オープンAI(OpenAI)のChatGPTが誕生して以来、パブリッシャーは検索結果から得られる参照トラフィックが減少する可能性に懸念を示してきた。ジェネレーティブAIを利用したこのチャットボットには、ソースを引用せずに […]
オープンAI(OpenAI)のChatGPTが誕生して以来、パブリッシャーは検索結果から得られる参照トラフィックが減少する可能性に懸念を示してきた。ジェネレーティブAIを利用したこのチャットボットには、ソースを引用せずに情報を提供する能力が備わっているからだ。
もっとも、ChatGPTは2021年9月までのデータにしかアクセスできなかったため、トラフィックへのChatGPTの影響を減らしたいパブリッシャーには、リアルタイムの情報や速報を提供できるという優位性があった。だが、これも終わりだ。
オープンAIは9月27日、ChatGPTがインターネット上のコンテンツにリアルタイムでアクセスできるようになったことを発表した。いまのところ、この機能はChatGPTの有料ユーザーに限定されているが、「近いうちにすべてのユーザーに拡大される」と、オープンAIはXへの投稿で述べている。
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今回のアップデートに驚きはない
ChatGPTユーザーがこのツールを使ってネットサーフィンしながら情報を入手できるようになった今、おそらくチャットボットがリアルタイムデータを使用していなかったおかげで検索からの参照トラフィックが減少していなかった一部のパブリッシャーが、この問題の深刻さに再び目を向けている。
「トラフィックに関する問題の緊急性が高まったのは間違いない。新たな開発が行われるたびに緊急性は増していく。その開発が、以前からよく見られるユーザー行動に基づいて行われた場合はなおさらだ」と、匿名を希望したあるパブリッシャー幹部は語る。
とはいえ、ChatGPTのアップデートを受けて次に何をすべきか、明確な答えはない。「まだよくわからない。判断するには早すぎる」と、この幹部はいう。
今回のアップデートを紹介したデモ動画を見ると、ChatGPTは「通勤用自転車の最新のレビュー」に関するプロンプトに回答した後、詳しい情報が得られる情報源へのリンクを表示していた。つまり、曲がりなりにもソースの引用はしているようだ。
「AI企業がパブリッシャーのメディアをソースとして紹介しているのはよいことだと思う。彼らにはこうした取り組みを続けてもらいたい」と、やはり匿名を求めた2人目のパブリッシャー幹部はいう。オープンAIがChatGPTのベータ版で数カ月前からウェブブラウジングのテストをしていたことを考えれば、今回のアップデートに驚きはないと、この幹部は指摘した。
「判断するにはまだ早すぎる」
2人目のパブリッシャー幹部によれば、AIチャットボットの台頭によるトラフィックの減少はやはり見られていないようだ。ただし、ChatGPTの最新のアップデートが影響をもたらすかどうか「判断するにはまだ早すぎる」と、同氏は指摘する。
「私たちが大きな注意を払っていることは間違いない」とこの幹部は述べつつ、次のように語った。「誰かが指をパチンとならせば、あらゆる人々が一斉にChatGPTに向かい、誰もGoogleを使わなくなるようなことにはならないと思う。当面のあいだ、そのような考え方はやや大げさだといえるだろう」。
1人目のパブリッシャー幹部も、現時点でトラフィックの減少は見られていないという。「実際に影響が見られるのはもう少し先になると思うが、間違いなくそうなるだろう」と、この幹部は話す。
アリーナ・グループ(Arena Group)の広報担当者は、AIがトラフィックに及ぼす影響についてコメントするには、「もっと多くのデータが集まるまで待つ」必要があると語った。
ガネット(Gannett)の広報担当者も「この分野の監視を続けているところだ」と述べ、詳しいコメントは避けている。
IACでCFO兼COOを務めるクリストファー・ハルビン氏も、8月9日に開催された決算説明会で、「いまのところ当社のコンテンツでトラフィックの損失は見られていない」と述べていた。米DIGIDAYは9月下旬、同社の広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られていない。
ChatGPTよりGoogleに懸念
やはり匿名を希望した3人目のパブリッシャー幹部は、オープンAIがこれまで行ってきた取り組みよりも、Googleがテストしている取り組みへの懸念のほうが大きいという。なぜならば、彼らのプラットフォームには、膨大な数のユーザーが存在しているからだ(月間ユーザー数はGoogleが数十億人なのに対し、ChatGPTは数百万人)。
3人目の幹部はその例として、Googleの検索機能テスト部門であるSearch Labsの試験運用サービスを挙げた。とりわけ懸念を示したのは、AIによって生成された要約がGoogleの検索結果のトップに表示される「生成AIによる検索体験(SGE)」のデモだ。SGEでは、ユーザーが情報を検索しようとプロンプトを入力すると、スニペットとソースへのリンクが最初に表示されるが、AIで生成された複数の段落から成る回答文が表示され、その後さらに詳細を知るためのリンクが表示される。
この新しい体験が実用化されれば、「パブリッシャーへのオンライントラフィックは大幅に減少するだろう。そうなれば、広告やサブスクリプションなど、さまざまな収益に影響が及ぶはずだ」と、この幹部は述べ、「これはとても大きな問題だと思う」と語った。
[原文:ChatGPT’s latest update fuels publishers’ concerns about AI chatbots siphoning traffic]
Sara Guaglione(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)