「米・テレビ広告主は、売れ残り枠より先行販売枠へ」:オムニコムのキャサリン・サリバン氏

従来型テレビの視聴者数は減少しているかもしれないが、テレビ広告に費やされる資金は必ずしも減少していない。テレビは依然として、広告主にとって多くの顧客にリーチするための非常に効率的な方法だ。

その結果、広告主は、今年のアップフロント(Upfront:アメリカにおけるテレビ広告の先行販売イベント)サイクルにおいて、インベントリ確保のために、過去数年よりもわずかに多くの資金を投じることになりそうだ。というのも、いわゆる「スキャッター(Scatter)」マーケット(アップフロントにおける売れ残り)で、のちに購入するとなると、購入可能枠が減少することになるからだと、オムニコムメディアグループ(Omnicom Media Group)で北米地域の主任投資担当幹部を務めるキャサリン・サリバン氏は言う。

なお、本インタビューは、長さを変えてわかりやすく編集してある。

――アップフロント交渉サイクルの役割は、有意義に変化したか?

従来型テレビの視聴率が下がったため、また、スキャッター枠を実際に購入するのはますます困難になるため、よく注意をしておく必要がある。率直に言って、スキャッター枠を購入したい理由は何だろう? スキャッター枠を利用するうえで、柔軟性のメリットがあっても、そのメリットがスキャッター枠の利用のために支払う実際の価格以上の価値はもはやない。スキャターに投じる資金をアップフロントに費やすように移行しているクライアントが増加しているようだ。そのため、こういった観点から、スキャターに実際に資金を費やしたいなら、そういったことを考えておくことが、重要になるだろう。

――広告主は、テレビの視聴者数が減少していることと照らし合わせると、より少ないものにより多くの資金を投じているとあなたは言ったが、今年のアップフロントにおいても、引き続きこの状態が続くだろうか? あるいは、何らかの方法で、これが中和される機会があるだろうか?

クライアントがオーディエンスのあとを追おうとするほど、つまり、多くのプレミアムなコンテンツがプラットフォーム以外の場所で視聴されることになるということだが、そうなれば、メディア企業はクライアントを消費者が視聴するところへ連れていきやすくなる。こうして、価格高騰を抑えることができるようになるだろう。

――メディア企業の側から見て、クライアントがそういったことをどのように利用しようとしているかという点で、どのように見ているか?

いずれのクライアントも、自社のストリーミングサービスやデジタルアセットについては多くを語っている。これは、大きな推進力だった。企業側は依然として高価なコンテンツを重視しているが、消費者は違った行動をとっている。

――今年のアップフロント予算競争において、テレビネットワークと、大手デジタルプラットフォーム、たとえばHulu(フールー)、YouTube、ロク(Roku)、Amazon、Facebookなどとのあいだの価格平衡の特徴をどのように見ているか?

とりわけ、Huluは、世に出ているなかでも、とてもプレミアムなコンテンツを制作しているため、アップフロントマーケットにはとてもうまく参入した。ほかのいくつかの企業に関しては、これらの企業はまだ着手しはじめたばかりで、顧客が欲しいと思っているプレミアムなコンテンツを実際にそれほど持っていないと思っている。

――それは、オリジナル番組にもっと投資する必要があるということだろうか? あるいは、AmazonやFacebook、YouTube、ロクにどのようなプレミアムなコンテンツを提供してほしいということか?

Huluが多くのオリジナルコンテンツに投資してきたのは確かだ。ほかのいくつかの企業も、もっとそうする必要があった。我々はHuluとはコンタクトをとっているが、それらのほかの企業は、まだこのマーケットプレイスに参入したばかりなので、それほどコンタクトしていない。

――テレビネットワークが、今年はこれまで以上にデジタルインベントリを購入している。これはどのような影響を及ぼすだろうか?

