コンデナスト(Condé Nast)とTikTokの新たな契約のもと、VogueとGQは今後、両ブランドのソーシャルチャネルと紙媒体の両方で、限定コンテンツの製作をおこなう。ライブストリーミング、ハッシュタグチャレンジ、短編動画シリーズなど、さまざまなコンテンツを投稿している。
コンデナスト(Condé Nast)とTikTokの新たな契約のもと、ヴォーグ(Vogue)とGQは今後、両ブランドのソーシャルチャネルと紙媒体の両方で、限定コンテンツの製作をおこなう。両社とも、契約内容の詳細は金銭面での合意も含めて明らかにしていない。
新たな契約には、ライブストリーミング、ハッシュタグチャレンジ、短編動画シリーズなど、さまざまなコンテンツフォーマットが含まれる。テーマの中心はファッション月間だが、スタイルやショッピングに関するものも含まれ、製作はコンデナストの編集チームとソーシャルコンテンツクリエイターが手掛ける。
コンデナストのセールスチームとTikTokは、これらのコンテンツに関心をもつ広告主との契約締結に共同で取り組むと、コンデナストのブリー・マッキニー氏はいう。同氏はコンデナストのグローバルコマーシャルマーケティング、クリエイティブ、プロダクション担当シニアバイスプレジデントを務める。コンデナストとTikTokが広告主にどのような提案をするのかについては、まだ開発の「初期段階にすぎない」と、TikTokのコンテンツビジネス開発担当グローバルヘッドであるハリッシュ・サルマ氏は述べる。
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両社にとって、営業面での当面の目標は、ライブイベントのスポンサーを確保することだ。準備中の大規模イベントでホストがおこなうライブストリーミングなどを想定しており、これらはビューティ、テック、ファッション分野のプロダクトとの統合の機会になると、マッキニー氏は話す。
Buzzfeedに続いたコンデナスト
今回のニュースは、TikTokが昨年11月、BuzzFeedと1年間の契約を結び、複数のライブ動画シリーズの独占配信をおこなうと発表したことに続くものだ。TikTokがメディア企業と提携し、毎週配信のライブ番組のスポンサーシップを販売するのはこのときがはじめてだった(この契約ではTikTok側がBuzzFeedの番組のスポンサーを確保し、家庭用品ブランドのサイエタス[Cyetus]などにプロダクトプレイスメント[小道具や背景にスポンサーの商品を登場させる広告手法]の機会を提供している)。BuzzFeedはパートナーシップからの収益について回答を避けた。この契約は事実上、パブリッシャーがTikTokから直接の収益を得る試みのパイロットプログラムとして機能した。
マッキニー氏はコンデナストの契約について、「クライアントへのキャンペーンの販売には双方が参加する」とし、またTikTokは「(コンデナストと)協力してGQやヴォーグのラグジュアリー広告領域にリーチすることに関心をもっている」と述べた。マッキニー氏とサルマ氏は、いずれも契約の金銭面の詳細を明かさず、双方の収益配分はわかっていない。広告主とブランデッドプログラムについては、今年のニューフロント(NewFronts)で追加情報を発表予定であると、マッキニー氏はいう。
ファッション、小売、ラグジュアリー分野の広告主に加え、消費財ブランドやテックブランドも、コンデナストがTikTok向けに制作するコンテンツに適するだろうと、ウェーブメーカー(Wavemaker)でコンテンツ担当グローバルヘッドを務めるアダム・プチャルスキー氏はいう。今回の契約は「番組制作とエンターテインメントの現代的解釈であり、プラットフォームに適した消費しやすい形式の番組制作を、GQやヴォーグといった世代を超えて続いてきた信頼のおけるメディアが手掛けるというのは、とてもスマートだ。我々の(手掛ける)ブランドもぜひこうした体験に加わることを望む」と、同氏は語った。
ハッシュタグチャレンジ、動画、紙媒体
契約は2月上旬にスタートし、コンデナストはGQとヴォーグのTikTokチャンネルで、ファッション月間に関するコンテンツを投稿しはじめている。両社は、ブランデッドコンテンツ契約については現在交渉中であるとし、参加が決まっているパートナー企業の名前は明らかにしなかった。
GQとヴォーグのTikTokチャンネルはいずれも2020年の6月に開設され(フォロワーはそれぞれ 41万人、67万5000人)、現在はエディター、モデル、一般参加者にフィーチャーして、ファッション月間の舞台裏を紹介している。ヴォーグとGQのエディターは、タクシーの後部座席でランウェイでの注目の瞬間について話すライブ配信もおこなっていて、これにはサプライズゲストもたびたび登場する。
GQとヴォーグはTikTokチャンネル向けの動画シリーズも制作している。ヴォーグシリーズのひとつである「メイク・イット・ヴォーグ(Make It Vogue)」は、毎月ひとりの新たなクリエイターを取り上げ、それぞれの独自のスタイルで再構築されたファッショントレンドを紹介する。また「ゲット(The Get)」は、TikTokで展開されるVogueのショッピングガイドであり、エディターが注目する商品や、スタイリングのアドバイスといった内容だ。GQの動画シリーズには、視聴者がクローゼットに加えるべき新しいスタイルをライターやエディターが紹介する「GQ・ベスト・ニュー・メンズウェア(GQ Best New Menswear)」や、アスリートのウェルネス習慣を取り上げる@GQスポーツ(Sports)の番組「パーソナル・プラクティス(Personal Practice)」などがある。
GQとヴォーグは、スタイルや体型へのポジティビティを推進するハッシュタグチャレンジもおこなっており、TikTokユーザーの参加を募っている。ヴォーグはTikTokで初めてのハッシュタグチャレンジである#MakeItVogueにおいて、クラシックなバッスル(19世紀末に流行したスカートを膨らませるための腰当て)の自己流アレンジの投稿をユーザーに呼びかけ、現在までに36億回視聴されていると、サルマ氏は話す。
コンデナストとTikTokは、GQとヴォーグ3月号でも、4ページの折込付録の形でコラボレーションをおこなっている。付録は切り取り線に沿って分解すると18枚のカードになり、これらを綴じると、GQとヴォーグがそれぞれTikTokで展開している動画チャレンジに関連するパラパラ漫画ができる。GQ版にはシンガーソングライターのコナン・グレイ氏が、ヴォーグ版には人気モデルでムエタイ選手のミア・カン氏が登場する。
[原文:Condé Nast inks deal with TikTok to monetize exclusive content]
SARA GUAGLIONE(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:黒田千聖)
Illustration by IVY LIU