アメリカとスカンジナビア諸国のオーディエンスには、動画の好みに関して多くの共通点がある。少なくとも、グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story:以下GBS)の動画についてはそうだ。だからこそ、同社は現在、ヨーロッパ――具体的には北欧とイギリス――に攻勢をかけているのだ。
アメリカとスカンジナビア諸国のオーディエンスには、動画の好みに関して多くの共通点がある。少なくとも、グレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story:以下GBS)の動画についてはそうだ。だからこそ、CNNの独立子会社として2015年に創設され、ソーシャル動画ネットワーク事業を展開する同社は現在、ヨーロッパ――具体的には北欧とイギリス――に攻勢をかけているのだ。
北欧でのビジネスチャンス
GBSは来年、アメリカ国外では初となる活動拠点をスウェーデンのストックホルムに構える予定だ。CNNインターナショナルコマーシャル(CNN International Commercial)の仲介により、スウェーデンでメディア制作を手がけるスタートアップ、ストーリーファイヤー(Storyfire)とのパートナーシップもすでに結んでいる。さらに、CNNロンドンのニュース編集室では、GBSのエディトリアル業務に携わる要員も5名採用されることになっている。
GBSで2016年に話題になった動画、具体的には、「私は飛行機のなかで暮らしている(I Live in an Airplane)」「69歳の高校生(The 69-year-old in high school)」「最後のステップ:本当にグレートビッグなストーリー(Last Steps: The Really Great Big Story)」などの作品は、スカンジナビア諸国のオーディエンスにも称賛された。これらはどれも、文化史や不屈の精神、偉業・ひらめきなどをテーマとする作品だった。
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「これらのコンテンツが北欧で好評を博したことには我々も驚かされた」とCNNデジタルワールドワイド(CNN Digital Worldwide)のゼネラルマネージャー、アンドリュー・モース氏は語る。「そうしたわけで半年前、我々は北欧でのビジネスチャンスに目を向けるようになった。CNNとGBSが焦点を合わせている2大項目は動画とモバイルだが、北欧ほどこれらの最前線にいる市場はほかに思いつかない」。
モバイル視聴の割合が高い
GBSによると、同社は自社のウェブサイトやソーシャルメディアページ(Facebook、Snapchat[スナップチャット]など)を通じて、世界全体で1000万人の視聴者を擁しているという。アナリティクス企業のチューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、GBSの動画は10月、Facebookで6500万回の視聴回数を獲得したという。
CNNによると、同月には北欧諸国で50万人超のユーザーがGBSのコンテンツをFacebookを介して視聴。同社のソーシャルメディアオーディエンス全体の3%を占めたという。GBSは、各マーケットに向けた個別のソーシャルメディアページをまだ整えていないが、来年には、GBS北欧単独のウェブチャンネルとともにサービスを開始する予定だ。
北欧にはデンマークとフィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンが含まれるが、ロイター(Reuters)の調査では、これら国々のどれもが、モバイルによるニュース消費が高い割合を示している。同調査レポートによると、スウェーデン(69%)では、イギリス(50%)やドイツ(40%)よりも多くの人々がスマホを使ってニュースコンテンツにアクセスしているという。
対クリックベイトモンスター
ストーリーファイヤーでプロデューサー/パートナーを務めるヤン・シュアマン氏は、北欧市場は競争が非常に激しく、あらゆる手段を使ってトラフィックを構築しようとする、高級パブリッシャーと新興デジタル企業による戦いも激化していると語る。「私は彼らを、クリックベイト(釣り記事)モンスターと呼んでいる」と同氏。
それに対してCNNは、優れたコンテンツをスマートに配信することで、若年層のオーディエンスを開拓する手法をすでに確立していると、同氏は付け加える。シュアマン氏はこの手法を足掛かりにするつもりだ。手はじめにストーリーファイヤーは、600本の動画からなるGBSアーカイブを掘り返して、どれが再利用・翻訳可能かを確認し、その後、オリジナルコンテンツの制作に移る予定だ。「ゆくゆくは、オリジナルのローカルシリーズを少なくとも週に1作品、制作できればと思っている」と、同氏は付け加える。
パブリッシャーが海外に進出する際には、地元メディアと提携したり、ライセンス契約を結んだりするのが一般的だ。だが、こうした戦術は、とくに言語が異なる場合には、ブランドのトーンとスタイルの維持に困難を伴うものだ。北欧では多数の言語が話されていることを熟知するストーリーファイヤーのチームは、GBS北欧のコンテンツにどの言語を採用するのかに関する詳細をまだ煮詰めていない。
ニュースの現場に近いところ
CNNインターナショナルコマーシャルでコンテンツ販売/パートナーシップ部門のバイスプレジデントを務めるグレッグ・バイチマン氏は、「我々は、自社ブランドに細かな文句をつけるようなマネはしない」と語る。来年1月から最初の半年間は、GBSのスタッフがストーリーファイヤーのチームとともに時間を過ごし、最適なコンテンツに全力で取り組める体制づくりをめざすことになるようだ。
計画では、ロンドンのGBSチームがストーリーファイヤーのチームと密接に連携することになっている。「どこからでも飛行機に乗って世界を網羅できるが、ニュースの現場に近いところにスタッフを一時的に派遣するのであれば、ヨーロッパに拠点を置くチームをもっていたほうが良い」と、バイチマン氏は付け加える。「したがって、ロンドンのチームは北欧に長期滞在する予定だ。そうすればいずれ、GBSのコンテンツがほかのどの国で反響を呼ぶのかもわかるだろう」と同氏は語る。
これまでのところGBSは、広告主向けにブランデッドコンテンツのシリーズを制作することで収益を上げてきた。北欧でも、これが同社のビジネスモデルになる見込みだ。GBSは、アメリカでは法人向けITソリューションを手がけるヒューレット・パッカード・エンタープライズ(Hewlett Packard Enterprise:HPE)、国際的には日本の全日空(ANA)や、韓国ヒュンダイ(Hyundai)傘下の高級自動車ブランド、ジェネシス(Genesis)などの広告主とブランデッド動画で協業してきた。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)