ベライゾン・メディア(Verizon Media)とメディア事業の買収合意に至った、プライベート・エクイティ・ファンドのアポロ・グローバルマネージメント(Apollo Global Management) は、メディア企業の成長や再生の支援を行うことで知られている。同社がいかに建て直していくのか要点をまとめた。
ベライゾン・メディア(Verizon Media、以下ベライゾン) のCEOはこれまで、本業の通信事業との相乗効果が薄いことからメディア事業を手放すことを決め、売却先を探していた。
そして買収合意に至った新たな親会社、プライベート・エクイティ・ファンドのアポロ・グローバルマネージメント(Apollo Global Management、以下アポロ) は、メディア企業の成長や再生の支援を行うことで知られている。サードパーティCookie終了が間近に迫るなか、同社がアドテクインフラを活用して、米ヤフーやAOLなどのメディア資産を持つベライゾンをいかに建て直していくのか。
本ニュースの要点
- アポロは50億ドル(約5400億円)でベライゾンを買収した。アポロはベライゾンに現金42億5000万ドル(約4600億円)、メディア事業の権益7億5000万ドル(約810億円)相当を提供する。また、リブランディングされた事業会社の米ヤフー(Yahoo)の株式の10%も取得する。
- ベライゾンのCEO、グル・ガウラッパン氏は米ヤフーのCEOに就任する。
- 世界中で毎月約9億人にリーチする米ヤフー(ベライゾン)は、プラットフォーム展開していない企業として最大規模となる。
半額の「お値打ち価格」
ベライゾンの売却価格に、アナリストたちは驚きをかくせなかった。かつてAOLおよび米ヤフーを合計89億ドル(約9700億円)で買収し、2018年にはメディア事業で46億円の減損を計上したことで知られているベライゾンだが、それでもその収益額は莫大だ。2020年第4四半期だけでも23億ドル(約2500億円)、通年で約70億ドル(約7600億円)の収益となっている。
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とはいえ黒字化に苦労していたのも事実で、エドワード・ジョーンズ(Edward Jones)のシニアエクイティアナリストのデイブ・ヘガー氏は、「ベライゾンの売却額が年間収益を下回ったのも、この点が大きい」と分析する。
メディア業界において、ベライゾンがこれほどの事業規模を誇っているのは優れた基盤があることの証左だが、大規模な投資が必要なためにプライベート・エクイティ・ファンドによる買収につながったと考えられている。「事業譲渡や合併について、従来のメディア企業からはメリットがあるとは目されていなかった」とヘガー氏は指摘する。
拡大し続けるポートフォリオの新たな屋台骨に
メディア事業における苦戦が話題になった米ヤフーだが、プログラマティック広告となると話は一転、まさに好調だ。サードパーティCookie問題に備える広告バイヤーらの間で、米ヤフーのDSPは「GoogleとAmazonに次ぐ存在」とされている。2020年第4四半期の収益は43%増となっており、1年を通じて新たな提携が次々と発表された。
成功の背景にあるのが、代替となる識別子の「ConnectID」だ。代替識別子の候補はたくさんあるが、「唯一のパブリッシャー主導の識別子」というほかにはない強みを持つ。そして今回の買収に伴い、さらに多くの大手メディア企業が検討する可能性があるだろう。アポロの傘下にはリニア・デジタルニュースのコックスメディアグループ(Cox Media Group)もある。2020年の収益は43億ドル(約4700億円)という大手ブランドだ(米大手信用調査会社のダン・アンド・ブラッドストリート[Dun & Bradstreet estimates]調べ)。
また、ガネット(Gannett)によるConnectID導入の可能性も十分にあるだろう。アポロは、2019年にニュー・メディア・インベストメント・グループ(New Media Investment Group)とガネットの合併に際し、18億ドル(2000億円)の融資を行った。その利率は11.5%となっており、ガネットにとって収益拡大は必須課題となっている。実際、USAトゥデイ(USA Today)最高執行責任者のマイケル・クンツ氏は、4月末に行われた米DIGIDAYのインタビューでガネットがConnectIDの導入を検討していると話している。
[原文:Cheat Sheet: What Yahoo offers Apollo Global Management]
MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
ILLUSTRATION BY IVY LIU