コンデナスト、米国部門と国際部門を統合する方向へ:「大君主たちが乗っ取りに来る」

グローバル規模でのイベントやインフルエンサーマーケティングといった新しい広告サービスを広告主に販売する。そんなクリエイティブエージェンシーをコンデナスト(Condé Nast)は新しく設立した。

この夏、同社はコンデナストトラベラー(Condé Nast Traveler)のエディトリアルチームをアメリカとイギリスで合併。そして、アメリカとインターナショナルのプロダクトテックチームとのコラボレーションを反映させるように、リーダーシップの役職関連に変更を加えた。

規模は大きいものの収益を失っているアメリカベースと、規模は小さいけれども速い成長を見せているロンドンベースのインターナショナル部門の間でのコラボレーションは、今後さらに増えるだろうとコンデナストは述べている。これはアメリカ部門において、「ヨーロッパからの大君主たちが乗っ取って来る」と、冗談で言っていたことが現実になった形だ。

あえて統合する理由

表向きにはこういった統合はコスト削減の手段として打ち出されているわけではない。だが、現実にはコンデナストの米国部門は、昨年における1億2000万ドル(約134億円)の損失を取り消そうと必死になっている。

スタッフの削減を大々的に行い、長年務めてきたエディターたちをより若くて安い人材と取り替えることを行った。エディトリアルのコンテンツをシェアすることで、トップなみの高給を受け取っているエディターやほかの業務が重なる職の必要を減らすことができる。高給ホテルのレビュー記事を2本書く必要はない、といった具合だ。

営業スタッフは分かれているが、統合によって市場を横断した広告バイイングを遂行しやすくなるだろう。トラベル分野はコンテンツのシェアに適している。そしてトラベラー誌はほかのメディアの統合モデルとしても機能すると広く期待されている。すでにコンデナスト・インターナショナル(Condé Nast International)は、9月のファッションショー特集をロンドンに統合している。

デジタル化のメリット

また、コンデナストが各メディアで利用開始したコパイロット(Copilot)という単一コンテンツ管理システムのおかげで、コンテンツの共有も簡単になった。コンデナストではこれまで、エディターたちがそれぞれ独立して運営するという文化を持っていたが、それも変わるかもしれない。

過去にはヨーロッパ市場はニューススタンドのセールスが中心となる傾向にあった。そしてメディアの消費もローカルに偏っていた。その結果として、印刷される雑誌はローカルに特化していたのだ。

しかし、デジタル化によってコンテンツにアクセスする障壁が取り壊され、それが社の収益の大部分を占めるようになった(いまではプリントとデジタルでほぼ50%ずつとなっている)。そのことで、競合他誌との差別化の負担は比較的軽くなったわけだ。

「トラベルはトラベルだ。ニュアンスの違いはあっても、ファッションはファッションだ。コンデナストが、それぞれ個別の体験を追求して非効率性を高めることは意味がない」と、内部スタッフのひとりは語った。

国境を越えるメッセージ

グローバル広告取引はまだそれほど一般化していないが、すこしずつ普及しつつある。広告主が単一のCMS上でパブリッシュができることも市場を横断してバイイングを行うことを容易にしている。メディアリンク(MediaLink)のバイスチェアマンであるウェンダ・ミラード氏は、コンデナストの大きなチャンスがそこに存在していると指摘する。

「メッセージが国境を越えるということはよくある。ファッションとビューティではそれは特にそうだ。世界中で琴瑟なブランドイメージを持っているグローバルブランドなのだ。コンデナストのコアなカテゴリーという点でも、彼らがその方向性に進むのは理に適っている」と、彼女は言う。

コンデナストのような会社がロンドン中心へと転換していることは、ただ財務上の意義以外も持っている。米国部門はトップエグゼクティブや有能なエディトリアルスタッフの何人かをここ数年で失っている。

その一方でプレスに顔を出しているのはインターナショナル部門プレジデントのウルフギャング・ブロー氏なのだ。彼はニューヨーク・タイムズ(New York Times)でも記事にされている。彼はむしろ雑誌を新しくローンチしていっている人物なのだ。その最近の例が2019年にローンチされる『香港ヴォーグ』(Hong Kong Vogue)だ。ブロー氏の直属の上司は、親会社アドバンス(Advance)を経営するニューハウス一家の御曹司であるジョナサン・ニューハウス氏だ。彼は全体を経営するのに適した候補者と見られている。

「コンデナストのエネルギーの中心が位置するのはここになるだろう。イギリスのロンドンを中心としてリセットできるのかどうか、試験となるかもしれない」と、クラスキー・メディア・コンサルタンシー(Kreisky Media Consultancy)のチェアマンであるピーター・クレイスキー氏は言う。

今回のストーリーの限界

このインターナショナル側が乗っ取るというストーリーには限界もある。規模、オーディエンス、広告主との仕事の行い方、プライバシーに関する異なる規則など、それぞれのビジネスはあらゆる種類の違いを抱えているのだ。広告主はグローバルよりもローカルで購入する。グローバル広告バイイングは「クリエイティブに集中しがち」とジフ・デイヴィス(Ziff Davis)のプレジデントであるスティーブ・ホロヴィッツ氏は言う。「カスタムコンテンツをたくさん行っている。バナー広告以外で活躍するだろう」。

バイヤー側からすると、グループバイイングによってコスト削減を達成するポテンシャルを持っている。しかし、複数のマーケットを横断するバイイングを行うことは難しく、また、パブリッシャーが提供するさまざまなエディトリアルブランドを適切に活用することにも限界がある。これらのブランドはマーケットによって異なっているからだと、スターコム(Starcom)のグローバル・ネットワーク・クライアント部門ビジネスディレクターであるヴェロン・アグスティン氏は語った。

また、雑誌プロダクトがすべて同じになってしまうことを避けるためにバランスも考慮しなければいけない。ハースト・マガジン(Hearst Magazines)では、元プレジデントのデーヴィッド・キャリー氏がサイトのエディトリアルコンテンツの15%がシェアされており、85%がローカルのものになっている点について言及している。

「コンテンツをローカライズする必要性は存在するため、獲得できると思った経済上のメリットのすべてを獲得することはできないというリスクが存在する。結果的に支出が同じになってしまうかもしれないのだ」と、クラスキー氏は言う。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)