ポッドキャスト にも増えてきた「トラフィック水増し」: アイルランドの JOE.ie の事例

金があるデジタルの世界では、詐欺も多い。

アイルランドの若い男性向けニュースサイト、JOE.ieの親会社であるマキシマム・メディア(Maximum Media)は11月下旬、アライド・アイリッシュ銀行(Allied Irish Banks:以下、AIB)がスポンサーを務めていた、提供を終了したビジネス関連ポッドキャスト「キャピタルB(The Capital B)」のエピソードの視聴回数を、2017年にクリックファームを利用して水増ししたして、アイルランドで非難を浴びた。AIBのエージェンシーで、スターコム(Starcom)の一部門であるコア(Core)は、マキシマム・メディアを使ったキャンペーンの展開をアイルランドで中止した

JOE.ieのケースの実態

インタラクティブ広告協会(IAB)は、この件について話し合い、懸念を示す声明を発表した。マキシマム・メディアによると、内部調査で、同社が許可していない単発的な出来事であることがわかったという。昨年、オーディオ分野においては、クリックファームを利用し、レビューを残すアカウントを通じてAppleの「iTunes」ランキングでポッドキャストの順位が操作された。マキシマム・メディアのケースでは、「サウンドクラウド(Soundcloud)」に公開されたポッドキャストのエピソードの視聴回数が、一夜のうちに3000回から2万1000回に急増したとされている。

ポッドキャストでは、広告主がスポット広告やホストリード広告、スポンサーシップまたはブランデッドポッドキャストを流せる。ブランデッドポッドキャストは、1カ月当たりの視聴回数が1万~10万回に達する場合もあると、メディアコム(Mediacom)のコマーシャルトレーディングパートナーであるチャーリー・イェイツ氏は語る。こういった広告は、5万ポンド(約714万円)~25万ポンド(約3572万円)の費用が掛かることもあると、イェイツ氏は付け加えた。

「ライブでの視聴は曖昧で散発的であり、その場かぎりだ。保証された一定回数の視聴を確保するには、50回のメンションを要するかもしれない。広告主が気に掛けているのはひとえに、オーディエンスへのリーチだ。それは大量のリーチではなく適切なリーチだ」とイェイツ氏は指摘する。

ポッドキャストの将来性

詐欺的なファームや偽のアカウント、クロスポストの運用には、高度な技術はあまり必要ない。経済的影響の算定は厄介だ。アイルランドでは、2018年にIABとPwC(PricewaterhouseCoopers)が行ったオンライン広告支出に関する調査で、200万ユーロ(約2億4048万円)が(ポッドキャストを含む)デジタルオーディオ広告に支出されたと算定されている。英国では、エージェンシー関係者が、国内のポッドキャスト広告への支出額は1000万ポンド(約14億2875万円)だと推定している。ちなみに、IABとPwCの調査によると、米国では、2018年のポッドキャスト広告への支出総額は4億7900万ドル(約520億円)だったという。

チャンネルとしてポッドキャストは成長しているが、測定やレポーティングの機能が標準以下のため、比較的大手のブランドは、それらが十分に運用・テストされていないポッドキャストに投入する広告予算の増額を手控えている。ブランドにとって安全で、かつ詐欺が行われない環境を保てるどうかで、ポッドキャスティングの将来性が決まる。

「ポッドキャスティングの商業面は、オーディエンスのエンゲージメントと同じペースで成熟しているようには感じられない」と、ハバス・メディア(Havas Media)のジャンプ(Jump)担当マネージングディレクターを務めるニック・ライト氏はいう。「ポッドキャスト制作の視点からは理解しがたい。商業化はかなりわかりにくい場合がある」。

大手は別次元の安心感

Spotify(スポティファイ)やエーキャスト(Acast)、DAXといった主要なポッドキャストプラットフォームは、広告主向けに別次元の安心感を付加する、独自のネットワークを運営している。

「パブリッシャーレベルでモニタリングして、前月のパフォーマンスに関して可視性を持たせていれば、誤る余地は少なくなる。パブリッシャーが一夜にして規模を3倍にすれば、そうしたきめ細かな詳細から、単発の問題だとわかる」と、ユニバーサル・マッキャン(Universal McCann)で、クライアントディレクターを務めるローレンス・ドッズ氏は語った。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)