- メタのグローバルメディアパートナーシップ責任者だったキャンベル・ブラウン氏が退社。同氏の退任は、デジタルメディアエコシステムの変化を象徴する出来事として捉えられている。
- ブラウン氏のリーダーシップ下で、メタとパブリッシャー間の関係は強化され、コミュニケーションが向上。しかし、テクノロジーやアルゴリズムに関する透明性は不足していたとの指摘も。
- パブリッシャー側からは、メタのアプローチや意識の変化を早くから予見できていたはずなのに、十分な対応を取れなかったパブリッシャー自身の責任を問う声も。
Facebookで最も著名なパブリッシャー担当者が同社を去るというニュースは、5年前ならデジタルメディアのエコシステムに激震を与えたことだろう。
しかし、キャンベル・ブラウン氏が、7年近く務めたメタ(Meta)のグローバルメディアパートナーシップ責任者の地位から今秋退くと発表したことは、時代の流れを示すものであり、パブリッシャーたちは、両肩をすくめ「仕方がない」というような反応を示した。
本記事のために米DIGIDAYがインタビューした4人のパブリッシャー幹部は、ブラウン氏の退社は、Facebookとパブリッシャーとのかつての(少なくとも金銭的に)約束された関係にとどめを刺すようなものだと見ている。
これを、巨大テック企業とメディア企業との意識的な別離と呼ぼう。
別離は「驚くべきこと」ではない
あるパブリッシャー幹部は「ソーシャルプラットフォームの目標は、そのプラットフォームでより多くの時間を過ごしてもらうことだ(中略)10年前にさかのぼれば、Facebookが軸足を動画に移そうとした悪名高い計画があったが、これは彼らが動画を優先しようとした最初の兆候だった(中略)こうした兆候は長いあいだずっとあった」と話す。本記事のためにインタビューに応じた幹部は全員、匿名を条件に率直な意見を語ってくれた。
CNNの元キャスターの退社が喧騒を伴わず粛々と受け入れられたのは、パブリッシャーがこうなることを予見していたからだろう。Facebookからの参照トラフィックは、少なくとも2021年以降減少傾向にあり、2023年5月以降は悪化の一途をたどっている。参照トラフィックを減少させているFacebookのアルゴリズムの「バグ」とされるものが、4カ月経ったいまでも解消されず、これもFacebookが現時点でパブリッシャーを優先していないことの一例だと、別のパブリッシャー幹部は言う。記事掲載時間前にメタにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
「Facebookがパブリッシャーのサポートから手を引いていることに驚いている人には、『冗談だろう?』と言いたい」と3人目の幹部は話す。
ほんの数年前まで、Facebookはパブリッシャーに数百万ドルを支払い、コンテンツをFacebookのキュレートされたニュース(News)タブに表示させていた。Facebookは、読者をFacebookアプリに留める一方で、パブリッシャーがコンテンツを収益化できるように、読み込みの速いモバイル記事機能「インスタント記事(Instant Articles)」を構築した。
しかし、いまではそれもすべてなくなった。Facebookは2022年、パブリッシャーへの支払いを停止し、2023年初めにインスタント記事を終了した。この決定は、選挙妨害から、大手テック企業からパブリッシャーへの支払いを求めているオーストラリア、欧州、カナダの規制当局の圧力まで、Facebookが直面する様々な論争が複雑に絡んで、後押しされた結果だ。
ブラウン氏をめぐる論争や、Facebookとメディア企業のあいだの連絡役としての同氏の役割にもかかわらず、パブリッシャー幹部たちは、Facebookからの収益やトラフィックが減少していることについて、ブラウン氏やそのチームを非難していないとDIGIDAYに語った。[続きを読む]
- メタのグローバルメディアパートナーシップ責任者だったキャンベル・ブラウン氏が退社。同氏の退任は、デジタルメディアエコシステムの変化を象徴する出来事として捉えられている。
- ブラウン氏のリーダーシップ下で、メタとパブリッシャー間の関係は強化され、コミュニケーションが向上。しかし、テクノロジーやアルゴリズムに関する透明性は不足していたとの指摘も。
- パブリッシャー側からは、メタのアプローチや意識の変化を早くから予見できていたはずなのに、十分な対応を取れなかったパブリッシャー自身の責任を問う声も。
Facebookで最も著名なパブリッシャー担当者が同社を去るというニュースは、5年前ならデジタルメディアのエコシステムに激震を与えたことだろう。
しかし、キャンベル・ブラウン氏が、7年近く務めたメタ(Meta)のグローバルメディアパートナーシップ責任者の地位から今秋退くと発表したことは、時代の流れを示すものであり、パブリッシャーたちは、両肩をすくめ「仕方がない」というような反応を示した。
Advertisement
本記事のために米DIGIDAYがインタビューした4人のパブリッシャー幹部は、ブラウン氏の退社は、Facebookとパブリッシャーとのかつての(少なくとも金銭的に)約束された関係にとどめを刺すようなものだと見ている。
これを、巨大テック企業とメディア企業との意識的な別離と呼ぼう。
別離は「驚くべきこと」ではない
あるパブリッシャー幹部は「ソーシャルプラットフォームの目標は、そのプラットフォームでより多くの時間を過ごしてもらうことだ(中略)10年前にさかのぼれば、Facebookが軸足を動画に移そうとした悪名高い計画があったが、これは彼らが動画を優先しようとした最初の兆候だった(中略)こうした兆候は長いあいだずっとあった」と話す。本記事のためにインタビューに応じた幹部は全員、匿名を条件に率直な意見を語ってくれた。
