CNN傘下の動画メディア企業グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story)は、アニメーションが大好きだ。それが高じて同社は、アニメ専門の制作チームを立ち上げた。担当者のベン・ウィトラ氏は、「アニメーションはほかの手法では伝えられないストーリーを語る手段だ」と語る。
CNN傘下の動画メディア企業グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story)は、アニメーションが大好きだ。それが高じて同社は、アニメ専門の制作チームを立ち上げた。
グレート・ビッグ・ストーリーは、CNNが資金を提供した独立子会社。ソーシャルおよびモバイルプラットフォームに向けた、インスピレーションと先鋭性に富んだ動画コンテンツ制作に重点を置いている。40人の同社従業員のうち、アニメーション部門で働くのは6人。同部門は2~3分のアニメーション動画の制作をするとともに、同社が制作するライブアクション動画(実写とアニメを同一画面で合成した動画)のアートとグラフィックのサポートもしている。
アニメーションチームは、平均で月に2~3本のフルアニメーション作品を制作。近いところでは、フォント「Comic Sans」をつくった男や、アタリ(Atari)が開発した映画『E.T.』をテーマにした悪名高きビデオゲーム、「スモークオンザウォーター(Smoke on the Water)」「アメリカンウーマンAmerican Woman」をはじめとするヒット曲の起源などのトピックを取り上げている。通常、フルアニメーション1本の制作には、およそ1カ月かかる。
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アニメーション手法のメリット
グレート・ビッグ・ストーリーでクリエイティブディレクターを務めるベン・ウィトラ氏は、「アニメーションはほかの手法では伝えられないストーリーを語る手段だ」と語る。アニメーション部門を監督するウィトラ氏は、同部門をスタッフ3名のころから育ててきた人物だ。
ウィトラ氏によると、アニメーション部門にスタッフを配属する主な理由のひとつは、それによってグレート・ビッグ・ストーリーが歴史的なトピックを扱えるようになることだという。「対象となる歴史的なトピックの映像がまったく存在しないケースがしばしばあり、ストック写真からでは2~3分の動画を作ることさえも難しい」と同氏は語る。
グレート・ビッグ・ストーリーが注目の人物に対して行うインタビューも、ライブアクションよりアニメーションが選ばれるもうひとつの理由だ。アニメーションなら、取材対象の発言を強調したり、詳細を加えたりできるからだ。
YouTubeにおいて特に効果的
グレート・ビッグ・ストーリーのアニメーション動画は、全プラットフォームを通して平均30万回の視聴回数を獲得していると、同社は説明する。ただし、アニメーションが期待される成果を生んでいるプラットフォームとなると、それはYouTubeだ。同社がYouTubeに投稿するクリップの平均再生率は、全体の70~80%に達している。
グレート・ビッグ・ストーリーが提供してくれたYouTubeの分析データによると、この数字はライブアクション動画のものと異なっている。ライブアクションの場合は、動画の再生開始後、最後まで見ずに途中で離脱する視聴者が次第に増えていく。
「YouTubeのコンテンツに占める割合が圧倒的に高いのは、ライブアクションだ。しかし、ライブアクションの方が、使い捨て感が強いのかもしれない」と、ウィトラ氏は語る。「アニメーションの場合、かなりの時間と労力が注ぎ込まれていることが何となく伝わるため、いったん視聴者が動画をクリックしたら、最後まで観てもらえる」。
Facebookとは相性が悪い
ただし、Facebookとなると話は別だ。グレート・ビッグ・ストーリーは同プラットフォームでもアニメーション動画を配信しているが、視聴者数やエンゲージメントは、YouTubeのそれには及ばない。
「最初の3秒で識別できる顔や対象を探すという行為が習慣化しているプラットフォームでは、ユーザーたちに振り向いてもらうのは難しい」と、ウィトラ氏は語る。「アニメーションでは、最初に関心をもってもらうという壁を突破するのに必要な衝撃や驚きの要因はまず得られない」。
アニメーションの世界でグレート・ビッグ・ストーリーがYouTubeの先に見据えているのは、ストリーミング動画プラットフォームに向けたオリジナル番組の制作だ。
「いま我々は、いろいろな企業と各社のプラットフォーム向けにもっと長尺の動画制作について話し合っており、そのなかには、すでにアニメーションに強いプラットフォームも含まれている」と、ウィトラ氏は語った。
SAHIL PATEL (原文 / 訳:ガリレオ)