コンデナスト(Condé Nast)はつねに美容業界に貢献してきたが、今度はIRLイベントや新規コンテンツを通じて、ブランドとの居心地のよい関係性を消費者にもたらしている。 10月21日、ニューヨークで『アリューア(Al […]
コンデナスト(Condé Nast)はつねに美容業界に貢献してきたが、今度はIRLイベントや新規コンテンツを通じて、ブランドとの居心地のよい関係性を消費者にもたらしている。
10月21日、ニューヨークで『アリューア(Allure)』は初のチケット制消費者イベントを開催する。これは毎年恒例のベスト・オブ・ビューティ(Best of Beauty)賞のライブ・イテレーションで、ザ・ベスト・オブ・ビューティ:ザ・ライブイベント(The Best of Beauty: The Live Event)というものだ。一方、『Vogue』は『ヴォーグビューティ(Vogue Beauty)』のバーティカルをローンチ、10月中に各都市で開催されるチケット制消費者向け大人気イベント 、フォース・オブ・ファッション(Forces of Fashion) に美容のプログラムとアクティベーションを取り入れてコンテンツを紹介する予定である。さらに『GQ』は、男性のグルーミングトレンドに関する新しい動画シリーズを間もなく開始する。また6月には、『セルフ(Self)』が毎年恒例のビューティアワード(Beauty Awards)とは別の単独イベントとして、安全で効果的、かつ精神的にも有益な製品に着目した「ヘルシー・ビューティアワード(Healthy Beauty Awards)を開催した。
複数のタッチポイントを通じて読者層を刺激
ニューヨークタイムズ紙(The New York Times)の2月の記事によると、コンデナストは2022年をEBITDA収益はプラスで終えているが、売上高は目標に届かなかった。広告収入は前年比で増加したものの、購読料とeコマースは目標を下回っている。コンデナストは株式非公開のアドバンスパブリケーションズ(Advance Publications)の一部門で、財務状況を公表しておらず、時折話題にする程度である。ニューヨークタイムズ紙は、コンデナストの2021年の売上高が約20億ドル(約2995億円)だったことを挙げている。2022年には収益が伸びたにもかかわらず、黒字化はしたが20億ドル(約2995億円)を超えることはなかった。コンデナストのグローバルチーフレベニューオフィサーのパム・ドラッカー・マン氏は、コンデナストが今年をどのような状況でスタートし、また早々に景気後退が予想されていたことなどを考慮すると、現在の収益実績には満足しているとGlossyに語っている。だが、コンデナストが現在の収益目標を達成しているかどうかについては明言を避け、それを知るには時期尚早だと述べるにとどまった。
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ドラッカー・マン氏は、ビヨンセ氏のような音楽コンサートとその熱狂的なファン層をインスピレーション源として挙げ、「スーパーファンを作る方法として、クリエイティビティとブランドについての考え方に関する多面的な分析を行っている」と語る。コンデナストの戦略は、IRLイベントからメンバーシップ、アワードを通じた製品の承認シールにいたるまで、複数のタッチポイントを通じて読者層を刺激することだ。
アリューアの編集長 ジェシカ・クルーエル氏は、2021年に就任する際、IRLビューティモーメントという形で「アリューアコミュニティを活性化する」ことが優先事項だと語った。アリューアの2023年版メディアキットによると、月間平均ユニークデジタル読者は710万人、ソーシャルフォロワーは500万人である。印刷出版は2022年12月に終了している。
「読者の声を聞くだけでなく、私たちがどんな人間なのかを読者に知ってもらうためにも、アリューアは読者と交流できる方法を見つけたいと思っている。最近の美の多くは、人に関するものだ」とクルーエル氏は語った。
読者との交流を深める1日限りのイベント
ニューヨークのチェルシーインダストリアル(Chelsea Industrial)で10月21日に開催され完売となった1日限りのイベントでは、参加者はスポンサーブランドとともにさまざまなテーマのエリアにアクセスすることができる。そのひとつが、雑誌のオフィスの美容製品専用スペースを彷彿とさせるビューティクローゼット(Beauty Closet)で、ドライスタイリングを提供するトレセメ(TreSemmé)や、ハンドマッサージの予約を受け付けるダヴ(Dove)など、各ブランドの個別ブースが特色となっている。イベントスペースの中央には、ジョーンズロード(Jones Road)をはじめとするブランドを紹介する台座のエリアがある。ジョーンズロードは、ファンデーションのマッチングとコンサルテーションを予約なしで提供する。クルーエル氏は、このイベントを企画する際にトリートメントを優先したと語った。パネルエリアでは、シンガーソングライターでスキンケアのラブド01(Loved01)の創業者であるジョン・レジェンド氏との炉辺談話が行われる。そして最後に、ベスト・オブ・ビューティ受賞者を紹介したショッパブルなコーナーも設けており、そこではQRコードをスキャンしてAmazonのカートに商品を入れて購入できるようになっている。
一般入場券は59ドル(約8830円)で販売された。チケットには、アリューア・ビューティクローゼットのツアーと、ベスト・オブ・ビューティ受賞者やイベントパートナーのフルサイズの製品が入った125ドル(約1万8710円)相当のギフトバッグが含まれている。
メディアの多角化の取り組みにおいて、美容が重要な柱に
クルーエル氏は、アリューアの収益戦略を定義する言葉は「多角化」だと語った。メディア産業の活力にとって、多角化はこれまで以上に重要になっている。たとえばニューヨークタイムズ紙のようなジャーナリズムの重要な砦でさえ、モバイルゲーム、料理、コンテンツスタジオ、ポッドキャストなど、ニュース以外へと着実に事業を拡大している。コンデナストの場合、多角化の取り組みは以前から進められてきた。アリューアは2012年にビューティボックス(Beauty Box)のサブスクリプションを開始、ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)は2000年にその名を冠したフェスティバルを創設した。Vogueは2016年からフォース・オブ・ファッション(Forces of Fashion)というイベントを開催、それ以前には2012年から2016年にかけて英国版Vogueがロンドンで主催していたヴォーグ・フェスティバル(Vogue Festival)が行われている。これは2021年にヴォーグ・ワールド(Vogue World)として復活している。
またメディアの多様化の取り組みにおいて、美容がさらに重要な柱となりつつあることも注目すべき点であり、収益と社会通貨の両面で消費者カテゴリーの強さをさらに際立たせている。美容は歴史的に雑誌広告の生命線だったが、これまではIRLでの機会はなかった(編集部注:ノースウェスタン・メディル(Northwestern Medill)のパティ・ウォルター教授は2016年の大学院の授業で、『ランナーズ・ワールド( Runner’s World)』のような一見もっとも無関係にみえる雑誌でさえも、儲かる美容広告主を取り込むためにメイクアップに関する編集記事を掲載しなければならないと発言したことがある)。
「障害者であれ、民族や背景、ジェンダーアイデンティティが異なる人々であれ、さまざまな人々に門戸を開くということに関して、美容は非常に迅速に動いてきた」とクルーエル氏は言う。「私はつねに美容はとてもオープンなトピックだと感じてきたし、多くの出版物がそれをカバーできるという事実こそが、それを完璧に示しているひとつの例なのだ」。
[原文:Condé Nast expands beauty focus to diversify revenue]
EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)