価格高騰が抑止されるだろう。たとえばFOXでオーディエンスのうち40%がプラットフォーム以外の場所で視聴しているとして、その40%のオーディエンスのうち半数が、従来のリニアTVをまったく視聴していないとしたら、そこから移動する必要がある。潜在的なオーディエンスの過半数を失っているということだからだ。過去1年半でそれが実際に起こっている。

――デジタルにおいては、従来のような年齢やジェンダーで分類した購買層へのターゲティングを超えて、オーディエンスのターゲティングが可能だが、これは、特にテレビネットワークにおける資金の割り当て方法にどのような影響を及ぼすだろうか?

オーディエンスに向かって動きはじめ、結果的に購買層から遠ざかると、メディア企業とオーディエンスの両者にとって大きな欲求が生じる。メディア企業は、このタイプの購入モデルへの動きはじめるにつれて、価格高騰を抑えたいと考えるようになるだろうと、私は思う。

――どういった企業がオーディエンスをベースにしたこのモデルに動いていくかという点で、2019年にメディア企業のあいだで特に優れた企業はあったか?

かなり確実に、そうだろうと言えるのは、ターナー(Turner:現ワーナーメディア[WarnerMedia]、Xandrを傘下に持つ)だろう。ドンナ・スペチアーレ氏(ワーナーメディアの広告販売担当統括者)は、「事業成果と購買層」と題したアップフロントに関するプレゼンテーションで、これについて話している。NBCユニバーサル(NBCUniversal)は、同社のオーディエンスターゲティング製品であるアドスマート(AdSmart)を使用して、大きな成果を上げた。私は、ディズニー(Disney)がGoogleを(メディア企業の広告サーバーとして)使用して、協力し、もっとさまざまなことをしようとしていると、いまは見ている。また、バイアコム(Viacom)は、常に良質なツールをいくつか有していた。

――長いあいだ、デジタル企業がテレビ局から広告予算を奪ってしまうのではないかという懸念があった。しかし、テレビ局は自社のデジタルインベントリを持つことにますます関心を示しているため、逆にテレビ局がデジタル企業から広告予算を奪ってしまうということはないだろうか?

よく聞いてほしいが、Hulu現在、ディズニーが経営している。そのため、そこですべてが変わった。そのため、私は、顧客がどんどん取り込まれ、組み合わされ、顧客はディズニーというレンズを通してHuluを視聴するようになると考えている。

――今年は、AT&Tタイムワーナー(AT&T- Time Warner)とディズニーABC(Disney ABC)の提携後初のアップフロントである。2018年はディスカバリー(Discovery)がスクリップス(Scripps)を買収した。同社は同年をこの合併を実際に生かすことができる年であると強調しているようだ。これらの大型買収がこのアップフロントで広告主に及ぼす影響は、これまでどのようなもので、これからどうなっていくと思うか?

これらの企業はすべて、まさにこの時点において規模を再度拡大しようとしている。しかし、それらの企業が統合を非常に迅速にうまくやってのけたからといって、特に変わることはないと、私はいま、クライアントに話している。そのため、私はこれらの企業が一連の統合をこんなにも速く実現したことに敬意を表する。これまでのところ、非常にうまくいっている。

――概算によると、テレビの視聴者数は減少しているが、広告主がアップフロントに費やす合計費用は、毎年、前年比で増えているという。今年もそれが当てはまるか?

わずかに上昇したようだが、私は、スキャッター枠への投資が減ったとも見ている。つまり、企業は資金の用途をアップフロントに変更しているだけだと考えている。数年前とは違った見方でマーケットプレイスを見る必要がある。

――過去数年とは違った見方で今年の資金の動きを見るうえで、ほかに方法はあるだろうか?

資金の用途をアップフロントに移動させており、スキャッター枠への投資が減少しているなら、自社の販売広告がどのように見られる必要があるかについて、これまでとは違った仮定をし、アップフロント対スキャッターとしてではなく、52週間(市場)として見る必要がある。

――デジタル企業を含めた場合は、どうなるだろうか? テレビ局の資金がスキャッター市場からアップフロント市場へますます流れるようになっているが、デジタルプラットフォームあるいは個別のパブリッシャーへも含めて、資金の流れに変化を与えるだろうか?

いや、私は、そこに大きな変化はないと強く思う。断じてないだろう。

Tim Peterson(原文 / 訳:Conyac