CNNの元キャスターの退社が喧騒を伴わず粛々と受け入れられたのは、パブリッシャーがこうなることを予見していたからだろう。Facebookからの参照トラフィックは、少なくとも2021年以降減少傾向にあり、2023年5月以降は悪化の一途をたどっている。参照トラフィックを減少させているFacebookのアルゴリズムの「バグ」とされるものが、4カ月経ったいまでも解消されず、これもFacebookが現時点でパブリッシャーを優先していないことの一例だと、別のパブリッシャー幹部は言う。記事掲載時間前にメタにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
「Facebookがパブリッシャーのサポートから手を引いていることに驚いている人には、『冗談だろう?』と言いたい」と3人目の幹部は話す。
ほんの数年前まで、Facebookはパブリッシャーに数百万ドルを支払い、コンテンツをFacebookのキュレートされたニュース(News)タブに表示させていた。Facebookは、読者をFacebookアプリに留める一方で、パブリッシャーがコンテンツを収益化できるように、読み込みの速いモバイル記事機能「インスタント記事(Instant Articles)」を構築した。
しかし、いまではそれもすべてなくなった。Facebookは2022年、パブリッシャーへの支払いを停止し、2023年初めにインスタント記事を終了した。この決定は、選挙妨害から、大手テック企業からパブリッシャーへの支払いを求めているオーストラリア、欧州、カナダの規制当局の圧力まで、Facebookが直面する様々な論争が複雑に絡んで、後押しされた結果だ。
ブラウン氏をめぐる論争や、Facebookとメディア企業のあいだの連絡役としての同氏の役割にもかかわらず、パブリッシャー幹部たちは、Facebookからの収益やトラフィックが減少していることについて、ブラウン氏やそのチームを非難していないとDIGIDAYに語った。
責任の観点からいえばパブリッシャーのアプローチ不足も
「ブラウン氏が就任する前は、パブリッシャーがFacebookから答えを得るのは非常に困難だった。ブラウン氏は、答えを提供し、支援を提供し、人々を心地よくさせることができるチームを作り上げ、多くのパブリッシャー、そして多くのニッチなパブリッシャーに役立つ製品を開発した。Facebook社内で起きたいくつかの不手際が、同氏の地位を低下させることになった」と2人目の幹部は語る。
「Facebookは多くの批判を受けるに値するが、私はいつも(ブラウン氏と)彼女のチームが本当に役立っていると思っていたし、彼らはニュースパブリッシャーに実際に役立つ多くのプロジェクトを成し遂げてきた」と4人目のパブリッシャー幹部は語る。「いまのように崩壊していくのを見るのは残念だ」
しかし、結局のところ、Facebookは依然として、自社サイトへのソーシャル参照トラフィックの最大の誘導役だ、とパブリッシャー幹部たちは述べる。しかし、そうしたパブリッシャーサイトへのトラフィック誘導が難しくなっており、X(旧Twitter)の変化がそれに拍車をかけていることは言うまでもない。
「Facebook上のニュースというレガシーは、常にいくつかの但し書きや倫理的な議論を伴うことになると思う。しかし、パブリッシャーの観点からすれば、Facebookはインターネットをつなぐ主要なパイプ役であり、彼らはそれを確実に達成した」と、1人目のパブリッシャー幹部は言う。
メディア業界には、自分たちの苦境を嘆く人もいる。
ニューヨーク市立大学教授でメディア評論家のジェフ・ジャービス氏は、Facebookがニュースから離れていることについて、「ニュース業界は自らを責めるべき」とFacebookに投稿している。これは、ニーマン・ラボ(Nieman Lab)の創設者であるジョシュア・ベントン氏が2022年に述べた内容に似ている。
「責任の観点から言えば、Facebookがアプローチを変えただけではない。パブリッシャーは、このようなことが起こり得るとわかっていて、もっと強固な全方位アプローチをとることができたはずなのに実行しなかったということも忘れてはならない」と3人目のパブリッシャー幹部は語る。
協力はあったが透明性はなし
ブラウン氏はパブリッシャーに手を差し伸べることで、「すべてを落ち着かせる」手助けをした、と1人目のパブリッシャー幹部は語る。
「私の見方からすると、(ブラウン氏や彼女と働く人々と)パブリッシャーとのあいだではコミュニケーションが非常によく取れていた。だが、私はいつも、これは教会と国家のあいだにある問題のようなものだと感じていた。彼らはパブリッシャーと会話する能力には長けていたが、技術面やアルゴリズム面で何が起こっているのかはよく知らなかった(中略)彼らにできたのは、彼らが持っているアイデアを基に(パブリッシャーを助けるための)提案をすることだけだが、そこにFacebookの製品チームからの情報はなかった」と1人目のパブリッシャー幹部は述べる。
しかし、3人目のパブリッシャー幹部は、ブラウン氏と彼女のチーム、そして彼らが協力したパブリッシャーとのあいだに十分な透明性があったという確信はなかったと言う。
3人目の幹部は、「私が自身の著書で疑問を呈したのは、これらの(パブリッシング)イニシアティブと、それぞれの製品の成熟をどのように見ていたのかについて、どれだけ知的誠実さと透明性が彼らにあったかだ」と言いつつ、「しかし、それはブラウン氏の責任ではない」と付け加えた。
Sara Guaglione(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)