう。組むべき主要パブリッシャーを見極め、アドテクが正当な注意義務を果たしてくれると盲信するだけでなく、そうした問題が絶対に起きないよう、緊密なコミュニケーションを彼らに確約させなければならないし、負担はかなりのものになる。で、個人的には、後者のケースが増えるんじゃないかと思えてならない。
Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)