パブリッシャーはすでに、ようやく開始されたFacebookの「Watch」で流す、スポンサード番組を広告主に売り込もうとしている。たとえば、すでにWatch向けに2番組を公開しているビジネスインサイダー(Business Insider)は、すでにクライアントたちと話を進めているという。
ようやく開始されたFacebookの「Watch」だが、パブリッシャーはすでに、この生まれたての動画視聴プラットフォームで流すスポンサード番組を広告主に売り込もうとしている。
たとえば、ビジネスインサイダー(Business Insider)のライフスタイルブランドであるインサイダー(Insider)は、すでにWatch向けに「ザ・グレート・チーズ・ハント(The Great Cheese Hunt)」と「イッツ・クール・バット・ダズ・イット・ワーク?(It’s Cool, But Does It Really Work?)」の2番組を公開している。そして、広告主が資金を出してWatch環境内で配信する番組の制作について、クライアントたちと話を進めている。
Facebookが資金を出してWatch向けに番組を作らせているほかのパブリッシャーたちも、Watch向け戦略にブランデッド番組が入っていると語る。たとえば、これまでに2番組をWatchで公開しているニュースパブリッシャーのATTNや、Watch向けに6番組の制作を進めているフード動画大手のテイストメイド(Tastemade)だ。
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「クライアントのためにこうした仕事をすること、そして、うちのFacebookシリーズを考案するのに使ったのと同じデータを全部使うことを楽しみにしている」と語ったのは、インサイダーの編集長のニコラス・カールソン氏だ。「うちはすでに市場に出て、クライアントが実際に制作したくなるような素晴らしいシリーズのアイデアについて話をしている」。
あるエージェンシー幹部は、Watchのコンテンツパートナー約10社とブランデッド番組の制作について「より真剣な」話をしたと語った。この幹部によると、いくつかのクライアントがすでにWatch向けブランデッド番組の制作に関心を示しているという。
Facebookの制限はない
一方、Facebookは、パブリッシャーパートナーがWatchでブランデッド番組を流すことを制限する予定がないと認めた。Facebookにしても、Watchを通じて配信される全番組の費用を負担するという長期的な計画など持っていないのだから。Facebookの広報担当者は、Facebookのブランデッドコンテンツタグを使ってスポンサード番組を配信する選択肢がWatchのクリエイターに与えられるという見方を示した。Facebook上のブランデッドコンテンツは現在、広告の時間を設けることができないが、Facebookは限られた数のメディアパートナーとそのテストを進めている。
実際に契約を交わした例はまだないが、Facebookは9月初旬にも米国でWatchの展開を拡大すると見られており、パブリッシャーが広告主を引き込みたがっているのは驚きではない。FacebookはWatch内でミッドロール広告を挿入する予定だが、Facebookが番組制作費を回収するまで、コンテンツパートナーはそこからの売上を見込めないだろう。広告主がお金を出すブランデッド番組は、Watchの環境にそれとは別の収益源をもたらす。
「Facebookでうちと提携したいというパートナーから大きな関心がいまも寄せられている。これに尽きる」と語ったのは、ATTNの共同創設者のマシュー・シーゲル氏だ。ATTNはフォードやHBOといった広告主の仕事をしたことがある。同氏は「それがWatchの妨げになる理由などない」と語った。
収入源の多様化は必須
あるパブリッシャー幹部は、匿名にすることを求めたうえで、いまはFacebookが資金を出している番組について、今後のエピソードに対するスポンサーシップやプロダクトインテグレーションは自分も検討していると語った。すでに資金を出しているWatchの全番組の今後のエピソードにFacebookが資金を出すかどうかははっきりしておらず、この幹部としても、広告主が加わり追加エピソードの費用を引き受ける選択は残しておきたいのだ。
「Facebookが明確にしているのは、セカンドランでは(番組を)どこでも好きなところに売っていいし、ブランドインテグレーションもやっていいということだ」と、シーゲル氏。「うちのセールスチームはその点について積極的に市場で売り込んでいる」。
Facebookは、自身が資金を出した番組の「ファーストラン」の独占配信権――複数の消息筋によると2週間の独占――を持つが、それ以降は、パブリッシャーがそのコンテンツをほかのプラットフォームで配信できる(今年登場するFacebookによるテレビ番組は別で、Facebookが権利をすべて持つことになっている)。
マーケターも前向きな姿勢
しかし、Facebookのオーディエンス規模とプロ制作のコンテンツと広告主が共存できる環境を、Watchが提供することから、広告主たちはブランデッド番組の制作を検討している。
「うちはすでにFacebook、クライアント、および(Watch)パートナーと、(ブランデッド番組の)可能性について話をしている」と語ったのは、大手メディアエージェンシーのMECノースアメリカ(MEC North America)でソーシャル部門を率いるノア・マリン氏だ。「とても魅力的だ。その大きな理由は、Facebookの規模だ。Facebookが(Watchのようなものを)本当にプラットフォーム上で成り立たせたようとしているのなら――とても真剣に考えているのは明らかだが――マーケター側が真剣に捉えない理由があるはずがない。コンテンツを見つけてもらいやすい形で統合するという問題だけだ」と、同氏は語った。
Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)