CNNが、シリコンバレー関連のニュースを強化するために、「CNNビジネス(CNN Business)」と呼ばれる新しいビジネスサイトを立ち上げ、「CNNマネー(CNNMoney)」を廃止した。CNNMoneyは、2011年にタイム社(Time Inc.)のマネー(Money)などと共同ではじめたウェブサイトだ。
CNNが、シリコンバレー関連のニュースを強化するために、「CNNビジネス(CNN Business)」と呼ばれる新しいビジネスサイトを立ち上げ、「CNNマネー(CNNMoney)」ブランドを廃止した。CNNMoneyは、2011年にタイム社(Time Inc.)のマネー(Money)やフォーチュン(Fortune)と共同ではじめたウェブサイトだ。
「今回の再編の大きなきっかけは、CNNマネーというブランドが、いまの新しい時代のビジネスニュースをうまく伝えられていないと感じたことだ」と、CNNビジネス担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーとしてサイトの運営に携わるジェイソン・ファーカス氏はいう。「あなたの会社が自動車企業や小売企業、または金融サービス企業だろうと、すべての企業は本質的にテクノロジー企業だといえる。だが、雑誌のマネーは、人々が家計のバランスを保つためのコツやヒントといった内容が中心だ。これでは十分な成果を上げられない」。
CNNマネーとの違い
CNNは、この数年間で200人のデジタル担当スタッフを新たに採用したが、2018年に入って数十人を解雇。対象となったのは、Snapchat(スナップチャット)や仮想現実(VR)チームのスタッフ、それにユーザーに合わせてカスタマイズしたビジネスニュースを配信するアプリ「CNNマネーストリーム(CNN MoneyStream)」の担当者などだ(このアプリはいまも存在するが、ニュースフィードを自動配信する程度の機能しかない)。その一方で、新しいサイトを活性化するため、新たに開設したサンフランシスコ支局で6~8人のスタッフの採用を進めている。この支局はニューヨーク支局に次いで規模が大きく、合わせておよそ70人の編集スタッフが在籍。そのうち、メディアとテクノロジーの分野をカバーしているのは30人だ。
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CNNビジネスでは、新たなセクションやコーナーを設け、テクノロジーとビジネスの分野で著名な人物や企業を取り上げる予定だ。たとえば、メリンダ・ゲイツ氏やFacebookのシェリル・サンドバーグ氏の寄稿記事を掲載するオピニオンセクションや、Amazonの仕組みを詳しく調査した特集などだ。ただし、CNNのアイデンティティともいえるニュース速報に関しては、これまでどおり重視するという。そのため、マーケット関連のニュースをライブストリーミングやライブブログの形で報じる予定だ。ただし、一部の政治がらみの経済ニュースは、ニュースデスクが記事を作成して公開するとファーカス氏は述べている。
一方、CNNマネーが伝えていたような、生活に密着したニュースについては、より所得の高い読者をターゲットにしようとしている。「内容のやさしい個人向けのファイナンス記事は減らしていきたい」と、ファーカス氏はいう。「いままでより所得の高い層を狙うことで、雑誌のマネーの路線から脱却しようとしているのだ。我々は読者の情報源になりたいと考えているが、初心者向けとして展開するつもりはない」。
ほかにはないストーリー
テックビジネスをカバーしているメディアはすでにたくさんある。だが、テクノロジーがそれ以外の分野のビジネスに与える影響を伝えるメディアはないというのが、CNNの主張だ。
「ワイアード(WIRED)、リコード(Recode)、テッククランチ(TechCrunch)などをよく見れば、彼らが主にテクノロジー分野をカバーしていることがわかる」と、ファーカス氏はいう。「NBCやブルームバーグ(Bloomberg)は、最終投資家にとってどのような意味があるのかという観点で取材をしている。しかし我々が取り上げたいのは、テクノロジー以外の業界のビジネスが、テクノロジー業界からどう影響を受けているのかという話だ。これは、ほかのどのメディアも伝えていない魅力的なストーリーだと我々は考えている」。
CNNビジネスでは、テクノロジーや著名なCEOに焦点を当てることで、金融企業やテクノロジー企業、それに高級ブランドの広告主を獲得したい考えだ。サイトの立ち上げにあたり、CNNはフィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)の出資を受けている。
ビジネスモデルの多様化
また、広告以外で利益を上げるための手段を模索している。ほかのデジタルメディア企業と同じく、CNNも売上目標を達成できていないからだ。ファーカス氏によれば、サイトの立ち上げ当初からユーザー課金モデルを構築する予定はないが、いずれはビジネスモデルの多様化に乗り出す計画だという。「まずはオーディエンスの獲得に力を注ぐ。ビジネスモデルを進化させるのはそれからだ」と、フォーカス氏は語った。
複数のメディアバイヤーによれば、CNNマネーはほかのビジネスニュースパブリッシャーから抜きん出た存在ではなかった。したがって、このブランドを捨て去ることは、CNNが自社の位置づけを明確にするのに役立つ可能性があるという。コムスコア(comScore)の調べによると、CNNマネーは8月に2650万ビジターを獲得したが、これはビジネスニュースのカテゴリーで7番目の数であり、ヤフー(Yahoo)とハフポスト(HuffPost)のファイナンスネットワーク、CNBC、ブルームバーグといったサイトの後塵を拝している。
「CNNマネーには限界があった」と、メディアキッチン(The Media Kitchen)のプレジデント、バリー・ロウェンサル氏は指摘する。「企業が名乗る名前には何らかの意味があると思う。CNNビジネスという名前は、その世界観を反映したものだ。一方、CNNマネーという名前は、主要なテーマがビジネスにおける大きな文化的影響ではなく、ビジネスでお金を稼ぐ方法だということを示していた」。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)