コンプレックスネットワーク(Complex Network) が、Google ニュースイニシアティブ(Google News Initiative) を使って読者収益を増やす取り組みをしている。同社は半年という短期間でユーザー体験を大きく改善した結果、コンバージョン率の300%アップを達成した。
コンプレックスネットワーク(Complex Network) が、Google ニュースイニシアティブ(Google News Initiative) を使って読者収益を増やす取り組みをしている。
同社は100社以上のブランドの商品を扱うオンライン販売サイト「コンプレックスショップ(Complex Shops)」を展開。より使いやすいプラットフォームを実現すべくGoogleのニュースコンシュマーインサイト(News Consumer Insights)を採用して、買い物客にとって障害となっていた複雑なプロセスを取り除き、カート内に入った商品がより確実に購入に結びつくよう取り組んでいる。
コンプレックスネットワークがGoogleと提携を開始したのは2020年の夏だ。だが、コンプレックスネットワークのオーディエンス開発担当シニアディレクターを務めるティファニー・マルドナード氏によれば、同社は半年という短期間でユーザー体験を大きく改善した結果、コンバージョン率の300%アップを達成した。
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Googleのニュース出版部門で分析および収益最適化担当ディレクターを務める、エイミー・アダムス・ハーディング氏は、「オンライン販売において重要なのは、『買い物客にとっての使いやすさ』、特に『なるべくシームレスな会計プロセス』をいかに構築するかだ」と語る。「つまりオンライン販売のストアを展開しているパブリッシャーも、実はオンライン販売プラットフォーマーのような取り組みが求められる」。
買い物客にとっての使いやすさ
そして実際に、コンプレックスショップにはさまざまな変更が加えられた。そのひとつがカートページの「買い物を続ける」ボタンの追加だ。クリックすると、カート内の商品をリンクつき画像へ変換してカルーセル状(横スクロール/スワイプで閲覧できる状態)に表示する。さらに途中で買い物をやめた場合にはユーザーへリターゲティングメールが送られるようにした。マルドナード氏によれば、特にリターゲティングメールは効果的で、同社が毎週発行しているニュースレターと比べて開封率が425%も高いという(具体的な開封数については非公開)。
さらにサイト検索機能についても改善し、特にモバイルデバイスで見やすいように虫眼鏡機能が追加された。
「このGoogleによる機能強化は効果が高く、コンプレックスショップで商品検索を行ったユーザーの購入率が、導入以前に比べ3倍も高くなっていることが分かった」とマルドナード氏は言う。
この変更は同ショップの検索数、コンバージョン率の向上をもたらしただけでなく、検索結果データからトレンドや人気商品の正確な追跡も可能にした。そのため、このトレンドデータは現在、おすすめ商品や在庫管理に活用されている。たとえばコンプレックスショップで特に多く検索されるのが、ソールコレクター(Sole Collector)のスニーカーということが分かった(売上数字は非公開)。
期間限定で送料無料キャンペーン
また、ニュースコンシュマーインサイトのツールを活用することで、送料を見たユーザーの多くが購入を途中でとりやめていることも判明した。
早速この対策を講じるべく、同社は送料負担を決断。期間限定で送料無料キャンペーンを展開した。
アダムス・ハーディング氏によれば、Googleがオンライン販売のみを対象としてパブリッシャーと提携するのはこれが初のケースだという。ただし、ほかの導入案件同様に、ここでもGoogle ニュースイニシアティブにとって重要な指標となっているのは、オーディエンスのエンゲージメントだという。「これは共通して、あらゆる分野に効果的な指標だ」と同氏は語る。
コンプレックスネットワークは2021年、このGoogleの指標を活用してコンプレックスショップの各コンテンツが及ぼす影響について調査し、同ショップをComplex.comにおいてどのように位置づけるべきかを検討する予定だ。
特異なバリュープロポジション
競争が激化の一途を辿るEC業界においても、パブリッシャーのショップやマーケットプレイスは特異なバリュープロポジション(価値提案)を有する。その構築における最大の要因は、パブリッシャーが長期間にわたり獲得した熱心なオーディエンスの存在だ。彼らがいてこそ、パブリッシャーは独特なショッピング体験をユーザーに提供できる。確かにバレンシアガ(Balenciaga)やノース・フェイス(The North Face)といった有名ブランドもオンライン販売において独自の存在感を放っている。しかし、コンプレックスネットワークにはオーディエンスと長年にわたり築き上げた信頼関係があり、同社のプラットフォーム上で親和性のある商品やストアを展開すれば、購入をより強く促すことができる。
また、「消費者にリーチするために、パブリッシャーならではの方法で資産を活用すべきだ」と語るのが、ベン・ゼトラー・デジタルメディア(Ben Zettler Digital Media)の創業者で、デジタルマーケティングおよびECコンサルタントを務めるベン・ゼトラー氏だ。たとえばニュースレターや動画に、コンプレックスショップやストア内の関連商品へのリンクを掲載する。この手法であれば、コンプレックスネットワークとオーディエンスが築いてきた信頼関係を、そのままEC事業にも転用できる。
さらに、たとえばニッチなオーディエンスの協力を得て、彼ら向けの商品開発を進めれば、数少ない潜在客との接触が可能となり、クロスプラットフォーム戦略が奏功して大きな飛躍の機会が生まれるとも考えられる。
ニッチ・グループへのアピール
ゼトラー氏は「『ニッチ』だからといって必ずしも『小規模なグループ』とは限らない。だが、ニッチであれば『関心度が断然高い』」と指摘する。ニッチな消費者は、一般的な消費者よりも購買意欲が高い傾向がある。それゆえニッチ・グループへのターゲティング、たとえばコンプレックスネットワークが配信する動画シリーズのファンに向けて、シリーズの広告を打ち、Tシャツを販売するといった手法を実施すれば、同社の収益に大きく寄与してくれるだろう。
Google ニュースイニシアティブと提携して、コンプレックスネットークは「読者を買い物客に変える。買い物客を購入者に変える」という最終目標を達成しつつあると、アダムス・ハーディグ氏は語る。
[原文:‘Turn readers into shoppers’: Complex Shop’s journey to prevent cart abandonment]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:長田真)