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米パブリッシャー、FacebookやGoogleと団体交渉が可能に : 新法案「ジャーナリズムの競争と保護に関する法律」の要点まとめ

ニュースパブリッシャーが共同でGoogleおよびFacebookと交渉することを許可する法案が、3月10日に米上院および下院に再提出された。これまでも一部パブリッシャーが要求してきた内容だが、今回はより有利なタイミングでの提出となった。現在、GoogleとFacebookはオーストラリアでメディアへの支払いについて議員から追求されているほか、米政府やテキサス州、英国などから独占禁止法への抵触を疑われている

法案のポイント

  • 共同交渉は通常であれば独禁法に抵触するおそれがあるが、今回の法案が通過すればそのリスクを排除できる。有効期限は、法律の制定から4年間だ。
  • この法案が初めて登場したのは2019年だが、今回は超党派の支持を得ている。中心人物の1人が、上院議員のエイミー・クロブシャー氏だ。新聞記者の娘として生まれたクロブシャー氏は、競争・独禁・消費者権利に関する上院小委員会の議長を務め、「反トラスト改革の旗手」とも呼ばれている。さらに上院議員のジョン・ケネディー氏(ルイジアナ州、共和党)やデビッド・シシリン氏(ロードアイランド州、民主党)、ケン・バック氏(ニューヨーク州、共和党)なども超党派のタッグを組んでいる。
  • 今回の法案では、「業界全体の利益」となる場合にのみ価格交渉が認められる。逆に言えば、一部パブリッシャーのみの利益となる場合や、ほかのパブリッシャーの排除につながる場合は認められない。
  • 法案の内容は基本的に2019年版と変わらないが、ひとつ変わった点がある。対象の「ニュースコンテンツの制作に携わるデジタル・非デジタルのパブリッシャー」に、今回新たにテレビ、ラジオなどのメディアも含まれるようになったことだ。

法案に勢いがある理由

現時点で、法案可決の見通しを断言するのは時期尚早だ。ただでもGoogleとFacebookのロビー活動は強力なのに加えて、このコロナ禍だ。優先度が高い、差し迫った問題も山積している。だが今回、法案が超党派の支持を得ていることは大きな意味を持つ。そして何より、勢いがある。今の広告市場でGoogleとFacebookが有する圧倒的な影響力、そして虚偽情報の拡散につながる巨大プラットフォーマーが市場を独占している状態を抑制したいという思いは民主党も共和党も同じだ。

共和党上院議員のケネディー氏は、法案に関する声明のなかで「GoogleおよびFacebookはもはや企業でなく、国に匹敵する存在だ。許容してはならない」と言い切っている。

この発言ついて米DIGIDAYが両社に問い合わせたものの、Facebookは回答を拒否した。Googleも回答を避けたが、ブログ記事でニュースパブリッシャーへの支援を表明している。

Googleでパブリックポリシーディレクターを務めていたアダム・コバセビック氏は3月1日、ニュースパブリッシャーの業界団体ニュースメディアアライアンス(News Media Alliance)の団体交渉支援についてツイートしており、プラットフォーマー側が法案をどう捉えているかを示唆している。

団体交渉について、パブリッシャーの評価はさまざま

Googleのニュース担当バイスプレジデント、リチャード・ジングラス氏は3月1日に、米DIGIDAYとのインタビューの中で「率直に言って、パブリッシャーは1対1で交渉するのが得意なように見受ける。つまり個人交渉」と話す

一部のパブリッシャー幹部も1対1の交渉を好むところがあると認めつつ、それでも団体交渉への支持を表明している。ダルース・ニュース・トリビューン(Duluth News Tribune)の編集部は3月11日の論評で新法案への支持を表明し、その理由を次のように明かす。「本紙を保有するフォーラム・コミュニケーションズ(Forum Communications)、そしてダコタ州やミネソタ州の多くのパブリッシャーはGoogleやFacebookと公平な交渉を行えない状況にある」。

2019年版の法案も、複数のニュースメディアグループから支持を得ていた。たとえばガネット(Gannett)のUSAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)のプレジデント、マリベル・ワズワース氏もパブリッシャーによる団体交渉への支持を表明した。

オーストラリアでの出来事が大きな意味を持つ

先程述べたように、今回の法案再提出の背景にはGoogleやFacebookへの反発という時流がある。しかし再提出自体の引き金となったのは、オーストラリア政府と両社との対立と言って良いだろう。

オーストラリアでは、両社のプラットフォームでニュースメディアのコンテンツを取り上げた場合、パブリッシャーに報酬を支払うことを求める法案が提出された。これに従わない場合、オーストラリアにおける事業の一部を停止するという警告がなされ、実際にFacebookの一部業務が停止している。さらに法案の可決も手伝って、Facebookはオーストラリアにおけるパブリッシャーのコンテンツ配信を停止するという当初の決定を撤回し、またGoogleはニューズコープ(News Corp)などのパブリッシャーに報酬を支払うことで、オーストラリアで検索関連の商品を提供しつづけることになった。

3月11日に上院で開かれた反トラスト小委員会の公聴会で、クロブシャー氏はオーストラリアにおけるこの騒動について言及し、次のように述べる。「オーストラリア政府は、Googleが検索結果にリンクや記事の抜粋を表示した場合、パブリッシャーに報酬を支払うよう求めた。これに対し、Googleは検索サービスを停止すると脅したのだ。

一企業が国全体に対し、このような脅しをかける。これはまさに独占企業のおごりにほかならない」。

[原文:Cheat sheet: How the Journalism Competition Bill would allow publishers in the U.S. to collectively bargain with Facebook and Google

KATE KAYE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU