そもそもは、ブラックフライデーだけだった。そこに、サイバーマンデーが加わった。コマースに注力しはじめたパブリッシャーたちにとって、1年でもっとも重要な時期が、いまとなってはほぼ2倍となっている。BuzzFeedのコマース責任者であるベン・カウフマン氏も、「この週のために1年をかけて準備している」と語るほどだ。
そもそもは、ブラックフライデーだけだった。そこに、サイバーマンデーが加わった。コマースに注力しはじめたパブリッシャーたちにとって、1年でもっとも重要な時期が、いまとなってはほぼ2倍となっている。BuzzFeedのコマース責任者であるベン・カウフマン氏も、「この週のために1年をかけて準備している」と語るほどだ。
ちなみにブラックフライデーは、感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日にはじまる、小売店を中心としたセール。サイバーマンデーは、感謝祭の次の月曜日にはじまるオンラインストアを中心としたセールのことを指す(なお、日本のAmazonでは、12月第2月曜日を日本版のサイバーマンデーとしている)。
コンシューマー収益ビジネスに関して、年間でもっとも重要な時期において、6つのパブリッシャーたちがどのような新しい状況を体験しているかを調べてみた。
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スタッフ増強
ショッピングシーズンが開始すると、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)が運営するガジェット情報サイト、ワイヤーカッター(Wirecutter)はスタッフ総動員となる。読者たちに教えるべきセールス情報はどこにあるのか、何万ものディスカウント情報をスタッフ総出で調べるのだ。昨年はエディトリアルに加えてプロダクトや他の部門のスタッフも参加し、全体で65人のスタッフを動員した。今年は100人近くなると、ワイヤーカッターのディールズ・エディターであるアダム・ブラコースキ氏は言う。
さらに今年はカスタマーサービスを増強させ、読者からの質問に素早く答えられるように体勢を整えた。短期のスタッフチームを雇い、eメールの分類、そして質問を適切なエディターやライターへと転送するといった仕事を担当させた。
SEOマジックの強化
ブラックフライデーの場合は、実店舗に行って購入する必要があるが、それでも検索トラフィックに大きなボリュームが加わる。パブリッシャー/インターネット企業のジフ・デイヴィス(Ziff Davis)が長年検討していた、BlackFriday.comドメインの購入を昨年意を決して行ったのはそこに理由がある。春の間に改装をし、PCマグ(PCMag)やマッシャブル(Mashable)といったサイトへのバックリンクを揃えた。またターゲット(Target)、コールズ(Kohl’s)、Amazonといったトップリテーラーの広告スキャンもだ。
その努力と、さらにBestBlackFriday.comドメインも購入した結果、ブラックフライデーの検索結果でこれらのページはほぼトップに表示される。サイト訪問者たちはチラシのデジタル版を見ることができ、そこにはジフが提供する広告が掲載されている。
「このマーケットは実質的に我々が所有している。それを買い占めてしまうという決定を意図的に下したのだ」と、ジフ・デイヴィスのビジネスオペレーション部門シニア・バイスプレジデントのジェイソン・スティール氏は言う。
プロダクト統合の強化
コマースコンテンツは別のエディトリアルチームによって制作され、サイトの特別に用意された場所に表示されるものだが、ショッピングシーズンを迎えるにあたって、前面中央に展開するサイトも増えてきている。
CNNアンダースコアド(CNN Underscored)でコマースコンテンツを制作しはじめて1年になるCNNは、特定のブラックフライデー・セールが締め切られるまでどれだけの時間が残っているかタイマーをホームページに表示することをはじめた。またCNNのビジネス開発部門ディレクターであるブライス・ワイデリッツ氏によると、CNNのエアポート・ネットワーク(Airport Network)で流れる15秒広告や30秒広告も作ったとのことだ。
BuzzFeedやブリット+カンパニー(Brit + Co.)といったパブリッシャーたちもまた、サイト上で自分たちの広告在庫を使ってブランドライセンスのプロダクトコレクションや自社ブランドのギフトガイドなどをプロモーションしている。
コラボレーションの増加
リテーラーたちはコマースパブリッシャーたちの価値を理解しつつある。多くのリテーラーたちが複数の方法でこういったパブリッシャーたちとのコラボレーションを開始している。アフィリエイトで言えば、ショッピングシーズンの数カ月前からどのプロダクトがセールになるかをより大っぴらに語るようになったと、フューチャープレース(Future plc)のグローバル編集長でありバイスプレジデントであるビル・ギャノン氏は言う。フューチャープレースはテックレイダー(TechRadar)やトムズ・ガイド(Tom’s Guide)といったサイトを所有している。事前にセールに関する情報を持つことで、パブリッシャーはどこでそれを報じるかプランニングがしやすくなる。
より長い期間での扱い
クリスマスに向けたコマースPRはハロウィーンが終了したと同時にショッピングモールに現れるように、ブラックフライデーはいまではただ1日だけを指すというよりは、ひとつのコンセプトとして成り立っている。そのため週の前半からブラックフライデー関連の特集を出すパブリッシャーたちが増えている。ブランドやリテーラーたちも同様に、大規模なセールはブラックフライデーよりもずっと前に宣伝を開始している。CNNは昨年のおよそ2倍のホリデーギフトガイドのコンテンツをパブリッシュしている。BuzzFeedは数百というギフトガイドを持っているが、それを15%ほども増加している。フューチャープレースのエディトリアルチームはシフト制で勤務し、1週間を通じて24時間の特集体勢を組んでいる。
「以前と比べて、4日間追加で激務が加わっている形だろう」と、ワイヤーカッターのブラコースキ氏は言う。
自動化の促進
セールス情報を見つけてサイトにすぐに載せること自体、スキルのいることだ。これを自動化しようとしているパブリッシャーもある。デジタル・トレンズ(Digital Trends)はこの6カ月間を費やしてセールスを特定し、サイトに数秒以内に掲載するという自動化ツールを開発してきたと、コマース部門シニアディレクターのリンダ・マン氏は言う。
今後はデジタル・トレンズのコマースコンテンツやプロダクトはタグ付けされ、それによって特定の読者にセールスがターゲットされることになるとのことだ。
最適化の強化
コマース部門を確立したパブリッシャーたちは複数の要素のバランスを取らないといけない。ブルームバーグ(Bloomberg)によると5000万ドル(訳56億円)を売り上げるBuzzFeedの場合は、アフィリエートコマース、マーチャンダイズ、そしてブランドライセンシングビジネスのバランスを取らないといけなかった。このそれぞれが、さらに複数の収益源を持っている。BuzzFeed上でプロモーションされたウォルマート(Walmart)のセールはテイスティ(Tasty)による30個の調理器具にGoogle Home Mini(ホームミニ)を付けて99ドル(約1万1200円)で販売、という内容であり、これにはブランドライセンシング、広告、そしてロイヤリティが絡まっている。このような種類のオファーを来年は増やしたいとBuzzFeedは考えている。
「前2年に行った業務、そして今後の方向性を示している。オーディエンスと我々のIP(知的財産)を活用し、非常に魅力的なオファーを提供することができる」と、カウフマン氏は言う。もちろん、売上のデータが入ってくるにしたがって、プロモーション戦略を変更することもためらわないとカウフマン氏は断言する。もし顧客が、メイシーズ(Mayc’s)におけるBuzzFeedのグッドフル(Goodful)プロダクトライン殺到していたら、プロモーションのエネルギーはそこに注がれるだろう。「マーケットを我々はフォローする。究極的には我々はパフォーマンスを駆動とするグループだ」という。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)