契約維持にフォーカスしはじめた、欧州パブリッシャーたち:「リテンションこそが重要戦略要素だ」

ドイツのメディア企業であるアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)のレポートによれば、欧州のパブリッシャーはサブスクリプション登録者の獲得戦略に自信を深め、リテンションを今年の優先課題としている。一方、プラットフォームからの支援に対する彼らの満足度は低下している。

有料コンテンツ戦略に関するこの調査には、34のパブリッシャーが参加した。ガーディアン(The Guardian)、フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)、フィガロ(Le Figaro)、シブステッド(Schibsted)、アクセル・シュプリンガー傘下のビルト(Bild)、ビジネスインサイダー(Business Insider)に加え、米国のウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などだ。結果は、今年2月6~7日にドイツで開催された、アクセル・シュプリンガー主催の第6回ペイドコンテンツサミットで発表された。そのため、当然ながら有料コンテンツサービスのあるパブリッシャーが対象となっている。

新しい重要戦略要素

「昨年1年で有料サブスクリプションビジネスがますます成熟し発展したことで、市場のどのパブリッシャーにとっても、リテンションが重要戦略要素になっている」と、アクセル・シュプリンガーの国内デジタルニュースメディア部門でマネージングディレクターを務める、ステファン・ベッツォルト氏はいう。同社のビルト・プラス(Bild Plus)とベルト・プラス(Welt Plus)は、いずれもフリーミアムモデルで運営されており、昨年10月にデジタル購読者の合計が50万人を突破した。うち40万人はビルトの読者だ。

ベッツォルト氏は、パブリッシャーごとの測定方法の違いを理由に、ビルトのリテンション率を明かさず、これについて他社から不満が出ている。ただし、同氏によれば、ビルトの購読者の継続期間は、デスクトップまたはモバイルサイトからの登録の場合は約12カ月で、アプリ経由の場合はより長いという。

パブリッシャーの昨年の回答では、解約の抑制の重要度は4番目だったが、今年の優先順位では2位に上昇した。

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自社サイトがCVの要

プレミアムコンテンツを有料で提供することは、ますます肯定的に受け止められるようになっている。レポートによれば、デジタルコンテンツに進んで料金を払う人は増えていると答えたパブリッシャーが79%にのぼった(昨年の回答では70%だった)。また、有料会員からの売上が、ネイティブ広告やディスプレイ広告を抑え、今年もっとも重要な収入源になるという回答が過半数だった。

コンバージョン率がもっとも高かったのは、自社で所有・運営するプラットフォームだった。読者はそのパブリッシャーをわざわざ探した、あるいはすでに馴染みがあったなど、複数の理由でこうしたプラットフォームを利用していることが多かった。仏紙フィガロや、ノルウェーのアメディア(Amedia)はこうした点を強調しており、後者はコンバージョンの9割がデジタル刊行物を通じてのものだったとしている。

フィガロのデジタル有料購読者は11万人を超えるが、ホームページのコンバージョン率は1%に満たない。フィガロのニュース部門副主任を務めるベルトラン・ジエ氏によると、昨年12月のユニークユーザーは2300万人だった。

プラットフォームへの失望

レポートによると、プラットフォームからの支援に満足しているパブリッシャーは、昨年と比べて減少している。

「残念ながら、プラットフォームからの新規加入は多くない。割合にするとごくわずかだ」と、ジエ氏はいう。ただし、同氏によれば、フィガロはSubscribe with Googleや、Facebookのインスタント記事を利用したサブスクリプションプロダクトは利用していない(前者については現在交渉中だという)。「我々のせいかもしれないし、データやサブスクリプションサービスが適切でないのかもしれないが、率直に言ってうまくいっていない」。

レポートでは、Google、Facebook、Apple、Youtube、Amazonについて、それぞれ自社の有料コンテンツ戦略にどれだけ協力的で、どれだけ重要かをパブリッシャーが評価した。ほとんどのプラットフォームは、どちらのスコアでも前年を下回った(YouTubeは昨年は質問の対象外だった。またAppleは、重要性で昨年のスコアをわずかに上回った)。

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自社プラットフォームに加えて、フィガロはApple App Storeでも新規有料購読者を獲得している(フランスはAppleニュースのサービス対象外だ)。その他のパブリッシャーも同様の不満を口にしているが、Appleはこれに関してデータを公開していない。

有料コンテンツの可視性

「パブリッシャーがインスタント記事のサブスクリプションに満足しているという話は聞いたことがない」と、ジエ氏はいう。読み込みの速さが売りのFacebookの同機能に、彼は以前から反対していた。彼が引き合いに出したあるパブリッシャーは、2017年後半にインスタント記事でプロダクトをリリースしてから、獲得できた有料購読者が1万人に満たないという。

本記事の執筆に際し、Facebookにコメントを求めたところ、同社はアルファテストでサプスクリプション購読率が平均17%増加したという、2018年4月のデータを提示した。FacebookとGoogleのサブスクリプションプロダクトは、以前からパブリッシャーのあいだで賛否両論だった。それでも両者は、サブスクリプションに関してパブリッシャーにもっとも協力的なプラットフォームだ。

ベッツォルト氏は、GoogleとFacebookの取り組みを評価しつつ、彼らにプロダクトへのサインアップ機能を追加する以上の努力を求める。

「これら米国のプラットフォームを通じたフリーミアム購読者獲得においては、単なるコンバージョンファネルの最適化だけでなく、検索結果やニュースフィードのなかで有料コンテンツの可視性を高めることが重要だ」と、ベッツォルト氏はいう。「現時点では、有料コンテンツ、とりわけフリーミアムモデルのコンテンツは、無料コンテンツに比べて可視性の面で不当に低く扱われている」。

「読者が受け取る価値こそ」

パブリッシャーは過去の苦い経験を通じ、事業目標の達成にプラットフォームをあてにしてはならないと学んだ。最初からそうするべきではなかったのだ。いまでは、彼らはより現実的に、プラットフォームがサブスクリプション事業の成長にどんな役割を果たしうるかを検討している。より具体的には、たいていマーケティング費の使途が問題になる。1日に約2000記事を公開するアメディアの場合、Facebookのコミュニティ機能が、読者とのコミュニケーションや、読者が見落としている関連記事の提示に役立っている。

「我々が注目しているのは、リテンション目的のFacebookの利用だ。このような利用はブランドに対しても、読者がサブスクリプションサービスから得る価値に対しても、脅威にならない」と、アメディアのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるポール・ネドレゴッテン氏はいう。「読者が受け取る価値こそが核心だ。それを失えば、我々の将来の見通しには暗雲が立ち込めるだろう」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)