コマース重視のパブリッシャー、ネット直販ブランドに接近

高級寝具のブルックリネン(Brooklinen)やニキビケア製品のキュロロジー(Curology)など、さまざまなネット直販(direct-to-consumer:D2C)ブランドがFacebook広告から撤退しようとするなか、コマースに注力するパブリッシャーが、マーケティングの隙間を埋めようとしている。

トライアルで提供

科学技術関連のパブリッシャーであるインバース(Inverse)はこの春、ネット直販ブランドを相手に、製品のスポンサード投稿の売り込みをはじめた。スポンサード投稿は、広告であることが明示されたうえで、ブランドのサイトへのリンクとともに、インバースのサイトとニュースレター(メールマガジン)に掲載される。スポンサード投稿が製品の売上につながった場合、インバースはその売上から一定の手数料を得るというのが、彼らの契約の仕組みだ。

ネット直販ブランドの多くは、大手小売企業やレガシーブランドと比べて規模が小さく、ブランデッドコンテンツの価格が高すぎると考えている。インバースを創設したデイブ・ネメッツ氏によれば、同社のブランデッドコンテンツの価格は、平均で10万ドル(約1120万円)を超えるという。だが、ネット直販ブランド向けのトライアル製品は、数万ドル台(数百万円台)だ。そのため、パフォーマンスを重視するマーケターは、トライアル製品でブランデッドコンテンツが自社に適しているかどうか確かめてから、ブランデッドコンテンツへの支出を増やすことができる。

インバースによれば、こうした販売戦略を採ることで、数万ドル台のトライアル製品を利用したネット直販ブランドに対し、コンテンツの数や配信の規模が大きい「10万ドル台」の製品を売り込めるようになるという。

「我々は、マーケターの立場に立って考えることを心がけている」と、ネメッツ氏は話す。「私が思うに、彼ら(マーケター)の多くは、Facebookのターゲティング機能が弱くなり、Facebookでリーチできるオーディエンスは、もはや発掘しつくしたと考えて、ほかの場所を探しているのだ」。

この1年で態度変容

eコマースが売上全体に占める割合が増えるにつれて、パブリッシャーはeコマースへの取り組みを増やし、デジタルチャネルとリアル店舗で消費者に直接製品を売る新しいブランドが生まれてきた。

そして今度は、ネット直販ブランドの側が、パブリッシャーを利用して露出を増やすことへの関心を高めている。この記事のために取材した、コマースに積極的なパブリッシャー5社によれば、ネット直販ブランドから大きな関心が寄せられていることに気づいたのは、この1年のことだという。

これまで、ネット直販ブランドの支持はもっぱらFacebook広告に向かっていた。しかし最近では、パブリッシャーとアフィリエイトコマース契約を結ぶことへの関心が高まっている。パブリッシャーのサイトに出した広告のほうが、Facebook広告より多くの売上をもたらす可能性があるからだ。

アフィリエイトの成熟

「ここに来て、パブリッシャーのアフィリエイトエコシステムは成熟に向かっている」と、リネン製品を販売するパラシュート(Parachute)のCEO兼創設者、アリエル・ケイ氏はいう。「(パブリッシャーのアフィリエイトは)膨大な数のeコマース企業にとって、実に大きな成果をもたらしてくれるものになっており、双方に大きなメリットがある。パブリッシャーに宣伝してもらうというやり方は、実にうまくいっているのだ」。

パブリッシャーにとって、ネット直販ブランドと仕事をするというのは、なかなかいいアイデアだ。ネット直販ブランドは昔から、パフォーマンスを上げるための広告を、ブランドを構築するための広告より重視してきた。後者の広告をよく利用するのは、レガシーブランドだ。今後は、パブリッシャーが直販ブランドに対し、ブランデッドコンテンツをもっと活用する方法を教えることが必要になるだろう。ブランデッドコンテンツは高価なうえ、すぐにパフォーマンスにつながるものではないからだ。

ネット直販ブランドは、Facebookのニュースフィードで競争の激化に見舞われているだけでなく、パブリッシャーの獲得競争にも直面している。パブリッシャーによれば、彼らに売り込みをかけてくるネット直販ブランド(特に多いのは、マットレスのような競争の激しい業界だ)は、製品のメリットを訴えるだけでなく、パブリッシャーに支払う手数料の高さを強調してくるという。

賄賂的な取り組みも

なかには、賄賂を持ちかけてくるブランドもあるようだが、編集規範を重視するパブリッシャーは、こうしたブランドを出入り禁止にしている。

ニューヨークメディア(New York Media)でeコマース担当ゼネラルマネージャーを務めるカミラ・チョー氏は、あるネット直販ブランド(名前は教えてくれなかった)がコンテンツにお金を払うことを提案したという話を聞いたことがあるそうだ。「バカげた状況になっている」と、チョー氏は述べながらも、次のように語った。「とはいえ、ROIの面で問題がないのなら、それほどバカげたことではないのだろう」。

BuzzFeed Market(マーケット)のディレクターを務めるジェシカ・プロバス氏によれば、同社はネット直販ブランドとともに記事を作成し、ブランドの売上拡大を支援しているという。そうすれば、彼らがBuzzFeedでさらに多くの広告費を使うようになるからだ。しかし、パブリッシャーにとって、いままでほとんどもしくはまったく記事にしたことのないネット直販ブランドに対する関心を集め、そこから利益を上げることは、なかなか難しいようだ。

「なかには、編集記事のように書くことが難しいタイプのブランドや製品もあるのだ」と、プロバス氏は語っている。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)